23 霧を裂く意志
しかし、二人は決して諦めなかった。モルヴァを見つけ、毒霧を解除しなければ、この戦いが終わることはないと理解していたからだ。毒霧に蝕まれながらも、彼らの中の意志はさらに強く燃え上がる。
「毒霧はどんどん濃くなっている…今こそ彼を叩かなければ、この戦いは僕たちの命をも奪い尽くす!」
真一は苦痛を堪えながら、重く響く声で言った。目の前の絶望的な状況にもかかわらず、その瞳には強い決意が宿っていた。毒霧の中でモルヴァに近づくのは難しいが、それでも正面突破しか方法はないと確信していた。
愛理は小さくうなずくと、目を閉じてその感知能力をさらに研ぎ澄ませた。彼女は毒霧の奥から漂う、モルヴァの歪んだ悪意を鮮明に捉えた。それはまるで毒蛇が獲物を締め上げる前に狡猾に巻きつくような、息苦しい悪意だった。「私たち、もっと近づかないと。このままじゃ彼の思うつぼよ!」
愛理の声はしっかりとした響きを持ち、揺るぎない決意で満ちていた。その瞳は、困難に屈しない強い意志を放っていた。
モルヴァの目には一瞬、焦りの色が浮かび、真一と愛理が急速に接近していることに気づいた。自分の意図を見透かされたと感じ、軽く手を動かす。毒霧の制御に長けてはいたが、状況は明らかに彼の予想を超えており、優勢だったはずの自信がじわじわと不安に変わり始めていた。
「意地悪な奴らめ…」
モルヴァは恨みを込めて囁くと、再び手を閉じた。低い叫び声とともに、有毒な霧が脇腹から噴き出し、まるで生き物のようにうねりながら急速に広がる。その濃霧は戦場全体を覆い尽くすほどに膨れ上がった。
真一は空気がますます毒に満ちていくのを感じ取った。その霧はもはや単なる煙ではなく、無数の小さな毒蛇が狙いを定めているように見えた。歯を食いしばり、心の中で「突破するしかない」と自らを奮い立たせる。遅れは許されない。周囲を見回しながら突破口を探すが、霧の圧力は容赦なく迫ってきた。
その時、穏やかな風が吹き、周囲の毒霧がわずかに揺れた。その微妙な変化を捉えた真一の脳裏にひらめきが走る。「もしかして、風を利用できるかもしれない…」
彼は独り言のように呟きながら、思考を巡らせた。毒霧は脅威だが、風が少しでも味方になれば、希望の光が見えるかもしれない。
愛理は「精神感応」の能力で真一の考えを感じ取り、すぐに応じた。「真、何か考えがあるの?」その声には熱意と期待が宿っていた。
真一はしっかりと頷き、愛理を見据えながら言った。「方法があるかもしれない。風を使って毒霧を吹き飛ばし、モルヴァに近づくチャンスを作り出すんだ。」
そう言うと、彼は計画を頭の中で素早く組み立て始めた。
「大丈夫。計画通りに動けば、きっと彼を倒せると信じているわ!」
愛理の確信に満ちた声が、真一の心に安堵と勇気を与えた。その目には決意と自信が宿り、戦闘への準備が整っていく。
真一は手を伸ばして地面に触れると、「物質変化」の能力を発動させた。周囲の石や瓦、金属片が、一瞬で爆発物へと変わる。その爆発は強力な衝撃波と激しい空気の流れを生み出し、毒霧を効果的に吹き飛ばすよう計算されていた。爆発物の配置とタイミングは緻密に調整され、最大限の効果を発揮する準備が整えられていく。
「愛理、準備できた。」
真一の声は揺るぎない決意に満ちていた。その意志は「精神感応」を通じて愛理にも伝わり、彼女の心に強く響いた。
「毒霧使いを狭い範囲に誘導します。目的の地点に到達したら、これらの物質を爆発させ、気流で毒霧を吹き飛ばす。」
真一の声は冷静ながらも決意に満ちていた。
愛理は即座に計画を受け入れ、小さく頷く。「わかった。私は彼の動きに集中して、信号が来たら即座に爆発させる。」その声には、静かに燃えるような闘志が隠されていた。




