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【完結】魔術師は嘲笑の中を足掻き続ける ~嫌われ魔術師は、策謀と陰謀が渦巻く王国で、その嫉妬と羨望、そしてその力を聖女暗殺に利用されるが、それを受け入れ自身も利用することにした~  作者: 成吉灯篭
第一章 魔術師は嘲笑の中足掻き続ける

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幕間44

 幕間44


 ユノースは、後方に気を配りながらも、可能な限り速度を上げて自身の主の後を追う。

 弟であるロットも、あそこまでの実力差を見せつけられれば、策もないうちに、早々追ってはこれないだろ。

 とはいえ、あの鋭い刃と実践慣れをした立ち回りは、ユノースにも予想外の実力ではあった。

 そのことに、どこか身内びいきのような喜びを感じながら、戦いの後の気持ちの高揚も合わさった興奮した状態で、ユノースは、集合場所に向かっていた。


 王都からの脱出路を抜け、国境への道をかける。

 後方から追手が迫ってくる様子もなく、このまま進めば、自身の主に問題もなく合流できるであろう。


 異変に感じたのは、合流場所に指定した地点に近い、国境に近い街道に差し掛かったタイミングであった。

 巡回している兵士達に発見されるリスクを考え、街道から少し離れた地点を移動していると、血の匂いがしてきた。


 戦闘があったのか。

 自身の主が巻き込まれたいる可能性を考え、その戦闘があったであろう箇所にユノースは、気配を消して近づく。

 それなりの手練れの兵士に加え、ユラも付いているヴルカルが、早々遅れをとるとは思わなかったが、その血の匂いは、ユノースにどこか不安を感じさせた。


 街道に近づくにつれ、血の匂いは強くなり、同時にユノースの目に数名の倒れている人影が入ってきた。

 見たところ、王国の兵士のものと追われるその装いの男たちは、多量の血を流し倒れていた。

 流れる血の量と傷を見るに、その命は既に失われているようであり、同時に血の固まり具合から見るに、恐らく戦闘が終わってから、そう時間は経っていないのであろう。


 冷静に状況を分析しながら、死体の様子を改めて確認をする。

 その死体の中に、自身の主と共に逃げた、仲間の兵士たちの物がないことを確認し、ユノースは、ほっと安堵の息を吐く。


 「ビルクス。こんな奴まで出張っているなんてな。」

 改めて死体確認しながら、ユノースは、一人呟く。

 王国内でも、屈指の使い手であるユノースは、胸を貫かれ絶命をいている。

 これ程の実力者を屠ることができるのは、恐らくユラであろう。


 いずれにせよ、この場所に追手がいた以上、あまり長居をしている暇はなかった。

 急ぎヴルカル達と合流し、次の追手が来る前にここから離れる必要があった。


 そう考え、ユノースは、合流地点へと向かう。

 事前の打ち合わせ通りであれば、ここからそう遠くない場所に設けられた隠れ家に集まっているはずであった。

 だが、そのまま合流地点に到着したユノースは、予想外の状況に遭遇することとなった。


 「おいおい。なんだよこれ。」

 そうユノースはぼやきながら、隠れ家の惨状を見つめていた。


 隠れ家の中は、先程の街道沿いが比にならないほどの血の海であった。

 ユノースと共に、ヴルカルの護衛にあたり、ここまでついてきた兵士達は、皆、殺されていた。

 だが一見すると、その場には、存在しない死体あった。


 ヴルカルとユラ。

 自身の主と、残った部下の中で最も使い手である者。

 少なくとも、ユラが残っているということは、自身の主もまだ大丈夫とみるべきであろうか。

 だが同時に、この死体の中には、襲撃者の死体はなかった。

 つまり、この惨状を生み出した犯人は、まだ生きており、恐らくこの近くに潜んでいる可能性が高いということも、ユノースは、十分に理解していた。


 同時に、ユノースは、ここが非常に強い血の匂いを発していることに気が付く。

 だが、そのまま一つの疑問が思い浮かぶ。

 ある程度強い血の匂いを発している以上、ここに入る前にユノースが気づくことは、十分に可能である。

 だが今回ユノースは、この隠れ家に入るまで、その血の匂いに気が付くことができなかった。


 何らかの魔術による認識阻害。

 そのことに気が付いた瞬間、ユノースの視線の端で動くものが目にはいった。


 慌ててユノースが刀を構える。

 それと同時に、ユノースが構えた刀に二対の短刀がぶつけられる。


 「敵か?!」

 慌てて、短刀が投げられた方へ視線を向けると、そこには、黒衣をまとまったアサシンが立っている。

 そのことをユノースが認識するかしないかの内に、アサシンは一気に距離を詰めてくる。


 「くそが!」

 状況を把握しきれぬまま、ユノースは、迎撃の構えをとる。

 いずれにせよ、この状況について、目の前のアサシンが何らかの事情を知っているのは明らかである。

 現状の把握のためには、一戦を交えることが手っ取り早い。


 そしてユノースは、相手の動きに合わせて素早く刀を振り払う。

 その一閃された刀は、アサシンの胴を薙ぎ払う。


 だが、その刀で切られたはずのアサシンは、そのまま黒煙となる。

 相手の次の一手に備え、その黒煙から距離を取ったユノースの目の前で、黒煙は、再度集まり、アサシンを形どる。


 「魔力の塊か何かか?めんどくさい。」

 そうぼやくユノースに対し、アサシンは、何事もなかったように再度短刀を構え、こちらに襲い掛かってくる。

 その動きを読み、軽く相手の攻撃を避けながら再度刀を振るう。

 刀の軌道に合わせ、今度は、アサシンの首が飛ぶ。


 しかしその首は、再度黒煙となると同時に、そのままアサシンの胴に向かい、改めて首を形どる。


 「もう落ちてろ!」

 だが、ユノースは、その再生にあわせて一気に刀を振るう。

 今度の刀は、一気にアサシンの頭上から、身体を真っ二つに切り断つ。


 真っ二つになったアサシンの身体は、再度、黒煙になり、再生をしようとするが、そのまま黒煙は一気にまとまることなく、霧散した。


 「中身は空か。」

 霧散していくアサシンを見ながら、ユノースは一人ぼやく。


 光の魔力、解呪の術が込められた単純な一刀だが、どうやらこれが正解だったようである。

 解呪によって身体を維持できなくなったのであろう。

 もはやそこに居たかも疑わしいレベルで、残滓も残さずに消え去ったアサシンがいた場所を見ながら、ユノースは、一息を付く。


 だが、このままゆっくりとしている時間はなかった。

 自身の主であるヴルカルの安否は、まだ確認できていないのである。

 急ぎ、主を見つけて合流する必要があった。


 しかしユノースが立ち上がり、一歩先に向かおうとした瞬間、脇腹に一瞬熱が、そして遅れて痛みが襲い掛かってきた。


 「きひひひ。どちらに行かれるので?」

 耳障りの笑い声と共に、痛みの根源を確かめると、脇腹を刀が貫通をしている。

 そのまま後ろに目をやったユノースが見たのは、今しがた消滅をさせたアサシンが刀をこちらに突き刺しながら、フードに隠れた黒い穴の中から見える、赤く光った目でこちらを見ていた。

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