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22 霧の支配者

 一方、戦場の反対側では愛理が目を閉じ、静かに集中していた。彼女の「精神感応」能力が広がり、ついにモルヴァの意識を捉えた。その魂の深淵には、人間を見下す冷たさと混沌への飢えが渦巻いていた。

「あそこにいる…」

 愛理の透き通った声が真一の脳裏に響いた。

「毒霧の中心部を支配しているわ。魔獣たちをうまくかわして、彼の元へ行く必要がある。」

 彼女の能力によって浮かび上がった防御陣形が、真一の思考に共有される。

「彼の部下たちは群衆を毒霧に追い立てている。このままでは犠牲者が増えるばかり…時間がないわ!」

 真一は小さくうなずき、手を振ると、地面の石を硬い金属の盾に変えて守りを固めた。愛理の指導のもと、彼らは毒霧が立ち込める街路を素早く抜け、敵の待ち伏せを巧みに避けながらモルヴァの隠れ場所へと向かった。

 モルヴァに近づくにつれ、息苦しい雰囲気が一層濃くなり、呼吸さえ困難になっていった。破壊された塔の前に立つモルヴァは、近づいてくる真一と愛理を冷ややかな目で見つめていた。黒い革のジャケットが薄暗い影の中に浮かび上がり、口と鼻は白い包帯でしっかりと覆われ、不気味な瞳だけが鋭く光っている。

「ああ?てめらはかなり有能なようだな。そして、わざわざ俺を見つけてくれたのか。」

 モルヴァの声は静まり返った空気の中で低く響き、その口調には冷たさと軽蔑が滲んでいた。彼の顔に浮かぶ冷笑は挑発的で、その瞳はまるで獲物を狙う猛獣のように鋭く、危険な輝きを放っていた。細身の体が影の中で揺らめき、黒い革のジャケットが風にわずかに揺れるさまは、嵐の前触れを思わせる不気味さを漂わせていた。

 モルヴァが言葉を終えるや否や、空気中の毒霧が突如として濃くなった。もはや息苦しいどころではなく、霧は生き物のようにうごめきながら、圧倒的な速度で周囲を覆い尽くしていく。視界を奪う濃霧はまるで巨大な檻のように戦場全体を支配下に置き、身動きさえままならない状況を作り出した。

 真一はますます重苦しくなる空気に、喉を刺すような痛みを感じながらも、決して目を逸らさなかった。ぼやけた視界の中でモルヴァの方向をじっと見据え、警戒を解こうとしなかった。彼は、この毒霧が単なる障害ではなく、モルヴァが戦況を支配するための最強の武器であることを直感していた。この霧を打破しなければ、敵に近づくどころか生き延びることすら困難なのだ。

 モルヴァは真一の焦燥を見透かしたように、冷笑をさらに深めた。片手をかざすと、周囲の毒霧が命令を受けたかのように激しく湧き上がり、生き物のように動き出した。その霧は牙を剥く灰色の獣のように、真一と愛理を飲み込もうと迫ってくる。巨大な灰色の網と化した毒霧は、二人の呼吸を奪い、視界を侵食していった。

「この毒霧の中では何もできない!ここで全員死ぬことになる!」

 モルヴァの声は深淵からささやく悪魔のように冷たく、冷酷だった。その響きには、二人がもがき苦しみながらも無力に倒れる未来を予見しているかのような、揺るぎない自信と軽蔑が満ちていた。

 濃密な毒霧の中、真一と愛理はまるで死に神に手を引かれるかのように、一歩一歩、命を削るように進んでいった。鼻を刺す刺激臭と、肺を侵食する毒素の感覚が彼らを容赦なく襲う。真一の呼吸は荒く、喉は焼けるように痛み、視界は霧と毒のせいで次第に霞んでいった。それでも彼の目は冷静さを保ち、毒霧の支配を断ち切る機会を必死に探していた。

 一方の愛理も、身体の震えを抑えながら霧の圧迫感と戦っていた。ぼやけた視界の中、モルヴァの黒い革ジャケットの影が幽霊のように揺らめき、その邪悪な瞳が毒霧の中でギラリと光る。その視線は、逃げ場のない獲物をいたぶる捕食者のようで、彼女の背筋を冷たくさせた。

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