報告に
長野業正の降伏に上野中が動揺する。
業正に従い、武田、北条に降る者、
ヒロユキに直接仕える者など様々であった。
越後との境でもある沼田城、城代河田重親は危機を感じ、上杉に救援を求めていた。
上杉謙信もそれに答え、兵を集めていた。
一方ヒロユキは松山城を包囲していた信玄、氏康に業正の降伏を伝えると二人は目を丸くする。
「な、なんと!既に上野を攻略したと!」
氏康が驚きの声を上げるが、俺は訂正する。
「いえ、まだ全体は落とせておりません。しかし、氏康殿にはこれらの降伏を認めてもらいたいのです。」
伝令が出したのは多数の降伏の書状であった。
「認めよう、しかし、信玄殿宜しいのですか?上野1国をいただいても・・・?」
信玄も1国は惜しい気もするがヒロユキとの説明でも、上野に北条を入れて上杉に当たらせる話であった為にここは我慢することにした。
「かまわん、それより末長い同盟をお頼み申す。」
「それは懸念に及ばん、此処までされて裏切るなど北条のとる道ではござらん。」
「ならば、良かった。我等の後ろの安定は北条殿にかかっておりますからな。」
「しかし、信玄殿は良い家臣を持たれておりますな。まさか別動隊だけで上野を落とすとは・・・」
「うむ、ワシとしても驚いておるのだが、良い家臣に恵まれたものよ。なあヒロユキ。」
俺は信玄の言葉を否定する。
あくまでも信繁の部下であると伝える。
「私は信繁様の家臣で信玄公の家臣ではございませんが?」
しかし、信玄は笑いながら、
「同じ事よ、信繁がワシを裏切る筈がないしな。」
「なんと、陪臣でござったか、どうであろう。我が直臣にならんか?」
氏康は信玄の前なのに勧誘してくる。
「氏康殿、ワシの前で堂々と引き抜きは止めてもらえるかのう?
それにコヤツはワシの誘いも断っておるのだ。」
信玄も苦笑いしながら氏康を止める。
「なんと、信繁殿とはそれほどまでの人物ということか、1度お会いしてみたいものだ。」
「機会があればな、信繁は今、甲斐でワシの代わりを勤めておるからのう。そろそろ悲鳴をあげてる頃か?」
俺は信玄の言葉が気になり質問する。
「信玄公、信繁様が悲鳴とは?」
「怒るな、たいした事ではない、ただ政務に追われておるだけだ、当主というのは色々大変なのだぞ。」
「なるほどそういう事でしたか、ならば、私は信繁様の救援に・・・」
甲斐に帰ろうとするヒロユキを信玄はあわてて止める。
「いくでない!まだ戦の最中でないか。此処でお前が離れたら信繁の忙しさは倍になるぞ。」
「うっ、仕方ありません。さっさと片付けていきますか。」
そして、信玄は上野の話と現状について聞いてくる。
「そうですね、現在マサムネが指揮をとり、業正殿と周囲の国人を取り込んでいるところですね。
少々時間がかかりますので千を率いて、報告に参ったしだいです。」
「見事なものよ。」
信玄の口から感嘆の声がでる。
「信玄殿、ヒロユキ殿のお力をお借りしても宜しいでしょうか?」
「氏康殿、如何なることかな?」
信玄は警戒しつつも聞いてみる。
「実は息子の氏照が攻めている辛垣城なのですが、援軍に行ってもらえませんか?」
「辛垣城?」
俺が記憶になく首を傾げていると、信玄が教えてくれる。
「なんだ、知らんのか?辛垣城は甲斐との道すがらにある城だな、確かにあそこが北条殿の領地になれば交流も盛んになろう。」
「となると山間の城なんですね。わかりました、ちょっと行ってきます。」
「本陣からいくらか連れて行くか?」
「いえ、手勢で千もいますし、氏照殿の軍勢もおられるのでしょう。大丈夫ですよ。」
信玄と軽く兵の話をしていると、
「いやいや、千だと少なすぎる、我が子、氏政に二千をつけて同行させよう。」
「そんな北条の御曹司を同行など恐れおおい、勝手に行って勝手に落としてきますから大丈夫です。」
「それは北条として大丈夫でないから、氏政を連れていってくれ。
それに若者同士仲良くしてもらえれば今後の付き合いも楽になるのでな。」
氏康としては武田の次世代を支えるであろうヒロユキと子供達にいい関係を作ってもらいたかった。




