吉田城
俺達は今川館に来ている。
信繁を含め各将は歓迎の宴に出ているが、陪臣の俺とマサムネは兵士達と共に野営をしていた。
今回、出兵したのは一万二千、今川方にとって、この数は想定外だったのだろう。
宿舎が足りず、多くの兵士が野営となった。
一応、俺とマサムネには宿舎があったのだが、兵士と寝食を共にして一体感を得るのが俺の目論見だった。
「カシラ、そちらが頭領ですか?」
一人の兵がマサムネに聞いてくる。
「そうだ、俺達が手足なら、ヒロユキは頭だ。言うことを聞けよ。聞かないなら・・・」
マサムネが威圧をかけると・・・
「あ、当たり前でさぁ、頭領の言うことは絶対であります!」
「わかっているならいいんだ。」
マサムネは威圧を止める。
「マサムネはすごいな、よくあんなに言うことをきかせられるね。」
「叩けば何とかなるんだよ。それより、俺達はどう動くんだ?」
「遠江の今川領を鎮撫しながら吉田城を目指すよ。松平が出てきたら、野戦があるかもね。」
「野戦の時はお前も軍に入るか?」
「いや、俺が入ると足手まといだろ?本陣にいさせてもらうよ。全権はマサムネに任せる。」
「りょーかい、後ろで俺の活躍を眺めてろよ。」
「見物させてもらうよ。
しかし、お前は怖くないのか?」
「何が?」
「戦だぞ、これから殺しあいをするのによく平然としてるよな?」
「そうだな・・・俺としてはこの時代が合ってるのかもしれんな、現代でルールに縛られた武術じゃ出来ない事を出来るんだ、俺は今楽しくて仕方ないや。」
「そうか・・・お前もか。」
「おっ、ヒロユキもか?」
「ああ、お前とは少し違うけど歴史に名を残す人に会い、話せるんだぞ。歴史好きにはたまらん。
ましてや、俺達の名前が歴史に刻まれるかも知れないと考えると身体が震えるぐらい楽しいんだ。
・・・まあ、ミユキさんやユメちゃんには言えないけどな。」
「違いない。」
俺達は男二人語り明かしながら夜は更けて言った。
数日後、吉田城を囲んでいる。
籠城する酒井忠次は松平の名将だ。
簡単には落ちないだろう。
しかし、ここで時間を多く使う訳にはいかない、俺は信繁に進言しに行く。
「信繁さま、お話が・・・」
「ヒロユキ、どうしたんだい?」
「今宵、夜襲をかけさせてもらえませんか?」
「夜襲?それぐらいで落ちる城ではないよ。」
「それはわかっております。しかし、門が開けばどうでしょう?」
「なに?門が開くのかい?」
「1つ策がございまして、成功するかは解りませんが、成功すれば一気に攻め落とせるかと。」
「ふむ、やってみなさい、義信には伝えておく。門が開いたらヒロユキの部隊から突撃するように、他の隊も続くからね。」
「わかりました、宜しくお願いします。」
その日の夜、
「ヒロユキ、ホントに門が開くのか?」
「どうだろう、こんな使い方は初めてだからね。成功すれば・・・マサムネ、突撃だ!手筈通り静かに行けよ。」
俺には伝わってくる感覚があった。
「おら!てめぇら行くぞ!静かに向かうぞ。」
「カシラが一番うるさいですぜ。」
「やかましい!」
マサムネの命令の元、俺達の部隊は進攻を開始する。マサムネが近付くと門が開く、
「行くぞ!手柄は俺達の物だ!」
門が開いた瞬間、マサムネは一気に城内に駆け上がる。
それを見た各部隊も、遅れながらも総攻撃を開始した。
いきなり門を突破された城内は混乱に陥っていた。
知らせを聞いた、酒井忠次とはいえ、対応出来なかった。
「な、何が起こっているんだ!」
忠次が指揮を取ろうとしたときには、既に本丸まで、マサムネ率いる武田軍がきている。
「既にここまで!きておるのか!皆の者、踏ん張りどころだ、敵を押し返せ!」
指揮をとる姿を見てマサムネが近付いた。
「あんたが大将か?」
「お主が攻めての大将か?名を名乗れ!」
「武田信繁が家臣、土御門ヒロユキが友、立花マサムネ、そのクビ頂戴致す。」
「ワシは松平元康が家臣、酒井忠次、この城を渡す訳にはいかん!」
忠次は刀を抜き斬りかかる。
「甘い!」
マサムネは槍を突きだす。
「ぐっ・・・」
忠次の喉元に突き刺さる。
「敵将、酒井忠次、討ち取ったりーーー!」
マサムネの声が戦場に響き渡っていた。
1日で、吉田城は陥落した。




