義信
開発も順調に進む中、
俺は武田義信に呼ばれて岡崎に来ていた。
「義信様、本日はどのような御用でしょうか?」
「うむ、実はな、信長から同盟の話が来ているようなのだ。」
義信はうかない顔をして俺に話してくる。
「ようなのだとは?隣接する義信様を通しての話ではないのですか?」
「ああ、父上に直接交渉にいってるらしい。」
「そうですか・・・」
俺は同盟が成立した時の事を考え出す。
美濃の確保は絶対だ、それと近江だな。
侵攻地帯を向こうが折れるなら結べなくもないのか?
俺が考えて込んでいると・・・
「ヒロユキ殿、信長は妻の父を討ったいわば仇である。
それと手を結ぶとは信義にもとる!」
「義信様?」
俺が義信を見ると激昂していた。
「ヒロユキ殿、そなたの口からも父に進言してくれないか?同盟など結ぶ必要などないと!」
信玄に意見を聞かれるならまだしも、陪臣の俺が直接何か信玄に言うのは越権行為と思う。
「・・・義信様、自分は信玄公の考えに口を出す立場にございません。どうか御容赦を。」
「なっ!そなたは父上が間違った道を進むのを見逃すというのか!」
「そもそも、今川義元殿が討たれたのは戦場の習い、無念かとは思いますがそれをどうとか言う方が間違っているかと。
そして、武田家の進む先を決めるのは当主である信玄公にございます。
陪臣の自分が意見する話ではございません。」
「そなたは信義を重んじる為に三河を攻め落としたのではないのか?」
「武田の為に落としたのでございます。
そして、それも信玄公の御意志にございます。」
「ならば、今川はどうなるというのだ!
武田が父の仇と手を結ぶなど、怒り狂うのがわからないそなたではないであろう。」
「今川が同盟を反故にするなら、それは敵国になるのでは?
その時に命あらば、滅ぼすまでにございます。」
「貴様!よく俺の前でそんな事を言えたな!」
俺は史実の義信の行動が思い出される。
史実では武田義信は今川を攻めようとする信玄を強く諫め切腹することになっていた。
その為に、俺は義信の為にもここで強く諫める事にする。
「義信様の前?義信様は今川の家臣なのですか!」
俺は声を荒げる、威圧する。
「武田信玄の嫡男、武田義信ではないのですか!
それが妻の実家の為に武田を犠牲にするおつもりか!
虎昌殿、守役の貴方がいながら諫めもしないのですか!」
その場に控えていた飯富虎昌は言いにくそうに・・・
「若が奥方のお気持ちもくみ、考えたことゆえ・・・」
「情けない!そのような事で武田随一の猛将の名が泣きますよ!
主が間違った道をいく時に正すのが家臣の役目。
義信様が信玄公の戦略に異を唱えると家中が割れる事もわからないのですか!」
虎昌は言い返す言葉も無いのだろう。
言葉が返ってこなかった。
代わりに義信が答えようとするが、
「しかし、父上が・・・」
「それほど今川が大事なら武田に歯向かわないように伝えたら良いではないですか!
信玄公なら今川を滅ぼすのは容易い事でしょう、しかし、それをしないのは義信様の気持ちを思っての事、それ以上望むのは身を滅ぼしますよ。」
「・・・」
義信は納得いかない顔をしていたが、正論と思う所もあるのだろう。
言葉に詰まっていた。
俺は話が終わったとみて、席を立つ。
部屋を出る前に見た義信は俺を睨み付けていた。
考え直してくれるのを少しは期待したが、
結局、恨みを買っただけになってしまった・・・




