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【完結】魔術師は嘲笑の中を足掻き続ける ~嫌われ魔術師は、策謀と陰謀が渦巻く王国で、その嫉妬と羨望、そしてその力を聖女暗殺に利用されるが、それを受け入れ自身も利用することにした~  作者: 成吉灯篭
第二部 聖女は泥の中を藻掻き続ける

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幕間2-45

 幕間2-45


「これは、一体何なんでしょうか?」

 調査隊の一人が、発見したそれは、この場にあることが明らかにおかしく、歪な物であった。

 そこにあったのは、大量の血と黒い煤。

 それと多種多様な宝石が散らばっていた。


 物取りか何かの犯行にしては、遺留品が多く、戦いの跡も見られない。

 だが、明らかに致死量ともいえる出血の跡と、風に吹かれたであろうにも関わらず、まだ地面にこびり付いたように残っている黒い煤は、明らかに異様な物であった。


「おい。どうした」

 この調査隊にとって幸運であったのは、現在のハイルフォード王国内で、それなりに影響力を持っているクルスが、この部隊を率いていたことであろう。

 復興を進めるハイルフォード王国内で、身内であるセレトの失態こそあれど、積極的に王国のために尽力するクルスは、それなりの地位を得ており、少なくてもこのような状況において、適切な判断を下せる立場にいるはずであった。


「クルス隊長。見てください、これを」

 クルスに声を掛けられた兵士は、安堵の色を浮かべながら、彼を現場に案内をする。

 少なくてもこれで、この問題に対する責任は、クルスに任せることができる。

 自分は、彼の指示通りに動けばいい。


「くそ!あいつめやりやがったか!」

 だが、そんな一介の兵士の安堵は、現場を見たクルスの怒りの声でかき消された。


「あっ、あのどうしますか?」

 急に声を荒げた上席に、恐る恐る言葉をかける。

 この状況下で、他に選択肢があるわけではない。


 だがクルスは、そんな言葉を無視して、一人、地面に散らばっている痕跡を調べながら、難しそうに声を上げる。

 地面に散らばっている痕跡からは、クルスがよく知っている魔力の残滓が残っていた。

 同時に、確信を持てなかったが、恐らくセレトによってこの場で行われたであろう儀式の正体にも見当をつける。


「気狂いが。我ら一族の誇りをどこまでも穢しおって」

 怒りは、言葉に変わり、外に吐き出される。

 最も、今更こちらが動いたところで、セレトがこの場で行った儀式を止めることは出来ないであろう。

 儀式は既になされている。

 自分が鑑賞できること等、限られているであろう。


「くくく。気の毒に。一族の恥晒にいつまでも悩まされるとは」

 どこからともなく聞こえてくる声。

 それが、クルスに更なる苛立ちを与える。


「くそ。ユラか!残滓に過ぎないお前が、今更干渉をしてくるな!」

 怒りの声を上げるが、その声をかける相手にはどこにも見えず、彼の声は、空しく空に響く。


「ひひひひ。まあ私は、もうすでに盤面にほとんど影響を与えられないですからね。せいぜい盤外からこの物語の生末を見学するとしますよ。くくくく」

 ユラの笑い声が響く。


「失せろ!」

 クルスは空に向かって強く怒鳴る。


「あの、隊長、どうしましたか?」

 急に、何かに怒鳴りだしたクルスを心配してだろう。

 部下達は、クルスを遠巻きに見ながら、心配したかのように声をかけてくる。


「何でもない。すぐに王都に戻るぞ」

 その声で我に返ったように、儀式の跡には目もくれず、クルスは急ぎ撤収の準備を始める。


 恐らく、もう手遅れだろう。

 だが、自身の予想があっているのであれば、セレトは王都に居るはずであった。

 なら、そこに向かうのが、今自分にできる最適解であった。



「あぁ。なるほど。この感覚か」

 闇の中、セレトは、自身の身体にまとわりつく感覚に身を任せる。

 儀式は成功。

 なら、後はどうなるか。

 少なくても、あの聖女を苦しめることは十分にできるだろう。


 そして、呪術師は、自身の計画の成功を確信して眠りについた。

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