女の戦い
「梅様、ここは城代ヒロユキの私室なりますれば、どうか御部屋にお帰りくださいませ。」
ミユキがヒロユキの部屋に来た梅を追い返そうとしている。
「ええ、奥様、知ってます。でも、私もヒロユキ様の奥の事をいろいろ行いたいのです。」
「なりません、梅様は武田の一門であり、信繁様の御息女ではございませんか。我々のような者と関わってはなりません。
さあ、御部屋にお戻りを。」
梅は父信繁の命もあり、何とかヒロユキの目に止まる所に行こうとするが、ミユキがそれをブロックしていた。
「あの~梅様、無理はなさらない方がいいですよ。」
笛は控え目に梅を止めようとする。
「笛さん、しかし、貴方もヒロユキ様のお側に行きたいのでは?」
「ヒロユキ様は気が向いたら会いに来てくれますよ、そんな事より奥方様と揉めている方がお心を痛めると思います。」
笛の言葉に梅も納得して引き下がる事にする。
しかし、ミユキからすると笛のスタンスの方が不味かった。
ヒロユキの性格上、引っ越して来たばかりの笛や主君の娘の梅を気遣う事は間違いない、目の届かない所で二人きりになる方が恐ろしかった。
「ねえ、皆さん、私が奥方ということは認めているのよね?」
「ええ、でも、ヒロユキ様のような方には側室が何人かいても問題ないのでは?」
梅はさらっと答える。
ミユキも薄々は気付いている。
この時代、側室を持つのは普通の事だ。
それにミユキ自身、無理矢理奥方の座におさまっているだけだ。
「・・・わかりました。互いの部屋の行来は自由にしましょう。
ただし、あくまでもヒロユキくんの意志に任せるという約束を致しましょう。」
「わかりました。」
此処に奥での女の約定が結ばれる。
そして、ミユキには勝算もあった。
未来知識を持つ自分はヒロユキの役に立てると、現にペニシリンの開発は目処が立ちつつあるし、癒しの神とかいう名声もある。
それに同級生の私の方に分がある筈!
吉田の城内は女の戦いに満ちていた。




