帰国
俺達は無事に躑躅が崎館に着いた。
俺にも休憩用に部屋が用意されており、マサムネと2人のんびり長旅の疲れを癒していた。
すると、信玄に呼ばれて広間に向かう・・・
広間には信玄と信繁の2人がいた。
「来たか、まあ座れ。」
信玄に言われて正面に座るが、
「遠い、もっと近くに来い。そんな所じゃ話も出来ん。」
俺は近くに行く。
途中止まろうとすると、信繁が手招きをするので指示に従っていたら目の前まで来てしまった。
「お前の考える戦略は聞かせてもらった。なかなか面白い考えだが・・・これを見よ。」
信玄から手紙を渡される、中を読むと上野への援軍要請だった。
「ワシはこれを受けて上野を手中におさめようと思うがどうだ?」
俺は意見を言う前に信繁を見る。
「ヒロユキ、大丈夫だ正直に申せ、たとえ兄上の意にそわなくてもかまわない。」
「ならば、お答えします。
援軍に向かうのはよろしいかと思いますが、土地を得るのは止めるべきかと。」
「なに!土地を得るなとはどういう事だ!」
「兄上、落ち着きください、ヒロユキは正直に自分の考えを述べているだけです。」
「う、うむ、すまん、先に言っておきながら取り乱してしまったな、して、その心は?」
「はい、上野を得ると長尾とやり合う事になります。」
「長尾か?ワシが負けると言いたいのか?」
「勝ち負けではありません、無駄な戦いなのです。」
「無駄だと?」
「長尾は関東管領に強いこだわりがあるようです。そうなると上野は譲れない通り道になります。
ならば、守る為に毎回大軍を出すのですか?」
「うむ、確かにそうであるが・・・ならば、何故援軍は有りなのだ?」
「北条に恩を売るのです。此処で断っても角がたつでしょう。ならば、要請に応じて城も落としてしまいましょう。」
「何を言ってる?土地を得るのは不味いのだろう?」
「ですから、北条に売り付けてしまえばいいのです。最初から援軍の条件に組み込んでおけばよろしいかと。」
「北条に売り付けるのか!」
「はい、北条も関東の覇者を目指している家、存分に長尾とやり合ってもらえばいいのです。
我等はあくまでも高みの見物、そして、北条からいただいた金で軍備を整え、西に進めばよろしいかと。」
「西とな?」
「美濃、近江とくれば次は?」
「京か!」
「はい、今すぐにとはいきませんが東に行くぐらいなら西に向かいましょう。」
「くくく、面白い!我が武田菱を京にあげるのだな!」
「できるかはわかりませぬが、目指さねば近付く事も出来ません。」
「見事だ、その才、勘助以上であろう!どうだ、ヒロユキ、ワシに直接仕えんか?」
「いえ、それは御容赦を、信繁さまに既に仕えておりますので。」
「ワシならお主の功に存分に報いてやれるぞ。」
「いえ、たぶん信繁さまを挟んだ方がいい関係を保てると思います。」
「何故だ!」
「進言というのは耳当たりの良いことだけではありません、その時に誰もいなければ私はそこで終わってしまうでしょう。
信繁さまがおられるからこそ、自由に発言が出来るのです。」
「うぬ、しかし、勿体ない・・・」
「そのぶん信繁さまに報いてくださいませ。」
俺は深々頭を下げる。
「わかった!その代わり知恵を貸すのだぞ!」
「信繁さまの御命令とあらば、全力を尽くさせていただきます。」
「そこはワシの為でも良いのだぞ。」
信玄は笑いながらも少し未練がましくしていた・・・




