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ヘブンアンドアース~天使と人間、異種間の恋愛譚~  作者: 村右衛門
第一章 決行日
3/33

Ⅲ 天使たちは二分され。

第一話・第二話に幾つもの脱字を発見しました。

テキスト文書からペーストする際にルビを含んでいた文字が消失していたようです。

申し訳ありませんでした。

既に脱字については修正しておりますので、ご安心ください。

 さて、天使たちは、地上(アース)で二つの勢力に分かれていた。


 一つが最大勢力である、天使政府、並びに人間撲滅協会に与する天使たちの勢力。


 一つが弱小勢力である、人間共生推進協議会、またそれに与する天使たちの勢力。


 表面上は天使政府の考えとして提示されている、「人間撲滅」の目標に対して天使たちすべてが納得し、協力している。しかし、実際には人間と共存する方向性で協議する天使たちだって存在する。けれど、それらの勢力は天使政府とは逆であり、そこまでの権力を得ていない。天使政府の勢力が明らかに強いのが現実であった。


 天使政府は天使全てを統率する立場であり、何も知らない天使たちに情報を与える情報の発信地である。それだけ、権力は天使政府のもとに集まりやすい。


 だが、最近になって天使政府はその実質的な権力を失いつつあった。その原因が人間撲滅協会の存在である。人間との戦いが激化するにあたって、天使政府とはまた違った専門的な機関を設立することが決定された。そして、人間撲滅協会は天使政府の傘下で人間との戦いを指揮する実戦的権力を得るはずだった。


 天使政府の閣僚たちの思惑からずれたのは天使政府の後ろ盾となっていた大天使カリススだった。天使政府がこれまでに権力を持っていたのは大天使カリススの後援があり、その意向を代弁する形で権力を揮ってきたからである。


 そのカリススが天使政府から人間撲滅協会へと移った。その事実による影響は多大だった。天使政府の傘下に人間撲滅協会がある、という上下関係は名目上だけのものになり、その実態は天使政府が人間撲滅協会に利用される、というものだった。


 無論、名目上は天使政府が上で、人間撲滅協会は天使政府によって動かされている、という事になっており、天使たちもそう捉えている。



―――それによって何が起こるか。


 人間共生推進協議会、及びそれに与する天使たちは天使政府に対して敵対感情を抱く。人間撲滅協会については天使政府によって無理やり動かされているような印象を受けるため、人間撲滅協会は比較的世論の影響を受けずに済む。天使政府は人間撲滅協会に集まるはずだったヘイトを集め、人間撲滅協会への影響がないようにするための盾として機能することになるのだ。


 天使政府の情勢は他の天使たちが考えるよりも悪化していた。そして、もう一つ。天使政府は問題を抱えていた。これについては天使政府だけの問題ではなく、人間撲滅協会もまた、影響を受けていた。そして、最近になって議題に上がっているのもほとんどがこのことについてである。



「人間に対する対抗手段について、何か意見のある者はいないか?」

 天使たちが会議している中、議長らしき天使がそこにいる天使たちすべてを見回しながら尋ねた。しかし、発言しようとする天使はいない。


「今の現状として、天界(ヘブン)に我々天使が侵入する方法さえ見つかっていないのです。対抗するも何も、それ以前の問題なのでは?」


 天使の一言で、先ほどより数度、温度が下がったように感じられた。


天界(ヘブン)にはプロテクトが張られている。単純に侵入することは出来ず、雲を貫くことになるだけ、それどころか基本的にはその存在を目視することさえ不可能だ。」

 苦虫を噛み潰したような表情で、天使は現状を再確認する。


「やはり、あの時の天使が何も行動を起こさなかったことが悔やまれますなぁ」

 全員の脳裏に、ある天使の姿が浮かび上がる。十日前だったか。その天使がに侵入することに成功したのにもかかわらず、人間に危害を加えなかった。それどころか、人間との友好関係を築いていた。


 その一件が天使たちの中には人間に対して友好的な感情を抱く者もいる、という事実を天使政府に認知させたのだ。


「何故彼は極刑にならなかったのか。あれは明らかな叛逆と判断できるだろうに何故だ!」

 ある天使が感情を高ぶらせ、怒鳴りの混じった声を上げた。


「止めろ、カリスス様の決定に異議を立てるか」

 議長である天使は静かに、冷酷にそう言って天使の激昂の言葉を切り捨てた。


 部屋の温度が下がる、というよりも空気自体が全て鉛にでもなったかのようだった。部屋に張り詰めた雰囲気が纏わりつく。何が要因か。そんなことは明々白々、考えるまでもない。


「さて、これ以上会議をしても良案は出まい。それに、失言を重ねることにならないかと恐怖しているのは皆同じであろう。今日のところは解散だ」

 会議をしている天使たちの中で最も古株である天使は、皆に有無を言わさず意見を聞かせる威厳があった。そして、少々他の天使に厳しいところはあるが、普段は温厚で統率力の高いその天使は他の天使からの信頼を勝ち得ていた。


