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24 霧を裂く決戦

 真一は「物質変化」の能力を駆使し、周囲の環境を自分たちに有利な形へと変え続けていた。建物の間の狭い通路へモルヴァを追い込むべく、一歩一歩慎重に動きながらも、その手は一切ためらわなかった。挑発によるミスを避けるため、あえて静かに敵を追い詰めていく。

 モルヴァは周囲の微妙な変化に気づき、その目には焦燥と怒りが混ざり始めた。毒霧の制御をさらに強化しようと試みたが、真一の周到な配置が彼の動きを徐々に封じ込めていた。建物が高く密集する狭い路地に追い詰められた彼は、毒霧の流れが明らかに制限され、思うように支配することができなくなっていた。

 真一はその隙を見逃さず、建物の隙間を利用して空気の流れを作り出す小型ダクトを設置し始めた。その動きは迅速かつ正確で、一瞬たりとも迷いは見られない。同時に、愛理は「精神感応」を駆使してモルヴァの動きを鋭く追跡し、彼のわずかな動揺すらも敏感に察知していた。モルヴァは依然として自分が罠に誘導されていることに気づかず、毒霧をさらに濃くしようと必死だった。

「予定の目標エリアに近づいています。」

 愛理は真剣な表情で低く呟いた。その声には緊張感と同時に確信が宿っていた。

「引き続き誘導して、彼に気づかせないように。最終段階に入る。」

 真一は淡々と答えながら、爆発物の配置をさらに強化し、敵の逃げ場を完璧に塞いでいく。その手際の良さには迷いも隙もなかった。

 そしてついに、モルヴァは狭い空間に追い込まれた。濃厚な毒霧が彼自身をも圧迫し始め、空気が重く粘つくようにその場を支配する。真一は深く息を吸い込み、次の瞬間に全てをかける決意を胸に秘めた。

「愛理、今だ──爆発せよ!」

 真一の声は低く響き渡り、その言葉には揺るぎない指揮感が宿っていた。それは戦場の喧騒を貫き、まるで真理そのもののように愛理の耳に届く。二人はこの瞬間を長い間待ち望んでいた。真一の瞳には冷静さとともに、押し殺してきた熱い想いがかすかに宿り、すべてが計算された計画が遂に実行に移される。

 愛理は一瞬もためらうことなく、起爆装置のスイッチに指をかけ、力強く押し込んだ。その瞬間、天地を切り裂くような爆発音が戦場に轟き、大地そのものが震えるように激しく揺れた。爆発点から発生した衝撃波は空間を震わせ、荒れ狂う風が周囲を呑み込むように吹き荒れた。粉塵や瓦礫が宙を舞い、まるで戦場が咆哮する獣と化したかのようだ。

 そして、その爆風は毒霧を断ち切るかのように勢いよく広がり、濃密だった霧が巨大な力によって一気に吹き飛ばされていく。霧が晴れた先に露わになったのは、荒廃した戦場の姿。そしてその中心で、真一の計画がまさに成功へと近づいていく兆しがあった。

 真一の目は爆発後の煙と塵に注がれ、その心臓は速く鼓動していた。「これで決める…」心の中でそう呟きながらも、ほんの一瞬でも油断すればすべてが水泡に帰すことを理解していた。その覚悟が彼をさらなる集中へと導いていた。

 そして、毒霧が晴れていく中で、モルヴァの姿がようやく現れる。彼の顔には驚愕と怒りがはっきりと浮かび上がり、邪悪な表情を隠す余裕すらなくなっていた。

「くそー!」

 モルヴァの叫び声が響き渡る。歯を食いしばり、その目には悔しさと怒りが宿っている。すぐさま手を振り毒霧を再び制御しようと試みたものの、爆発による強風が彼の意図を完全に打ち砕いていた。霧は命を失ったかのように力なく空中へと消え、もはや戦場を覆い隠すほどの濃さを取り戻すことはできなかった。

 風は轟き続け、毒霧は四散し、モルヴァの険しい表情が鮮明に現れた。その顔は防御を失った要塞の如く無防備となり、絶望の色が少しずつ浮かび上がる。

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