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【完結】魔術師は嘲笑の中を足掻き続ける ~嫌われ魔術師は、策謀と陰謀が渦巻く王国で、その嫉妬と羨望、そしてその力を聖女暗殺に利用されるが、それを受け入れ自身も利用することにした~  作者: 成吉灯篭
第二部 聖女は泥の中を藻掻き続ける

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幕間2-41

 幕間2-41


「こちらです!」

 部下の誘導に従い、ロットは戦場を走る。


「これは、ひどいな」

 そして目的地に着いたロットが見たのは、敵味方を問わずに並べられた大量の死体の山であった。


「ここと同じように第一、第三、第四、第五、第七部隊が既に壊滅をしております。信じられません…」

 ロットを案内した兵士が信じられない物を見たかのように動揺しながら被害を報告する。


「下手人は?」

 あまり正確な答えを期待せずにロットは応える。


「はあ、生き残った者が言うには、ヴェルナード卿が率いる一団とは聞いておりますが…」

 だからこそ、部下から生き残りによる証言の報告には驚いたし、その内容には、さらに驚愕はしていた。


「ヴェルナード?奴がなぜ?」

 ただ、敵の魔物も含めて倒されているこの現状を見るに、第三勢力によるものであろうと考えていただけに、その犯人が味方であるはずのヴェルナードによるものであると分かった瞬間、ロットの混乱はより増し、次の瞬間、敵地での味方の裏切りという事態による現状への不安が彼の心を一気に支配することとなった。


「奴は、今どこだ?」

 部下達を動揺させないため、不安を押し殺しながらロットは部下に問いかける。


「不明です。ただ、王都の外には出ていないかと」

 部下の報告は、混乱しているロットの思考を徐々にクリアにしていく。


 今、王都の周辺はこちらが展開した部隊が包囲をしている。

 少なくてもヴェルナードとその部下達程度の戦力で突破できるような状況ではない。


「王城か」

 そうなると、彼らが向かう先は自然と想像がついた。

 そして、その場所にいるのは、我らが主、リリアーナである。


「下剋上か」

 そう呟き、ロットは深く溜息をついた。


 元々敵同士、それが共通の敵が現れたことで、一時的に手を結んだだけ。

 そのことは理解していたが、少なくても、この戦いが終わるまで、この繋がりが切れるとは思っていなかっただけに、ヴェルナード達の行動は、ロットの思考をひどくかき乱した。


 王城に向かうべきかと一瞬考え、その考えを否定するように首を振る。


 自分の主は、この程度のことは予測済みだろう。

 いや、むしろ中途半端な援護は、足手纏いにしかならない。


「全部隊に伝令を出せ。王城回りを囲むように部隊配置!複数部隊を合流させろ!敵との戦闘は最低限で構わん!まずは守りを優先しろ!」

 結論、自分は、出来る範囲の事をやるべき。

 既に制圧が済んでいる王城回りのエリアの守りを固め、ヴェルナード達が逃げられないような包囲網を展開する。


 この戦いの勝利条件は、敵の幹部達を抑えることである。

 その幹部達が逃げられないようにすることが、自身の任務でありやるべきこと。


 視界の奥に見える王城からは、時折激しい戦いの余波ともいえる魔力の波動を感じる。

 だが、ロットは、自身の主の勝利を確信していた。


 常人では至ることができない境地に達し、聖女とし多くの人々の期待をその身に受けた天才。

 そんな彼女を倒すことができる存在等、存在するわけはない。


 いくらヴェルナードが優秀な将であり、武に優れた戦士であろうとも、リリアーナには勝てないであろう。

 いや、嘗ての王国にも、周辺諸国にも彼女に勝てる存在はいなかった。

 そして、今そんな彼女と共に居るのは、この国でも指折りの強者で構成された親衛隊である。

 彼女達より強い存在は、今この地に居ない。


 そう考え、自身の心を落ち着かせていたロットであったが、この戦いの結末を知っていれば、いや、今のリリアーナの状況を理解していれば、このような判断はしなかったであろう。

 そして、この場でリリアーナを信じるという判断を取ったことを、ロットは、後々深く後悔するのであった。

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