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夜行路 雪夜の狐火

作者: ユキア

こんにちは( *・ω・)ノ



今回はふと思い付いたお話を掲載します。

簑笠姿の男が一人、雪降る帰路を急いでいた。辺りはしんと静まり返った夜道である。街から離れ、振り返ると灯りが遠くにちらほら見えるだけだ。暗い夜道を照らす月灯りもない。雪で覆われた路面を一組のかんじきが歩いて行く。

林に差し掛かった時の事、男はふと、灯りが見えたように感じた。ここらは狐が出て人を化かしよるから気を付けねぇと、そう肝に命じた刹那、何かが木陰でぼうっと光る。何事かともう一度眼を凝らして木陰を見るが何もない。気のせいかと歩を進めたその時、雪がちらほらと舞い始めた。こりゃ吹雪くなと気を揉む。脚を進めるが時既に遅し、街外れの茅葺き小屋に付くまでに本格的に吹雪いて来たのだ。ごうごうと吹雪く夜道を歩く。どんどんと悪くなる視界に路か林か分別が付かなくなる。やがて路がわからなくなった。どうやら路から反れて林に入ってしまったらしい。こりゃ吹雪きが止むのを待つしかねぇや、そう思いながら凍える手に息を吹き掛け、(さす)りなんとか暖を取ろうとする。樹の影でなんとかやり過ごそうとするが寒さが襲ってくる。

こりゃもうダメだと思った時、眼の前に蒼白く光る玉がぼうっと浮かんでいた。な、なんだこりゃ?!ぷかぷかと薄気味悪く浮かぶそれは付いて来いと言わんばかりに路を指していた。狐の仕業か?と男は思ったが試しに付いて行ってみようと決めた。蒼白い火の玉は吹雪きの中をどんどんと迷い無く進む。男は藁にもすがる思いで一心不乱に付いて行った。付いて行くうちに見慣れた路に出る。

そうして気がつくと吹雪きは止んでいたのだ。脚を止め、空を見上げると満点の星空が広がり、薄っすら光三日月の月光りが男を照らした。そうして辺りを見るが蒼白い玉はいつの間にか消えていた。歩き出そうとするとコーンとどこかで鳴く声が聞こえた気がした。化かされるどころか助けられたなと思い、男は持っていた煮干しをそこに置いて行った。振り返ると煮干しはもう無かった。無事に自宅に帰れた男は以後吹雪きが吹くごとにその路に煮干しを置いて行くらしい。今でもその路では雪が降ると蒼白い光りが見えると言う。


神秘を感じる事が少なくなった現代社会、そんな中でもふと眼をやればそこには旧き良き日々の人々と神秘の暮らしが見えるのではないかと、感じた事から書いたお話です。

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― 新着の感想 ―
[一言] 不思議な現象が次々を科学で解明されていく現代ですから、こういう話は聞きませんよね。 もちろん、まだ解明されてないこともありますけどね。 「と、いう説がある」程度の説明が載っている現象がそうで…
2020/09/28 20:09 退会済み
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