09 救いの希望
女性エルフは辺りを見渡し、ついに話し始めた。
「私の故郷は、異世界にあるエルフの村です。そこは平和で静かで、私たちは自然と共に暮らしていました。しかし、魔王軍の侵攻により、すべてが変わってしまいました。」
「魔王軍…?あなたの村を侵略したの?」
愛理はショックを隠せず、眉をひそめた。
「そうです。」
女性エルフの声は無力感に満ちていた。
「彼らは村を破壊し、生き残った私たちは捕らえられました。私は強力な魔法能力のせいで、魔王軍の計画に利用され、この世界に送り込まれたのです。」
「じゃあ、あなたは自らこの戦いに加わったわけではないんですね?」
愛理は同情の目で続けた。
女性エルフの表情はさらに苦しそうにゆがみ、うなずいた。
「その通りです。私はこれらの戦いに強制的に巻き込まれました。本当は誰も傷つけたくありませんでした。あなたたちの敵になりたくなかったんです。」
「このまま続ける必要はありません。」
愛理はしっかりとした優しさのある口調で静かに言った。
「私たちは、あなたが本当に私たちの敵ではないことを知っています。そして…あなたの唯一の家族である妹が人質に取られていることも。」
女性エルフの表情は瞬時に凍りつき、もともと穏やかだった顔が驚きと混乱に染まった。彼女の目には、自分の秘めたる真実が暴かれたことへの不信感が滲んでいた。そんな秘密を、どうして二人が知り得たのか――彼女の脳裏に疑問が走った。
「あなた……どうやってそれを知ったのですか?」
女性エルフの声はわずかに震え、その瞳には驚きと疑念が浮かんでいた。手も微かに震え、まるで心の平静が崩れかけているかのようだった。
愛理は軽く頭を下げ、目を閉じてこめかみを指でそっと押さえた。彼女の「精神感応」能力は、他人の感情だけでなく、心の奥深くに隠された記憶までも捉えることができるのだ。
「あなたの心を感じました。先ほどの戦いの中で、偶然あなたの深い痛みが伝わってきたんです。あなたが戦いを望んでいないことも、無実の人々を傷つけたくない気持ちも。」
女性エルフは深呼吸し、暴露されたことへの無力感と自分の無力さに引き裂かれるようだった。彼女は目を伏せ、
「はい……魔王軍が私の妹の命を盾にして、この作戦に私を巻き込んだのです。従わなければ、妹を失ってしまう…」
と囁いた。
愛理は同情の目を向け、一歩近づいた。
「その痛み、わかります。家族と良心の間で選択を迫られるのは、あまりにも残酷です。でも、私たちを信じて。共に解決策を見つけ出しましょう。」
真一も前に進み、優しい声で言った。
「私たちはあなたを助けるために全力を尽くします。どんな困難があっても、私たちが一緒に戦います。僕は雷野真一、彼女は星川愛理。どうか、信じてください。」
女性エルフはゆっくりと頭を下げ、瞳には複雑な感情が浮かんだ。彼女は理解していた。真一と愛理に協力することが、妹を救う唯一の方法かもしれない。しかし、その代償がどれほど大きいか、彼女には想像もつかない。
「私はシルバーソング部族のリアです…」
リアが迷いを抱えつつ名前を告げた瞬間、突如強い危機感が彼女の心を覆った。
「それだけで何かが変わると思っているのか?」
まるで闇の隅から染み出してくるような低く脅迫的な声が、廃墟の静けさを破った。
ここ二日ほど特にすることもなかったので、第17章の執筆を進めていたら、なんとそのまま完成してしまいました!本来は19日から始める予定だったのに…まあ、こうしてインスピレーションが湧いた時にすぐ書き留められるのは良いことですよね。後々、アイデアが尽きたらもう書けなくなるかもしれませんからね。今のところ、予定している作品が全部で6部もありますので、計画通りに来週第8章の翻訳を進めます。どうぞお楽しみに!