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【完結】魔術師は嘲笑の中を足掻き続ける ~嫌われ魔術師は、策謀と陰謀が渦巻く王国で、その嫉妬と羨望、そしてその力を聖女暗殺に利用されるが、それを受け入れ自身も利用することにした~  作者: 成吉灯篭
第一章 魔術師は嘲笑の中足掻き続ける

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幕間45

 幕間45


 「あれは何?」

 リリアーナは、目の前で蠢く物体を見ながら呟く。

 それは、リリアーナが放った光の網の中で、徐々に体積を増していく。

 そして、その巨大化した身体で、その光の網を突き破ろうとしてくる。


 元々光の網で捕えていた、セレトの面影は、既にそこにはない。

 強靭な腕、先が二つに分かれた太い尾、破れた帆のように羽ばたき続ける翼。

 その顔には、角が生え、どこか爬虫類を思わせるように鋭いものへと変わっていく。

 そしてその身体は、大量の髑髏のような鱗によって覆われている。


 もはや人間とは思えない、奇怪なキメラのような化け物。


 その化け物は、非常に強い瘴気を発しながら、徐々に力を増していく。

 そしてそこから発せられる魔力に込められた、非常に強い毒素によって、リリアーナは、一瞬立ち眩みを感じる。

 ふと周囲を見ると、彼女の部下達も、セレトが発する魔力によってか、どこか苦しんでいるような素振りを見せている。


 「ぐぐググぐろろロろ。」

 よくわからない、声なのか、何なのかよくわからない音を立てながら、その化け物は、こちらを見つめている。

 既に、身体が大きく変貌していながらも、その眼は、セレトと同じ、深い闇を宿しているようであった。


 「っ来るよ!全軍、迎撃態勢をとれ!」

 そして、その化け物は、こちらを一瞥をしたかと思うと、体をよじらせ、一気にこちらに向かってくる。

 それに対応する形で、リリアーナは、慌てて部隊に檄を入れる。


 魔力の暴走体なのか、それとも何らかの術の影響なのか。

 いずれにせよ、漏れ出る強大な魔力と、力に溢れた変貌した身体の力強さは、見て取れたが、所詮は、理性を失った獣。

 いくら強い力を持っていようとも、問題なく対応はできるはずであった。


 「相手の出方がわからない以上、まずは防御態勢をとれ!攻撃を凌いで反撃をする。」

 そう言いながら、リリアーナは、魔力の防壁を展開する。

 周囲の部下達も、同様に守りを固め始める。


 「ぎぎ。きき。」

 うめき声をあげながら、一気にセレトは急降下をしてくる。

 それと同時に、魔力の濃度が上がり、リリアーナ達の身体を蝕んでいく。


 「うっ撃てえええ!」

 そんな魔力に当てられたのだろうか。

 部下の一人、部隊長の一人が恐怖にかられた声で叫ぶ。


 「待て!防御を解くな!」

 リリアーナは、すぐにその指示の危険に気が付き、その指示をかき消そうと大声で叫ぶ。


 ドン!ドン!

 だが、一歩遅かったのか、周囲でリリアーナの指示の到達が間に合わなかった兵士達が防壁を解除し、一斉に魔力や弓矢を放ち始める。

 その音から少し遅れて、光弾や弓が一斉にセレトに飛んでいく。


 ボン。

 小気味のいい爆発音と共に爆風が舞う。

 だが、その煙の中から、何事もなかったかのように、セレトは、現れ一気にこちらに距離を詰めてくる。


 「うわああ!ウォールを!」

 慌てた兵士の声が聞こえる。

 だが、それをかき消すように、セレトの身体から大量に黒弾が放たれる。


 「ぎゃあああ!」

 「助けてくれえ。」

 「だめだ!防ぎきれない!」

 その黒弾が着弾すると同時に、一気に周囲から叫び声が上がる。


 見れば、防壁を張りなおす暇がなく攻撃を受けた者だけでなく、幾名か、その強大な力を防壁で防ぎきれずに黒弾を浴びている者もいる。

 セレトが放った黒弾は、対象にぶつかると、黒い炎を展開させ、呪いの力でその対象を焼き尽くしながら、同時に呪い殺していく。

 今のところ、リリアーナが展開した防壁は、セレトの攻撃を防いでいるが、この規模の力をそう何度も放たれてしまうと、自身の部隊への被害も看過できないレベルとなるであろう。


 最も、自身の部下の大半は、何度かこの攻撃を耐えること位は、十分に可能なようである。

 敵の攻撃も大雑把なものであることを考えると、全軍でこのまま攻撃を耐えながら、反撃の機会を持つことは、そう難しくはないであろう。


 「全軍、落ち着いて攻撃を受けろ!その後、反撃に移るぞ!」

 リリアーナは、癒しの魔法を振りまきながら、味方を鼓舞し指示を出す。

 セレトの攻撃を堪え切れれば、ここから十分に逆転は可能であろう。


 セレトは、羽を力強く動かしながら、再度上空に上り、こちらの様子を伺っている。

 また、タイミングを見て、一気に攻め込んでくるであろう。

 だが今度は、リリアーナ達による一斉の反撃が行われる。

 そのような思いを心に込めながら、リリアーナ達は、魔力を込め始める。


 そんなリリアーナ達を、セレトは一瞥をすると、上空よりこちらに一気に降下をしてくる。

 魔力を周囲にばらまきながら、強大な、されど直線的な力をもって襲い掛かってきた。


 「障壁を展開しろ!」

 リリアーナの指示に合わせ、兵士達は、前面に魔力の壁を展開し、セレトの攻撃に備える。

 迫りくるセレトの一撃は、一見、下手な防御魔法等、吹き飛ばしてしまいそうな強大な力による攻撃であったが、単純な前方からの一撃である以上、それを防ぐこと自体は、十分に可能であるはずであった。


