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ヘブンアンドアース~天使と人間、異種間の恋愛譚~  作者: 村右衛門
第四章 レプリゼント
27/33

XXIV 天使と人間は。



 霞の先導で天使政府の施設から外へ出、目の前に広がる景色に、霞以外の天使たちは唖然と口を開ける。



 そこには、人間と天使がいた。



「貴方が、天使政府の代表ということでよろしいか?」


「ええ、貴方は、人間政府の代表だな」


 天使政府の代表と名乗ったのは、イムシスの父親であった。カリススが消えたという情報は、ラチェリスから得たのだろう。



「人間政府は、これまで天使側に対する攻撃意思を見せたことは無い。貴方達天使が、一方的に攻撃してきたのだ」


「ああ、その事については理解している。しかし、それら全て、前・責任者であるカリススの横暴によるものだ。今、我々天使には根本的な人間に対する攻撃意思はなかった」


「成程。我々としても人間と天使の共存は望んでいる。これを機に、我々は歩み寄るべきなのだろう」


「それは我々の思うところと同じ。是非、ご協力したい」



 目の前で起こった出来事に、その情報量に、ラミリルは呆然と立ち尽くしていた。


 これまで、願い続けていた展開ではある。しかし、そんなことが起こるわけもないと思っていた。



「―――これが、私の計画」


 何時(いつ)の間にか、ラミリルの横には霞が立っていた。



「計画……?」



「そう。でも、殆ど私は何もしてない。ずっと水面下で動いてたのは()()()使()


 そう言って、霞は天使政府の役人という顔でイムシスの父親の後ろに並んでいる、ラチェリスを指さした。


「ラミリルと、別れた後だった。突然、あの天使が現れて〝未来〟を説明し出した。彼の奇跡は〝神は、全て決めておられる〟と言うらしくて、未来予知が出来るって……。それで、これからどういうことが起こるか、詳しく教えてもらって、それに沿って作戦を立てた。まあ、私は雲上指定区から出られなかったし、人間政府にも穂香から話を通してもらって、私は実行犯になり切れなかったんだけど……ね」


 先程から、ラミリルの脳内に入ってくる情報量が多い。


 霞から語られる、全ての真相は、驚愕ばかりだった。



「で、っでも……人間政府は天使との共存を簡単に承諾したの?」


 ラミリルは情報量に気圧されながらも、如何(どう)にかそれだけ疑問を溢すことが出来た。


「ああ、それね。人間政府は天使との共存を元々望んでたんだよ。天使と仲間になれば、天使の持つ奇跡を利用することもできる。だから、本当なら味方になってくれるのが一番だったんだけど、天使側が攻撃的な姿勢を取り続けるから、それも諦めかけてたところだったんだよね」


「でも、ラチェリスが予知した。この日、この時間に、天使たちの考えが一斉に変わると。これは私の予想だけど、ミカエルの奇跡が消えたからだと思う。ミカエルは、天使と人間の溝を深める為に、天使の攻撃思想を常に増大させていた。そもそも、攻撃思想を持たなかった天使は穏健派として存在していたけどね」


 霞の説明に、ラミリルは理解しきれずとも、それを疑うことはしなかった。



 誰あろう、霞の言葉なのだから。



 しかし、ラチェリスは、どれだけの情報を持っているのだろうか。



 未来予知―――。


 それによって、どれだけ知りたい情報が得られて、どれだけ知りたくない情報を得てしまったのだろうか。


 ラミリルは、そこで考える事を止めた。自分が干渉できる範疇を越えている。




 ただ、一つ―――。




 真相を知って驚いた。


 ラチェリスが作り上げた計画の中で動いていただけなのだと知って感嘆もした。


 だが、自分がラチェリスに対して感じるべきなのはそのような感情ではないと、ラミリルは思う。



―――ただ、貴方に賞賛と、感謝を。



 ラミリルは、これから会うことも、話すこともないであろう、ラチェリスに心の中で賛辞を贈った。ちっぽけな自分のような存在からの賛辞では足りないだろうとは知りながら、それが、自分にできる最大限だとも思った。



「人間側は天使の奇跡を利用できる。天使側としても、天地戦争による犠牲を減らせるわけだし、穏健派が出張ってくるだろうね。利害一致というわけか……私の父親も、隠れて穏健派だったし、これを契機(けいき)とみて想いっきり(てのひら)返しするんだろう」


 イムシスが最後にまとめた。


 キミエルはあまり、状況を理解できていなかったが、「ハッピーエンド……だな」と言っている。



「ほんとに、皆のお蔭だね。ありがとう」


 ラミリルはイムシスとキミエル、霞を前にして頭を下げた。


「良いんだよ。私のしたいようにやっただけだから」


「私はほとんど何もしてないよ」


「俺も何もしてねぇな」


「キミエルは謙虚じゃなくて本当にやってないでしょ―――ボタン押したくらい?」


「何だとォ!? ……確かにそう、だな」


「はは、懐かしいな、この感じ。そんなに時間は経ってないのに」



 和やかになった雰囲気に、ラミリルも、笑みを浮かべた。


 やっと、心の底から笑うことが出来たように思う。

 


 ふと、ラミリルは視線を上げた。


 異なる運命の歴史では、虹はノアの箱舟の後、神からの約束として空にかかった。


 今も、ラミリルの視線の先には、広大な虹がかかっている。正に、天と地を橋で繋ぐほど、大きく、雄大な虹だった。



 人間と天使―――。その協調の象徴(レプリゼント)となる、虹であった。



 人間政府の代表と、天使政府の代表が、その虹のもとに手を取り合い、その平和と協力を象徴して肩を抱き合った。


 これまでいがみ合ってきた、相手との和解と、未来永劫の平和を、虹に誓った。





―――子らよ、私の願いは叶えられた


―――これから、天は天使と人間、その共通の財産として与えられるであろう


―――よく、やってくれた――――――――――



 神の音でない思念が響いたその瞬間、ラミリル達天使、霞達人間、そのどちらもが理解した。



 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()




 永遠の命を、〝全員が〟得たのだと、感覚で、理解した。



全ての問題も解決、終了です!!

―――それでも、なおまだ終わりません。


次回投稿

「XXVI 人間は堕天する。」

11月18日午後7時投稿予定です。ご期待ください。

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