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【完結】魔術師は嘲笑の中を足掻き続ける ~嫌われ魔術師は、策謀と陰謀が渦巻く王国で、その嫉妬と羨望、そしてその力を聖女暗殺に利用されるが、それを受け入れ自身も利用することにした~  作者: 成吉灯篭
第一章 魔術師は嘲笑の中足掻き続ける

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第三十四章「愉悦と嘲り」

 第三十四章「愉悦と嘲り」


 「終わらせよう。」

 そうつぶやいたセレトは、自身の魔力を展開する。


 そのあふれ出す魔力に合わせ、ミニオンが展開される。

 最もミニオンは、囮である。


 所詮魔力の塊に過ぎないその存在は、リリアーナ程の使い手にかかっては、赤子の手をひねるように始末をされていく。

 だが、そうであってもセレトは、自身の作戦のため、ミニオンを展開していく。


 「哀れね。」

 そんなセレトを見ながら、リリアーナは呟く。

 セレトが展開したミニオンの攻撃を捌きながらも、セレトを刺すように強い視線をぶつけてくる。


 その視線を受け流しながら、セレトは、次の一手を考える。

 展開したミニオンは、あっけなく処理をされているが、それも計算の内である。

 本命は、リリアーナの隙をついての一撃。

 自身の長剣に魔力を込めながら、セレトは、リリアーナの動きを伺う。


 「何を考えているか知らないけど、今なら手を引くこともできるわよ。」

 そんなセレトの様子を伺いながら、リリアーナは、セレトに言葉をかけてくる。

 そして言葉を発するついでに、無駄のない動作で、襲い掛かるミニオン二体を叩き伏せる。


 その隙の無い動作と、聖女らしい輝きを見せる彼女に、一瞬目を奪われながらも、セレトは、自身の体制を整える。


 「何。聖女様がいなくなるだけで、十分な話なんだよ。」

 リリアーナに強い視線を向けながら、セレトは武器を構えて答える。


 展開したミニオンでは、所詮、足止めにしかならない相手である。

 だがセレトは、ミニオンを楽に処理をしていく聖女を目の当たりにしながらも、次々とミニオンを展開してく。


 「この程度の力で私を止めるつもり?思い上がりはやめてほしいわね!」

 そんな状況に、嫌気がさしたのか、リリアーナは一際力強い声をあげながら、魔力を展開しながら剣を一閃、振り払う。

 その剣の軌道に合わせて、光の矢が乱れ撃ちをされる。

 正に、聖女の名にふさわしい美しい光をまとった弓矢の波は、彼女の周囲に展開されたミニオン達を次々と撃ち抜いてく。


 だが、闇の魔力で展開されたミニオンにとって天敵とも言える光の雨が、自分の部下たちを次々と消滅をさせていく様を見ながら、セレトは不敵な笑みを浮かべる。

 時折ミニオンの群れを抜けて自身に向かってくる光の矢をよけながら、セレトは次なる一手を展開する。


 「無駄ね!」

 だが、そんなセレトの動きを読んでいたのだろう。

 リリアーナは、一斉に突撃をしてきたミニオンの裏から飛び上がったセレトに向けて、光の刃を投げつける。

 投げられた魔力の刃は、飛び上がった影を的確に貫く。


 と、同時に貫かれた影が霧散する。


 自身が撃ちぬいた相手が、囮であることに気が付いたリリアーナの表情が驚愕に染まる。


 ずぶり。

 同時に、肉を割く音と共にリリアーナの脇腹から、黒い刃が生える。


 その痛みを自覚する前に、驚いたリリアーナが後ろ見ると、魔力がこめられ刀身が黒くなった剣を構えたセレトが、悪魔ような笑みを浮かべていた。


 「これで終わりだな。」

 剣を握る手に力を籠め、セレトは笑いながらリリアーナの腹を切り裂こうとする。

 このまま、少し力を籠めるだけで、聖女に致命傷を負わせることができるだろう。


 「ふざけないで!」

 だが、そんなセレトに対し、リリアーナは、力強い声で言葉を放つとともに、身体を仰け反らせながら、セレトを蹴り飛ばす。


 もちろん、無理な体制で動かされた彼女の身体は、セレトが突き刺した刀にによって傷が広げられることとなった。

 だが、それでも彼女は、身体を止めず、セレトを思いきり蹴飛ばした。


 「やるじゃないか。」

 リリアーナに蹴飛ばされたセレトは、武器を構えなおしながら、そう声をかける。

 そんなセレトに言葉を返さず、リリアーナは肩で息をしながら、こちらを睨みつける。


 「どうする?降伏するかい?」

 周囲に展開したミニオンは、ほとんど倒されてしまったが、リリアーナの傷を見たセレトは、勝利を確信しながら笑みを浮かべながら言葉を続ける。



