31 ヴェルサニアへの挑戦
「さあ、どれくらい耐えられるかしら?」
ヴェルサニアは口元を歪め、冷酷な笑いを浮かべながら、手を軽く振り上げた。その仕草一つで部屋の空気がさらに緊張感に満ち、破壊の嵐がさらに激しく吹き荒れる予感を漂わせた。
「行くぞ、愛理!」
真一が叫びながら刀を抜き、咆哮の嵐の中に飛び込んだ。愛理も銃を握り直し、唇をかみしめながら真一に続いた。二人は互いの背中を守りながら、決して引かないという覚悟をその場に叩きつけた。
愛理は迅速に引き金を引いた。火花と共に放たれる弾丸が、突進してくる魔獣たちを正確に撃ち抜いた。何匹かの魔獣は崩れ落ちたが、次々と湧き出るように現れる魔獣たちが、その猛攻を絶やすことはなかった。
「真!」
愛理が鋭く声を上げる。パンサー型の魔獣が黒い稲妻のごとく真一に向かって襲いかかった。
真一は瞬時に反応し、刀を振り上げて迫り来る鋭い爪を弾き返した。しかし、その衝撃の重さに圧され、数歩後退を余儀なくされた。
「くそっ、こいつ、なんてパワーだ…!」
歯を食いしばりながらも、その目は敵から一瞬たりとも逸らすことはなかった。
「右だ、気をつけて!」
愛理は戦闘の最中でも「精神感応」を通じて真一に注意を促した。
「助かった!」
真一はすぐに鋭い刃を振るい、迫り来る魔獣の群れを両断した。その動きには迷いがなく、刹那の判断力が光る一撃だった。二人の呼吸は完璧に合い、魔獣たちの猛攻を一時的に食い止めることに成功した。
しかし、ヴェルサニアが操るパンサー型の魔獣は異常なほどのスピードとパワーを誇り、時には空中を飛び回り、時には一瞬でヴェルサニアの元へ退避するなど、攻防一体の動きで二人を翻弄していた。その黒い毛皮が光を吸い込み、目だけが赤い火のように燃えていた。その姿は、ただの魔獣ではなく、暗黒の支配そのものを具現化したかのようだった。
愛理は「精神感応」を使いながら、次々と戦場の状況を真一に伝えていった。その声は冷静ながらも力強く、真一を奮い立たせていた。二人は徐々にヴェルサニアに接近し、攻撃の機会をうかがった。しかし、ヴェルサニアはわずかに唇を歪め、余裕を見せつけるような微笑みを浮かべていた。
「あら、それで私を倒すつもり?」
ヴェルサニアの声には嘲笑が滲み、その指先がパンサー型の魔獣の頭を優雅に撫でる仕草には、不快なほどの冷酷さがあった。彼女の命令を受けた魔獣は低く唸りを上げ、その体が地面を削るように加速した。その一撃は、まるで暗闇から放たれた矢のように真一を狙っていた。
真一はぎりぎりで身を翻して攻撃を避けたが、魔獣の爪が肩を掠め、鮮血が弧を描いた。
「くっ…!」
痛みが走るが、彼の目には揺るぎない決意が宿っていた。真一は即座に刃をロングソードに変え、鋭い一撃を魔獣の腹に叩き込んだ。
「これ以上好き勝手にはさせない!」
真一の叫びと共に剣が毛皮を切り裂き、鮮血が霧のように舞い上がる。しかし、パンサー型の魔獣は即座に後退し、怯むことなく再び攻撃の構えを取った。その目は、憎しみと殺意の炎で燃え盛っていた。
一方、愛理は次々と現れる魔獣たちを銃で迎撃しながらも、蔓が足元から伸びてくるのを感じ、迅速に避けた。
「リア、目を覚まして!」
愛理は心の中で強く叫びながら、リアに向けて「精神感応」を通じて温かい言葉を送り続けた。しかし、リアの瞳には未だ葛藤と苦悩が混じり合い、支配の鎖に囚われたままだった。
「どうしたの?私のペットたちに遊ばれるのは楽しいでしょう?」
ヴェルサニアは冷笑を浮かべ、彼女の声は挑発そのものだった。彼女の周囲に漂う冷たい威圧感は、彼女がただの指揮者ではなく、自ら戦場を操る支配者であることを感じさせた。
「このままじゃ押し切られる…」
愛理は焦りを押し殺しながら「精神感応」を使い、真一に呼びかけた。
「何か突破口を見つけなきゃ、この戦いは終わらない!」
「防御を崩すには、まずあのパンサー型の魔獣を仕留める必要がある…だが、タイミングが重要だ!」
真一は歯を食いしばり、次の攻撃に向けて動きを見極めていた。その目はヴェルサニアと魔獣たちの全ての動きを追い、次の一手に全てを賭ける覚悟が感じられた。
戦場は緊張感に包まれ、愛理と真一は互いに無言の合図を送りながら、最後の逆転のチャンスを狙っていた。
愛理は冷静さを保ちながらも、リアの苦しみを見て心を揺さぶられていた。彼女は「精神感応」を最大限に強化し、リアの心に優しさと温かさを送り続けた。
「リア、大丈夫だよ。あなたならできる。私たちはあなたのそばにいるから。」
その声は、まるで迷路の中で輝く光のように、リアの心の奥底に響き渡った。
リアの体は震え続け、心を支配する鎖が彼女の魂を締め付けていた。しかし、その中で、小さな希望の種が芽生え始めていた。愛理の言葉は、彼女が失いかけていた自分自身を取り戻す鍵となり、リアの中で何かが変わり始めていた。
「もう…やめて…」
リアの声はかすかで震えていたが、その一言には確かな決意が込められていた。彼女の指が魔法の杖をしっかりと握りしめるたびに、冷や汗が彼女の額を伝い落ちる。リアの瞳の奥にあった絶望は、徐々に消え去り、その代わりに微かな光が宿り始めた。




