10 絶望の支配者
真一と愛理は一瞬で音の方向に目を向け、警戒心を強めた。近づく足音が聞こえ、暗闇から徐々に現れたのは背の高い人影だった。男は濃い緑色のロングウィンドブレーカーを羽織り、そよ風に吹かれるその姿は冷たく、神秘的な雰囲気を漂わせていた。彫刻のように端正な顔立ちだが、瞳には一片の温かみもなく、見た者の心を凍らせるほど冷酷な光を宿していた。
「ボス……」その姿を目にした瞬間、リアの瞳孔は恐怖に縮まり、思わず一歩後ずさった。唇は震え、目は絶望と恐怖で染まっていた。まるで彼女にとって、この男の存在がすべての恐怖の象徴であるかのように。
真一は瞬時に、この男こそがすべての黒幕であることを理解した。胸が締めつけられるような感覚に襲われながらも、冷静を装い、ポケットの中の金属製の物体をしっかりと握りしめた。彼は、いつでも襲いかかってくる脅威に備え、全神経を集中させた。
ボスは冷笑を浮かべ、あたかもすべてが掌握されているかのように、真一と愛理を見下ろした。その目には冷酷さと侮蔑が宿り、まるで二人を無力な存在、取るに足らない蟻のように扱っている。「ほんの少しの同情や取るに足らない力で、俺の計画を阻止できると思っているのか?甘いな。」その声は、まるで冬の嵐のように冷たく、そして終わりのない軽蔑に満ちていた。
「それで……お前が黒幕ってわけか?」真一は感情を抑えつつ、冷静を装って問いかけた。だがその声には、彼自身も気づかぬ緊張が微かににじみ出ていた。
愛理は彼の隣に立ち、拳をしっかりと握り締めた。彼女の目は決して揺らぐことなく、まっすぐにボスを見据えていた。「お前が何を企んでいようと、私たちは黙って見ているつもりはない。世界をお前の邪悪な意図に屈服させることなんて、絶対にできない!」
ボスは軽く笑い、まるで哀れむかのように冷笑した。「人間の勇気は、無知から生まれるものだ。本当の力の前では、お前たちの小さな抵抗なんて、何の意味もない。」その言葉は、圧倒的な力の前にある絶望を告げる冷酷な宣告のようだった。
ボスがゆっくりと手を挙げると、突如として異様な圧力が場を支配した。真一と愛理の足元に、まるで目に見えない鎖が絡みついたかのように、体が動かなくなった。彼らはどんなに力を入れても一歩も踏み出すことができず、その場に縛りつけられてしまった。
真一は異変を感じ、反射的にポケットの中の金属球を握りしめた。「物質変化」の能力を発動させて、武器に変えようとした。しかし、金属球はまるで無力化されたかのように、何の反応も示さなかった。
「何だ…?」真一の顔は急激に険しくなった。自分の力が突然使えなくなったことが、彼の心に深い不安を呼び起こしていた。
ボスは彼の動きに気付き、冷酷な笑みを浮かべた。「俺の前では、いかなる物質も俺の法則を超えることはできない。」その声は、まるで勝者の冷淡な判決のように響き渡った。
その瞬間、真一は理解した――彼は今、圧倒的な力を持つ敵の前に立っている。自分の力では到底敵わない存在と対峙しているのだ、と。
愛理の目に不安の色が浮かび上がり、手にした二丁の銃に意識を向け、発砲してボスの邪魔をしようとした。しかし、引き金を引いた瞬間、まるでその意思を見透かしたかのように、銃は沈黙した。弾は、決して発射されなかった。彼女が引き金を何度も押し込もうとするたび、まるで目に見えない鎖で縛られているかのように、銃は全く反応しない。
「どうして…こんなことが起きるの?私の銃が…」愛理は無力感に囚われ、震える声で呟いた。
真一と愛理の目が交差し、彼らの心に重くのしかかる無力感が深まっていく。ボスの放つ圧倒的なオーラと能力の前に、反撃の糸口は完全に断たれていた。
昨日から今日にかけて、第18章を一気に書き終えました!本来は旅行から帰ってから書き始める予定でしたが、昨日時間があったので内容を考え始め、気づいたら書き上げてしまいました。来週からは家族旅行が始まるので、執筆と翻訳は一時停止になりますが、予約投稿していた第7章と第8章はきっと帰宅後も問題なく公開されるでしょう。どうぞお楽しみに!