 「この程度の傷で私を倒したつもり?ふざけたことを言わないでほしいわね。」

 そんなセレトを一際強く睨みながらリリアーナは、吐き捨てるように言葉を返す。


 「そうかい。なら終わりにしよう。」

 セレトは、ここから先のことを考えながら笑みを浮かべ、魔力を持ってミニオン達に指示を出す。

 指示を受けたミニオン達は、セレトの命に従い、一斉にリリアーナにとびかかる。


 「雑兵如き、ぶつけられたところで!」

 そんなセレトの攻め手を軽蔑するように言葉を吐き捨て、リリアーナは、一気に魔力を放つ。

 放たれた魔力は、改めて光の矢となり、周囲に展開されたミニオン達に一斉に向かっていく。

 その光の魔力がこめられた攻撃は、セレトが展開したミニオン等、ひとたまりもなく打ち倒されることであろう。


 「だからそれが無駄なんだよ!」

 だがセレトは、そんなリリアーナの必死な抵抗を嘲笑いながら、再度ミニオン達に魔力を与える。


 「ぐえがえがえうえええ!」

 瞬間、セレトの魔力がこめられたミニオン達は、不気味な叫び声をあげながら、その身体を膨らませる。


 ボン。

 そのままミニオン達は、爆音を立てて黒い霧を周囲にまき散らす。

 そして、そんな黒い霧の中を対象を見失った光の矢は、四方八方に飛び散っていく。


 「何を?!」

 突然のことに混乱したリリアーナが驚きの声を上げる。

 同時にその一瞬で、リリアーナは、セレトの姿を見失う。


 「っ?何処に?!」

 リリアーナは、焦ったような表情で言葉を吐き出す。


 そんなリリアーナの様子を見ながら、セレトは笑みを浮かべる。

 全ての準備は整った。


 「終わりだね。」

 その言葉とともに、セレトが魔力を籠める。


 瞬間、リリアーナの右腕が、彼女自身の身体の内から現れた黒い刃に切り裂かれる。


 「何?!」

 そこまで深い傷ではないものの、突然に自身の身体に起きた異変にリリアーナは驚きを見せる。


 「もう君は終わりだよ。」

 セレトは、魔力を籠めながら、そんなリリアーナにさらなる追撃を放つ。


 瞬間、リリアーナの左足と、右の脇腹が、黒い槍で貫かれる。


 「きゃあ!」

 一息おいて、リリアーナの叫び声が聞こえる。


 「さてさて。どうするかね?聖女様。」

 今や自分を完全に見失ったリリアーナを、あざ笑うような態度で、セレトは嘲りの言葉をかける。


 セレトがミニオンを利用して展開した結界は、今や彼の姿を聖女の目から闇の中に隠していた。

 最も、その程度魔力による結界は、常時の聖女相手には、ろくに機能もせずに簡単に解除をされていたであろう。

 だが、現在セレトが現在リリアーナにかけている呪術。

 リリアーナの脇腹をさした時に埋め込んだ呪術、セレトの魔力に反応し、闇の武器を生み出させる呪い。

 この呪いによって、リリアーナの行動は、制限されているのであった。


 「卑怯ね。そして何より哀れね。」

 そんなセレトにリリアーナは、荒い息を吐きながら、言葉を発する。


 「そうかね?」

 その言葉に反応するように、リリアーナの右肩を黒いナイフが切り裂く。


 「そうね。姿を隠しながら、こそこそと攻撃を続けるだけ。哀れよ。」

 リリアーナは、そんなセレトを蔑むような口調で言葉を続ける。


 だがセレトは、その言葉を心地よく聞き流す。

 何を言おうが、もはやリリアーナは、セレトの手中に落ちたのである。

 彼女の身体に刻まれた刻印を利用しながら、このまま彼女を殺すことは十分に可能であった。


 最も、この呪術とて万能ではない。

 相手の魔力が強大な場合、即死させるような傷を負わせようにも、その魔力に抵抗をされてしまうのである。

 そのため、セレトは、現状リリアーナを仕留めきれずに、手傷を負わし続けているのであった。


 だが、それでもいい。

 そうセレトは、感じながら、傷を負い、倒れているリリアーナを見て笑みを浮かべる。


 これまで、自身に様々な苦汁を飲ませてきた聖女。

 その高慢で、苦々しい思いがある女が、今自分に逆らうこともできず苦しんでいる。

 その苦しみを、可能な限り長く続けてやりたい。


 そう考えたセレトは、再度魔力を籠めて、リリアーナへの呪いを発動させる。


 おそらくしばらくは、彼女に手傷を負わし続けるだけであろう。

 だが、そのうち、聖女の魔力が切れたその瞬間、この呪術は、彼女に致命傷を与えることとなるであろう。


 そのタイミングを待ち望みながら、セレトは、自身の魔力を放つのであった。


 第三十五章へ続く

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