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【完結】魔術師は嘲笑の中を足掻き続ける ~嫌われ魔術師は、策謀と陰謀が渦巻く王国で、その嫉妬と羨望、そしてその力を聖女暗殺に利用されるが、それを受け入れ自身も利用することにした~  作者: 成吉灯篭
第二部 聖女は泥の中を藻掻き続ける

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第四十三章「執念と意地」

 第四十三章「執念と意地」


「グオオオオオ!」

 首を貫かれたセレトが叫び暴れ出す。


「きひひひ。愚かな愚かな残りカスが!哀れなまま朽ちるがいい!」

 笑いながらユラは、セレトの攻撃を避けながら姿を晦まそうとする。


「逃さない!」

 だが、姿を消そうとするユラに向けて、リリアーナは咄嗟に光の矢を放った。


「くくくく」

 笑いながら、ユラはカーテンに包まれ姿を消し、リリアーナの攻撃は空を切る。


「ガアア!」

 だがセレトが口から黒煙のブレスをユラが消えた場所から離れた別の一点に向けて放つ。


「?!くそ、勘がいいですねぇ!」

 するとブレスの着弾点から逃れるように、ユラが飛び出してきた。


 見るとユラの身体の傷口からは、黒い霧のようなものが漏れている。


 負傷。

 少なくてもセレトの攻撃は、彼女に届き、何らかのダメージを与えている。

 今なら、彼女を打ち倒せる。

 ユラを倒し、この結界が解かれれば、残るは知性を失った怪物が一匹。

 そうなれば、、ここを離れて体制を立て直すことも十分に可能であろう。


「私を、ワタしを、舐めるなぁ!」

 ユラの絶叫が響く。

 同時に、周囲に大量の氷塊が展開され、一斉にセレトに襲い掛かる。


「グオわああああ!」

 セレトの身体に刺さった氷塊は黒い炎を放ちだし、その炎に呼応するように怪物の叫び声が響く。


「きひ、キヒヒひひひ」

 ユラの正気を失ったような笑い声が響き、同時にセレトの足元が黒い氷によって固められていく。

 一撃、一撃は致命傷足りえないが、ユラの攻撃は確実にセレトを追い詰めていく。


「全てご破算。この国はもう終わり。あぁまたやりなおしとは、腹立たしい」

 怒りの声を上げながら、ユラはセレトを追い詰めていく。

 セレトは暴れまわり、足の拘束を解き、ユラを捕えようとするが、彼女はうまくその一撃をすり抜け、確実な一撃を加え続けていく。

 だが、セレトを屠るには、まだまだ時間が掛かるようにも見えた。


「我こそは!」

 その瞬間、一つの戸が開き、声が室内に響いた。


 ヴェルナード。

 何故ここに?


「グオオオオオオオオ!」

 だが、リリアーナがその疑問を口に出す前に、セレトが振るった尾が、ヴェルナードとその部下達をあっけなくミンチに変える。


「ちぃ愚か者たちが!」

 ユラの怒りの声が響き、同時に部屋を覆っていた魔力の結界が消えていくのが感覚で分かる。

 内側からは、絶対的な硬度を誇る結界も、外からの干渉により、あっけなくその力を失っていく。


 この空間は、隔離された異界ではなくなった。

 こうなればこの場から離れることは難しくはない。


 このまま隙を見て、この場から逃げるかどうするか。

 リリアーナは一考をし、そのまま刀を構える。


 今、ここから逃げて体制を立て直すよりも、これが、ここでこの二人を打ち倒すチャンスと考えるべき。

 彼女が出した結論は、戦闘継続。


 セレトはユラを捕えられず、彼女の攻撃により負傷を増やしている。

 ユラは、セレトの攻撃をかわしながら、彼に確実に攻撃を加えているが、それは致命傷にならず、セレトの攻撃を受けたのか、傷を徐々に増やしている。


 二人とも確実に弱っている。

 一瞬の隙をつけば、二人とも始末をすることができる。


 ユラは、頭に血が上っているのか、こちらにはほとんど注意を向けていない。

 セレトは、龍と化したが故か、本能のまま暴れているだけのように見える。


 タイミングを合わせれば二人とも始末をできるはず。


「きひ!この一撃はどうかしら!」

 ユラは、セレトに手のひらを向ける。

 その腕から、魔力の波動が放たれる。


「ぐおおおおおおおおおお!」

 瞬間、セレトの全身の内側から氷柱が大量に生え、叫び声が響き渡る。

 セレトの魔力に干渉し、内側から力を暴走させて倒すための一撃。

 その一発が、これまで致命傷を与えられていない彼に、致命的な一撃を与える。


「ひひ。馬鹿なトカゲ風情が!」

 そしてユラは、止めをさすために、異空間から大鎌を取り出す。

 彼の首を刎ねるため、そのままセレトに斬撃を放つ。


 ザシュり。

 そしてその一撃が、セレトの龍の首を刎ねた瞬間、リリアーナは、光の剣でユラの首を刎ねた。


「きひ?!あぁ狙われてい、たの」

 消え入りそうなユラの声が響く。

 同時に、セレトの龍の首が宙を舞う。


 倒れこむ巨龍の身体。

 黒い砂屑となり中に消えていくユラの身体。

 ヴェルナード達の死体。


 これらを視線に収めながら、リリアーナは、戦いの終わりを感じた、はずであった。


「くく!油断したなぁ!」

 喜色を含んだセレトの声。

 同時に、リリアーナの脇腹を龍の尾が貫いた。


「えっ?」

 混乱するリリアーナの目の前には、宙を舞う龍の首。

 だが、先程倒されたと思った龍の身体に視線を向けると、そこには、多数のセレトの顔面が浮かんだ、肉の塊が鎮座していた。


「身体の内面に封じられた獣を表に出す。それだけの術式と思ったか?愚か者が!」

 肉塊に浮かんだ多数のセレトの顔面は、多種多様な表情を見せながらも一様に笑いだす。


「この身体、元々持っていたこの身一つ、貴様を殺すために使うのは、それ一つ。それが、俺のルール。だから、こうした。全てを超越し、意地汚く生き延びようとも、お前を殺せるなら、どんな禁術だろうと…」

 そう言いながら、肉塊は、崩れそうな肉の塊を強引に人の腕のように形どり、地面に落ちているユラの大鎌を拾い上げる。


「さて。これで終わらせようか」

 刃が振り下ろされ、リリアーナは激痛を感じたが、出そうとした悲鳴は口から出ることもなく、彼女の意識を暗闇に落としていった。 


 第四十四章に続く

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