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27 リアの苦痛

 モルヴァが倒れると毒霧は徐々に消え去ったが、要塞の破壊は続き、焦げた腐敗臭が空気を満たしていた。真一と愛理は廃墟を歩き、本当の敵ではないと思われるエルフの女性、リアを探していた。

「ギルドの情報によると、近くでリアが目撃されたらしいです。」と真一は言った。

 愛理はうなずき、「そうですね。彼女を一刻も早く見つけて助けなければなりません。」と答えた。

「愛理、冒険者が何人かいるよ。聞いてみよう。」真一は遠くで犠牲者の救援に忙しい冒険者たちを指差した。

 二人は急いで冒険者たちに近づき、愛理が柔らかい声で尋ねた。「皆さん、こんにちは。エルフの女性を探しています。ここに現れたかもしれませんが、見かけたことはありますか?」

 一人の冒険者が顔を上げ、眉をひそめて思い出すように言った。「エルフの女性ですか?ええ、近くの建物で彼女を見た覚えがあります。いくつかの施設を破壊していました。彼女の魔法は非常に強力で、私たちにはまったく太刀打ちできませんでした。」

「情報ありがとうございます!」愛理は軽くお辞儀をし、真一に向き直って「そっちの方向に行きましょう。」と言った。

 真一と愛理は冒険者が示した方向へ進み続けた。しばらく歩いた後、愛理は足を止めて言った。「真、リアを感じました。彼女の心が、まるで痛みにもがいているかのように、極めて不安定です。」愛理の表情には深い心配が滲んでいた。

「わかった。時間を無駄にすることはできません。できるだけ早く彼女を見つけよう。」真一は決意を込めた瞳で、毅然と答えた。

 魔獣によって破壊された街を二人は慎重に進んでいた。地面は炎と毒霧で腐食した建物の残骸で覆われ、壁には黒い煤がこびりつき、時折遠くで数匹の魔獣が徘徊する姿が見える。真一は、惨状を目の当たりにして息をのむように、倒壊した建物や瓦礫の山に目を向けた。

「真、こっちです。私の誘導によれば、彼女は近くにいます。」混乱の中で、愛理の声はひときわ力強く響いた。彼女は周囲の感情の波を「精神感応」で読み取り、正しい道筋を示そうと懸命だった。

「わかった。愛理の直感に従えば、きっと彼女を見つけられる。」真一はきっぱりと答えた。埃と汗にまみれた顔の中で、その瞳だけは揺るぎない決意に輝いていた。彼はリアを見つけることが、この危機を打開する唯一の鍵だと確信していた。

 長い探索の末、二人はついに隠された地下通路を発見した。重い空気がのしかかり、隙間から漏れる暗赤色の光が不気味に壁を照らす。真一は慎重に砂利を踏みしめ、先頭に立って通路へ足を踏み入れた。集中力を高めた彼は、手から放つ微かな光で障害物を無害な砂粒へと変え、道を切り開いていく。石が塵となるたび、空気中にかすかな振動が広がった。

 通路を進むにつれて道は次第に狭まり、光も弱くなっていった。「もうすぐです。私の誘導では、リアはそう遠くありません。」愛理の声には緊張が滲んでいた。「精神感応」でリアの痛みや葛藤が伝わってくるたび、それは愛理をさらに不安にさせていた。

「気を引き締めて、前を向こう。」真一は手にした盾をしっかりと握り、いつでも緊急事態に備えられるよう身構えた。

 その時、愛理の目がかすかに輝き、彼女はゆっくりと立ち止まって低くささやいた。「彼女は目の前にいます。とても強い感触が伝わってきます。」

 通路の突き当たりで、二人がたどり着いたのは、蔓が絡まり合い、まるで生きているかのように脈動する部屋だった。強い魔法の揺らぎが空気を震わせ、緊張感が肌に突き刺さる。部屋の隅では、リアが地面に倒れ込み、青ざめた顔に大量の汗を浮かべていた。彼女は長い杖を震える手で握りしめ、その先端から放たれる緑色の光が、途切れることなく強力な自然魔法を部屋全体に拡散させていた。

 部屋の中は植物が生い茂り、絡み合った蔓が壁や天井を覆い尽くし、まるで自然の檻のような姿をしていた。リアの顔には明らかな苦痛が刻まれ、目に見えない力に縛られているかのように魔法の発動を止められない。彼女の目は何かを求めるように彷徨い、時折怯えるように辺りを見回した。その動きには抵抗と混乱が入り混じっているように見えた。

「見つけた……!」真一は複雑な感情を抑えきれずに呟いた。リアを助けたい一心で近づこうとしたものの、彼の道を遮るかのように蔓が動き出し、侵入を拒む障壁を作り上げた。

「真、気をつけて!」愛理は鋭い声で警告した。彼女の「精神感応」は部屋に漂う不穏な気配と、リアの心の奥深くにある耐え難い痛みを感じ取っていた。その感覚は、まるで自分自身がその苦痛を共有しているかのように鋭く胸を刺す。

 二人は蔓の動きを警戒しながら慎重に部屋を横切った。真一は部屋の無機物を砂に変えることで進路を切り開いていったが、蔓には彼の能力が効かないため、それを避けるしかなかった。その動きは一瞬の躊躇もなく正確で、リアを傷つけないよう細心の注意を払っていた。同時に、愛理は「精神感応」を駆使してリアの心を落ち着かせようと試みるが、リアの異常な状態がそれを容易にさせなかった。

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