16 裏切りの街
同じ頃、蓮華城の端には静かに毒霧使いモルヴァの姿が現れる。邪悪な毒霧を操る彼は黒い革ジャンを纏い、口と鼻には白い包帯を巻き、不気味な蛇のように冷たい目だけが露出していた。モルヴァが現れた途端、空気はどんよりと淀み、死の静寂が城の周囲に漂い始めた。
モルヴァは蓮華城の端をゆっくりと歩き、その足元から毒霧が川のように流れ出し、悪臭とともに街路をじわじわと満たしていく。その瞳には、これから訪れるパニックと絶望を楽しむかのような冷酷な輝きがあった。
「この街を我々の支配下で混乱に陥れよう!」
モルヴァの声は低く邪悪で、そこには軽蔑と嘲笑が滲んでいた。
「恐怖が広がれば広がるほど、毒霧の力も増していくのだ。」
彼の言葉は毒のごとく空気に染み込み、周囲の空間を不気味に染め上げていった。
彼の部下たちが行動を開始し、ガスマスクをかぶった冷酷な執行者たちは、モルヴァの命令に従い容赦なく街へと繰り出した。彼らは正確かつ迅速に動き、街中に混乱を巧みに引き起こしていく。一般市民に扮して静かに群衆に紛れ込み、パニックに乗じて人々をより危険なエリアへと誘導するのであった。路上の兵士や市民たちは、潜む脅威にまったく気づかず無防備なままでいた。
「あそこなら安全です!」
一般市民に成りすました部下の一人が、路地を指さし、動揺している兵士たちに心配そうな声で叫ぶ。
「早く皆を連れて避難してください!」
兵士たちは深く考えず、パニック状態の市民たちとともに路地へと急いだ。しかし路地に足を踏み入れるや否や、空気は一層刺鼻な匂いに包まれ、濃霧が視界を遮る。異変に気づいた彼らは激しい咳に襲われ、呼吸が苦しくなり、恐怖と無力感がじわじわと心を蝕んでいった。
「くそっ、ここに一体なぜこんなに毒霧が…!」
一人の兵士が口と鼻を覆いながら周囲を確認しようとしたが、濃い毒霧がすべてをぼやけさせ、視界は完全に奪われていた。
別の兵士はなんとか退却しようとしたが、辺りはすでに毒霧に囲まれ、出口はすべて暗闇の中に消えていた。絶望がじわじわと彼らの心を蝕み、震える手は自らの無力さに打ちひしがれていた。
遠くでは、一般市民に扮した部下が冷ややかな目でこの様子を見つめていた。ガスマスクで表情は隠れているものの、その目には冷淡と軽蔑が浮かんでいた。
「まったく、この愚かな人間どもは、いつも簡単に騙されるのだ。」
一人が独り言のように呟き、まるでこの策略が単なる遊びであり、自分たちがこのゲームの支配者であるかのように振る舞っていた。
同じ頃、別の部下たちのグループもまた、別の通りで行動を開始していた。彼らは負傷者を装い、わざと冒険者たちの注意を引きつけようとしていた。
「助けてください!ここに負傷者がいます!」
部下の一人が力なく叫び、その声には必死に助けを求める気持ちが滲んでいた。
何人かの冒険者は、警戒心もなくその声に反応し、すぐに「負傷者」を安全な場所へと連れて行こうとした。しかし、進んでいくにつれて、次第にその周囲の雰囲気が不気味で恐ろしいものへと変わり始めていることに気づいた。濃い毒霧があたり一面に広がり、光が完全に遮られ、呼吸が苦しくなり、激しい咳が立て続けに響き渡った。その瞬間、霧の中にぼんやりと浮かび上がる魔獣の影。まるで攻撃のタイミングを待っているかのように、恐ろしい魔獣たちが毒霧の中でひっそりと潜んでいた。
「しまった!騙された!」
冒険者の一人が絶望の叫びを上げ、急いで武器を取り出し戦いの準備を始めた。しかし、その時にはすでに遅く、魔獣たちは雷のように速く彼らに襲いかかり、鋭い爪で防御を一瞬で打ち破った。灰色の霧の中で血が飛び散り、周囲は瞬く間に赤く染まった。
ついに第9章の翻訳が完成しました!翻訳している途中、突然妙な気持ちになりました。なんだか、すべてのストーリーの伏線が余計に感じて、いきなりクライマックスに入った方がいいんじゃないかと思えてきました(笑)。でも、もしそうしたら、物語は無茶苦茶になってしまい、キャラ自体も成立しなくなり、話があっという間に終わってしまいますね(笑)。翻訳者の大変さが改めて身に染みました。内容が伝えたいメッセージを理解するだけでなく、言語への深い理解も必要で、一番適切な表現を選ばないといけません。本当に難しい仕事ですね。今はAIが手伝ってくれるので助かりますが、それでもまだまだ完璧とは言えません。読者の皆さんにはぜひ積極的にご意見をいただければと思います。この作品をより完璧なものにするためにご協力お願いします(お辞儀)。第9章は12月9日から公開予定です。どうぞお楽しみに!