 「闇の手よ。」

 だが、そんなリリアーナの耳に、どこかこびりつく様な、不快な女の声が聞こえる。

 それと同時に、周囲に一気に不快な感覚が広がる。


 それが、セレトの懐刀、アリアナの声と気が付くとともに、リリアーナの足元に、魔力による黒い穴が生成され、そこから一気に黒い腕が襲い掛かってくる。


 「ちぃ!」

 舌打ちをしながら、リリアーナは、防御魔法を維持したまま、光弾を黒い腕に打ち込む。

 大した魔力も込められていないのか、リリアーナの攻撃によって黒い腕は、あっけなく消滅をする。


 「うわああ!」

 「なんだこれ!」

 「落ち着け!障壁を解除するな!」

 だが、周囲の部下達は、それどころではないようであった。


 魔力の密度は、濃くないものの、その分、広いエリアに展開されたアリアナの魔術は、一斉にリリアーナの部下達を襲っていた。

 手慣れた者達は、リリアーナと同じように障壁を解除せずに、冷静に黒い腕に対処をしている。

 だが、多くの者達は、急に襲い掛かってきた黒い腕に翻弄をされ、手傷を負う者や、黒い腕の襲撃の対処のため防壁を解除してしまう者もいる。


 「ぎぎぎ。」

 そして、そんな状態のリリアーナの部隊に、セレトが襲い掛かる。


 「腕を気にするな!守りに入れ!」

 リリアーナは、大声で部隊に声をかける。


 だが、そんなリリアーナの指示も間に合わず、セレトの放った攻撃を防ぎきれず、黒弾や、その太い腕の一撃で、多くの兵士達が吹き飛ばされていく。


 「くそ!体制を立て直せ!」

 反撃もままならず、セレトの攻撃を耐えながら、リリアーナは、次の一手を考える。

 なんにせよ、今、対応を取るべきは、アリアナであろう。

 強大な力を持ったセレトの攻撃を防ごうにも、アリアナの援護がある以上、碌に対応もできず、確実にこちらの戦力を減らされていく。

 それならば、まだ仕留めやすいアリアナを先に潰すべきであろう。


 そう考えたリリアーナは、すぐに行動に移す。

 セレトへ攻撃をするために込めてた魔力を解除し、すぐに辺り一帯に光のヴェールを展開する。


 「なに、これは?!」

 どこからか、アリアナの焦ったような声が聞こえてくる。

 闇の魔力で、どこかに魔力の穴を作り、そこに潜んでいるようであったが、このリリアーナの展開した光のヴェールは、その空間に干渉をし、アリアナの動きを封じていく。

 そしてアリアナを捉えた、光の魔力は、そのまま一点に集中されていく。


 「っやりますね!」

 その一点集中された魔力の渦から、アリアナが悪態をつきながら飛び出す。


 「逃がすな!」

 同時にリリアーナは、周囲の部下達に声をかける。


 「はい!覚悟しろ!」

 「反逆者が!」

 その命令に従い、アリアナの周囲にいた、十名ほどの部下達は、一斉に武器による一撃を彼女に向けて放つ。

 放たれた斬撃や、突き、弓は、アリアナの身体に次々と刺さっていく。


 「雑魚がああ!」

 だが、アリアナは、先程までの淑女のような態度をかなぐり捨てて、絶叫と共にリリアーナの部下達の攻撃を身体を黒い液体に変えてやり過ごす。

 同時に、その身体から、黒い棘を飛ばし、周りにいる者達に一斉に攻撃を仕掛ける。


 「閉門!」

 最も、リリアーナは、そんな状況にも動じずに、一言呪文を述べる。

 その言葉に合わせて、黒い液体の塊となったアリアナの身体は、一気に光の箱に閉じ込められていく。


 「これは?ふざけっ。」

 アリアナは、何かを叫ぼうとするが、もう遅い。

 そのまま一気にリリアーナが展開した、魔力による光の箱に封じ込められていく。


 「げげぎぎぎ!」

 そんなアリアナの状態に気がついたのか、セレトが再度、こちらに攻撃を仕掛けるべく、一気に降下をしてくる。


 「もう種は割れたんだよ。セレト卿。」

 だが、リリアーナは、そんなセレトに一つの魔術を込めた光の矢を放つ。

 光の矢は、まっすぐにこちらに向かってくるセレトの眉間を確かにとらえる。


 「自身の身体に、召喚術の応用で魔物を呼び込み、それを核に、魔力をもって強引に身体を組み替える。」

 解呪の術式を込められた光の矢は、セレトの身体の魔力を一気に霧散をさせていく。


 「だが、全ての核である召喚の術式の機能が停止すれば、その術は、維持はできなくなるだけですね。」

 矢に込められた解呪の術式は、セレトの身体に埋め込まれた召喚術、呼び出された魔物を、魔力と共に分解していく。


 「さて、召喚術と共に、身体を維持していた魔力もなくなりましたが、貴公はどうしますか?セレト卿。」

 そしてリリアーナが刃を向けた先には、地面に倒れ、人型へと戻ったセレトが倒れていた。


 その眼は、こちらを強く睨み、されど一度に大量の魔力を失った影響か、術を強引に解除された副作用か。

 身体も碌に動かせない様子のセレトを睨み返しながら、リリアーナは、その刃に魔力を込めた。

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