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【完結】魔術師は嘲笑の中を足掻き続ける ~嫌われ魔術師は、策謀と陰謀が渦巻く王国で、その嫉妬と羨望、そしてその力を聖女暗殺に利用されるが、それを受け入れ自身も利用することにした~  作者: 成吉灯篭
第一章 魔術師は嘲笑の中足掻き続ける

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第四十章「再起を図る」

 第四十章「再起を図る」


 「追手はいないか。」

 月明りも碌にない、暗闇の中、セレトは森の中をかけながら一人呟く。


 ハイルソン達の戦い、そして自身に襲い掛かってきた王国の兵士たちを倒しきってから、セレトはひたすらに逃げの一手を取った。

 最も、その行く先も決まってはいない状況であったが。


 既に本国では、自身は、罪人として扱われているであろう。

 そうでなければ、王国の兵士達に追われることもないであろうし、そもそも、リリアーナを始末できず逃がしてしまった時点で、自身の失脚は、既に決まっていたのであろう。

 最も、追手の兵士達を殺した時点で、その立ち位置は、既に取り返しのつかないところに落ちたと考えるべきだろう。

 行き場を失ったことによる喪失感、だが、動き続けなければ、不安と恐怖に押しつぶされそうな状況で、セレトは、ただただ進み続ける。


 自身をこのような状況に追い込んだ者達への復讐を誓いながらも、既に自身が陥ってしまった状況に戸惑い続ける。

 そのような状況でありながらも、自身の今後の身の振り方を考えながら、このような立場の魔術師を受け入れてくれる先を考える。

 そして、こんな自分の力になってくれる人物たちを思い浮かべる。


 暴走を続ける魔力を身体の内に抑えながら、同時に時折襲い掛かる鈍痛に愚痴をこぼしながらも、おぼろげな目的、この場から生き残るための方法を模索しながら、セレトは、ひたすらに人目を避けられる場所へと向かい続ける。

