20 霧中の死闘
蓮華城の隅々にまで響き渡る戦闘の騒音は、誰の心も震わせる。灼熱の炎がうねり、絡みつく蔓が命を縛り、毒霧が忍び寄る中、要塞全体はまるで混沌そのものと化していた。遠くから響く魔獣の咆哮は耳をつんざき、まるで死に神がその到来を告げるかのようだ。
「このまま黙って見ているわけにはいかない!」真一は怒りを込めて叫び、手にした長剣を最後に迫り来る魔獣へと突き刺した。その剣先は深く地中に突き立てられ、彼の鋭い視線は氷のように冷たく、決意の炎が揺るがなかった。
隣では、愛理の薄茶色のツインポニーテールが戦闘の風に揺れ、その瞳は夜空の星のように知恵と決意で輝いている。
「全ての冒険者を集めて反撃を開始するべきです。」愛理は静かに言い放つ。その声には緊張感が漂うものの、恐れ知らずの執念と確かな勝利への信念が込められていた。彼女の「精神感応」能力はすでに辺りを巡り、迫り来る脅威を余さず感知している。
次の魔獣の波が近づきつつある中、背後から重い足音が響く。真一と愛理が振り返ると、クマールのチームが駆け寄ってくるのが見えた。
クマールの高く逞しい姿は、まるで鋼鉄でできた移動要塞のように眼前に立ちふさがり、手に持った巨大な戦斧は太陽の光を浴びて冷たく輝いている。彼の顔にはいつもの陽気な笑みが浮かび、戦場の残酷ささえも、彼の楽観主義を揺るがすことはなかった。
「ハハハ!いいタイミングで来たみたいだな!」クマールはにっこり笑みながら戦斧を肩に担ぎ、その声は大胆で自信に満ちている。「こいつらの相手は俺たちに任せな!誰一人として立ち上がれなくしてやる!」
その後ろでは、周炎がクマールの背中を軽く叩き、やや焦りを含む表情を浮かべている。
「おい、大男!いつも自分を見せびらかすのが好きだな!」周炎は呆れたように言いながらも、目には炎の輝きが宿る。彼女の摩擦手袋が小さく火花を散らし、指先で踊る火が、今にも敵を灰に変える準備を整えているようだった。
チャリヤはその穏やかな性格の中に確固たる意志を秘めており、『治癒』の能力がぼんやりと手元に光を宿している。
「私は皆さんを応援するためにここにいます。どうかお気をつけくださいね。」と、優しく微笑んだ。
その言葉に真一は軽く微笑みながら頷き、「あなたたちがいてくれるのは本当に心強い。クマール隊長、周炎、チャリヤ、今こそみんなの力が必要です。」と、力強く答えた。
クマールは豪快に笑い、手にした戦斧を振り回しながら、雷鳴のごとき声で叫ぶ。「よし!この混乱を終わらせるために、全力でやってやろうじゃないか!」そして彼は魔獣の群れへと突進していく。
そのとき、通信機器を通じて副ギルドマスターの声が鋭く響いた。「雷野、星川!毒霧使いが蓮華城に大混乱を引き起こしている。彼の毒霧が周囲に甚大な被害をもたらしているんだ。情報によれば、彼は君たちの近くにいる。急いで見つけて阻止してくれ!」
真一は通信機を強く握り締め、瞳に決意の光を宿して答えた。「了解しました、副マスター!僕たちに任せてください!」
その直後、愛理が鋭い視線で真一に語りかけた。「真、急いで毒霧使いの居場所を見つけましょう。このままでは毒霧の拡散がさらに被害を拡大させてしまうわ。」
『精神感応』による愛理の思念は確かに届き、彼女の深い瞳にはモルヴァの心の動きが映し出されていた。
クマールはその指示を聞き、即座に判断を下す。隣の魔獣を戦斧で粉砕し、振り向きざまに言った。「魔獣も、この厄介な植物も、ここは俺たちに任せろ!お前たちは毒霧使いを探し出し、この災厄を終わらせることに集中してくれ!」
周炎は燃えるような手のひらを軽く撫で、自信に満ちた笑みを浮かべる。「任せて!私たちがいる限り、この連中を一歩たりとも前進させやしないわ!」
チャリヤは静かに微笑みながら、柔らかながらも確固たる声で言った。「私はクマールたちをサポートするためにここに残ります。どうか気をつけてください。」
真一と愛理はお互いを見つめ合い、視線だけで強い決意を交わした。真一は感謝の気持ちを込めて深くうなずき、「ありがとう、クマール隊長、周炎、チャリヤ。この毒霧使いの討伐は僕たちがやる。あとは頼みます!」と力強く言った。
クマールは手を大きく振りながら、豪快に笑みを浮かべる。「行け、兄弟!ここは俺たちが押さえる。お前たちの凱旋を楽しみに待っているぜ!」
愛理は『精神感応』で周囲を鋭くスキャンし、モルヴァの存在を探り始める。真一は深呼吸をし、心を落ち着けながら、これから待ち受ける厳しい戦いに向けて気を引き締めた。
その間にも、クマールチームは魔獣や植物の猛攻に全力で立ち向かい、真一と愛理は最も濃い毒霧が立ち込める危険区域へと素早く向かっていった。
二人は心の中で強く思う。戦いの勝敗は、短時間でモルヴァを見つけ出し、撃破できるかどうかにかかっている。
今日は第4巻序章の大筋を完成させました。この章は明るく楽しい内容になる予定です。ヒロインの活発で明るい性格、女エルフの繊細で細やかな心、女将軍の豪快でお茶目な性格が描かれ、序章がまるで主人公との交流エピソードのようになってしまいました(笑)。確かに、本編に入ると1対1でリラックスしたやり取りをする機会はほとんどなくなるので、ここで女性キャラたちの個性を表現する良い場面になりそうです。さて、第9章ですが、ついに公開されました!この章の内容は12月21日まで順次公開予定です。どうぞお楽しみに!