 その天使が会議を解散すると言えば、他の天使たちは解散する。


 古株の天使の一声で、天使たちは一様にその場所を去る準備を始め、一分もすれば全ての天使がその場からいなくなっていた。しかし、彼らの心の中に生まれた一つの疑念は会議を解散して尚、色濃く残り続けていた。



 さて、こちらは人間共生推進協議会サイド。


「天使側は人間に対して強い嫌悪感を抱いている。これは事実だ。しかし、人間側は天使に対する敵対心を抱いているのだろうか。」


 組んだ両手を机に乗せ、会議机の誕生席に座る天使は思案顔で、呟くように言った。


 周りに座る天使たちも思案顔になる。天使が人間に対して敵対感情を抱いている、というのは三千年前から決まっていることである。しかし、だからと言って人間側も天使を忌み嫌っているかと言われれば、結論は出ていない。


 実際、人間の存在は知識としてこそ知っているものの、目にしたことのある天使はほとんどいなかった。そのため、人間の考え方は勿論のこと、その内部情勢を理解することは出来ないのだ。


天界(ヘブン)にいる人間にとって天使は一切脅威でないはずだ。ただ見守るだけでいいのだし、その範疇から出なければ人間に対して天使が危害を加えることは出来ない。何も、わざわざ敵対するメリットがないだろう。」


 座る場所からして、議長のような立場にいるであろう天使は、そう言った。その表情は自信に満ち溢れていて、自分の考えに明確な根拠があるかのようだった。


「確かにそうだ。人間側に敵対の意思がないのならば、天使政府を叩き、無力化できれば人間との共存も可能ではないのか?」

 会議に参加する天使たちはその全員が上下関係を持っていない。そのためにそれぞれが敬語を使うことなく発言していた。


「だが、世論はどうする? 天使政府だけが人間撲滅の目標を持つのではない。天使政府に(くみ)する天使たちは圧倒的な数のはずだ」


 少々、部屋の空気が重くなった。人間共生推進協議会で生じている最も大きな課題は、天使側での世論をどのようにして操作するか、という点である。天使政府を制圧できれば天使たちが一様に考えを変化させるというほど簡単な話ではない。世論は政府を優に超えるほど、影響力を持っている。しかし、逆に言えば世論を味方につければ天使政府の制圧は容易だ。


 世論を操作する。それが出来れば少数派であったはずの人間共生推進協議会は圧倒的な影響力を持てるのだ。


「最近、天使政府は人間との戦いに利用できる最新技術を開発したと発表している。このままでは天使たちの士気は上がるばかりだ。世論を相手に勝てるはずもない」

 天使たちは次々と反論を提示していく。議長らしき天使は困った表情で唸った。



「士気を上げてしまえばいいではないか。このままならすぐにでも第五次天地戦争が生じる。その時の混乱に乗じて行動すれば、少数派の我々でも何かしら行動を起こすことは出来る。」


 一人の天使の発言に対して、他の天使たちは過激すぎる考えだと思った。

 天地戦争が起こるということは更に人間との溝が深まっていくということだ。それだけでなく、天使側に多大なる犠牲者が出る。それを見過ごし、自分たちのために利用する、というのは人間共生推進協議会の理念に反するもののはずだった。


 しかし、逆にそれ以外の方法が見つかるか、と問われれば誰も提案を持ち合わせていないのも事実だった。


 会議をしていた天使たちは黙り込む。出てきた提案を認めれば人間共生推進協議会の理念は脆いものだという認識を与えてしまうだろう。けれど、このままでは人間共生推進協議会の存亡にかかわる。元より少数派の彼らは天使政府から隠れるようにして活動を行っているのだ。隠密の壁が破られれば、彼らの存在は握りつぶされるだろう。


 誰もが、押し黙った。何かを言えば、自分の立場が危うくなるかもしれない。という考えが、天使たちの口を強力な接着剤で閉じさせた。


「………革命を、しようではないか。それ以外に我々に残された道はない。我々の最終目的を達成する。そのためには多少の犠牲は必要だ。」

 口についた接着剤を剥がした一人の天使が、どこか震えを含んだ声音でそう言った。他の者からの糾弾を怖れているのか、誰とも目を合わせようとしない。


「確かに、そうだ……。犠牲を怖れるようでは目的を達成することは出来ない。」


 また、同調するように賛成を述べるものが現れる。


「しかし、それでは………」

 何かを言いかけた天使は、他の者の賛成の呟きに押し切られて黙らざるを得なかった。



 そこにいる天使たち全員が、人間共生推進協議会が高尚な考えを持つ団体から、天使たちの犠牲を問わず自分たちの目的を遂行する、天使政府のような存在に近づいていることを感じていた。

お読みいただきありがとうございました。

第三話、ということで天使と人間の間の雰囲気については何となくで理解していただけたかと思います。

十日前、というのは第一話や第二話でも出てきたような、出てこなかったような……。

曖昧にしているのではなく、作者も実際覚えていないのです。


次回投稿

「Ⅳ 大天使は奪われ。」

8月20日投稿予定です。ご期待ください。

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