 「なぜ、こうなったことやら。」

 何度目かわからないため息と共に、セレトは愚痴も吐き出す。


 現在セレトが目指しているのは、ボルスン砦、ハイルフォード王国の勢力下であり、自身の信頼できる部下達が在留している拠点であった。

 アリアナ、グロックといった、自身の部下達の顔を思い浮かべながら、セレトは、足を速める。

 自身の叛逆がばれた今、砦にいる部下達も何らかの束縛を受けている可能性は高いであろう。


 反逆者の部下という存在を見逃すほど、王国もリリアーナも甘くはないことを、セレトは重々承知をしていた。

 だが、今のセレトがこの状況を打開するためには、あるいは、ここから逃げ切り再起するとしても、そのような状況にある部下達の力は必須であった。


 そのように考え事をしているうちに、セレトは、ボルスン砦にたどり着く。

 セレトの存在は警戒をされていないのか、それともセレトの反逆が伝わっていないのかは不明であったが、特段、砦の様子に変化はなさそうではあった。


 魔力の反応を見るに、恐らくアリアナは、砦の中にいるのは確かのようであった。

 このまま一気に砦に押し入り、部下達を回収するか。

 そう考えながら、セレトは、一度深呼吸をし、気持ちを落ち着ける。


 いくら自身の力があろうが、砦の中にいる鍛えられた兵士達に囲まれれば、所詮魔術師である自身等、あっという間に取り押さえられることであろう。

 溢れ出る魔力が与えてくれる万能感を落ち着けながら、セレトは、再度、作戦を立て直す。

 いずれにせよ、時間の経過は、自身の立場を悪くしていくだけであろう。

 あまり考える時間は、なかった。


 「影よ。」

 ぼそりと呟き、セレトは、魔力の影を身にまとう。

 日が傾き、徐々に暗闇が満ちてきた中、自身の身を暗闇に隠す。


 「ここいらなら大丈夫か。」

 そのまま砦の周囲で人の気配が少ない場所に移動をすると、セレトは、砦の壁に魔力を込める。


 ガラン。

 少し乾いた音と共に、砦の壁に、拳大の大きさの穴が開く。


 大した音は出ず、変わらず人の気配はなかったが、念のためにしばらく周囲の様子を伺う。

 それから5分ほど待ったが、特段、人の動きがないことを確認すると、セレトは、自身の身を黒い霧に変え、そのまま自身が開けた穴から砦の中に忍び込んだ。


 忍び込んだ先は、武器庫。

 周囲に人の気配がないことを確認しながら、セレトは行動を開始することにした。


 自身も部下で、唯一魔力の繋がりがあるアリアナの位置を確認しながら、セレトは、その場所に向かう。

 途中、兵士達と遭遇しそうになるが、その都度、自身の魔術で暗闇にその身を隠しながら、うまくやり過ごす。

 下手に兵士と交戦した結果、その戦いに勝ったとしても、そこから砦中に異変を知らしめるリスクがある以上、無用な争いは避けるべきであった。


 近づくにつれ強くなる魔力の繋がりよると、アリアナは、地下の牢屋に閉じ込められているようであった。

 恐らく、アリアナ以外の部下達、グロックを筆頭する兵士達も近くに閉じ込められている可能性が高いであろう。


 彼らを見張る兵士の数と、その兵士達を倒した後の対応、追手のこと、逃走経路、様々な要素を考えながら、セレトは、階段を下っていく。

 幸いにも、砦内の兵士達には、気づかれずにここまで来ることはできた。

 未だ、セレトの侵入がばれていないのであれば、ここから逃げ出すこと自体は、そう難しいことのように思えなかった。


 予想に反し、地下牢には、見張りの兵士らしい存在は見られなかった。

 一瞬、罠を警戒したセレトであるが、周囲の様子を探っても、兵士らしい存在はいないようであった。

 だが、奥の牢には、アリアナの気配が、そして周囲の様子を見るに、グロック達も、その近くにいるようであった。


 どちらにせよ、彼らを急ぎ助けだし、一気にこの場から逃げるしかないであろう。

 そう考えたセレトは、アリアナの牢に向かって進む。


 「アリアナ。大丈夫か?」

 牢の中に声をかける。


 「セ、レト様?」

 苦しそうな声で、アリアナの声が聞こえる。


 檻の中のアリアナは、手錠、恐らく魔力を封じる枷で身体の動きを封じられ、芋虫のように横たわっていた。

 こんな状態の彼女をこのまま、ここから連れ出せるだろうか。

 一瞬、セレトは、逡巡するが、すぐに彼女を助け出すべき動きだす。

 いずれにせよ、ここまで来た以上、もう後には引けなかった。


 檻に魔力を込め、その金属を腐食させる。

 そうして、アリアナを助けだせるように穴をあけると、セレトは、牢の中に入り込む。


 「なぜ、ここ、に?」

 薬でも飲まされたのか、アリアナは、焦点の合わない目でこちらを見つめながら、途切れ途切れ言葉を放つ。

 その言葉を無視して、セレトは、彼女の動きを封じている枷を魔力を込めて破壊する。


 だが、アリアナは、立つこともままならない状況である。

 ここからどう逃げるべきかと、セレトは、考える。


 「おや、大将、どうしてこちらに?」

 そんなセレトの考えを遮るように、愉快そうなだみ声が聞こえる。


 「お前らを助けに来てやったんだよ。少しは感謝しろ。」

 そんなグロックに対し、セレトは、言葉を返す。


 アリアナに気を取られて気が付かなかったが、隣の牢には、グロックとその部下達が捕まっているようであった。

 セレトは、アリアナを肩に担ぎながら、グロックがとらわれている牢に移動する。


 「おやおや。現状はご理解しているんですか?」

 グロックは、アリアナの様子を見ながら、笑いながら問いかける。


 「大体はな。お前もついてこい。」

 そんなグロックに対し、セレトは、笑みを返しながら、彼が囚われている牢に手をかける。


 牢の中を見るに、グロックと数名の部下がこの中にいるようであった。

 アリアナと、グロック。

 この二人が手元に揃えば、現状の打開ぐらいはなんとかできるであろう。


 「ははは。相変わらず勝手に決めなさる。」

 最もグロックは、そんなセレトの心を知ってか知らずか、笑みを浮かべながら、牢に魔力を込める、セレトに近づいてくる。


 「とりあえずここを出るぞ。」

 セレトは、そんなグロックに指示を出しながら、込める魔力をより強める。

 砦内では、まだ騒ぎにはなっていないようであったが、ここに長居をして、結果、砦内の全兵士と戦うということだけは避けたかった。


 「いやいや。それは、すいませんな。」

 そう話しながら、牢が開き次第にすぐに出るためか、グロックは、こちらに近づいてきた。

 セレトは、その様子を見ながら、このまま牢が開き次第すぐに逃げるべく、逃走経路を考え始めた。


 「いけません。」

 だが、そんなセレトの考察は、急に発せられたアリアナの声で中断をされる。


 「ちっ!」

 同時に舌打ちの音が響くとともに、自身の脇腹に熱が、そしてそのまま間髪をおかずに痛みが発生をした。


 状況を理解しきれないセレトの目には、牢の中のグロックが、隠し持っていた短刀を、深々とセレトの腹に刺しているのが目に入った。


 自身がこれまで考えていた作戦、今後の身の振り方、ここから先の逃げ場所。

 これらの事が全て、頭の中から流れていくのを感じながら、セレトは、その刃物から逃れようと動き始めた。


 第四十一章へ続く

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