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【完結】魔術師は嘲笑の中を足掻き続ける ~嫌われ魔術師は、策謀と陰謀が渦巻く王国で、その嫉妬と羨望、そしてその力を聖女暗殺に利用されるが、それを受け入れ自身も利用することにした~  作者: 成吉灯篭
第二部 聖女は泥の中を藻掻き続ける

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幕間2-40

 幕間2-40


「戦況はどうだ?」

 面白そうに笑みを浮かべながら、ヴェルナードは伝令に訪れた兵士に問いかける。

 周囲には多くの異形の遺体が転がっており、ヴェルナードが率いる部隊の強さを静かに証明をしていた。


「ほとんどのエリアは制圧済みです。敵勢力も多少残っておりますが、制圧も時間の問題かと」

 そう言いながら、伝令の兵士は周囲の様子を見渡す。


 こちらの倍ともいえる異形の大軍は、既に全滅している一方、ヴェルナード側の犠牲はそう多くはない。

 嘗て、クラルス王国で将として戦果を挙げた力は、未だ衰えてはいないようであった。


「そうか。順調か」

 ヴェルナードはつまらなそうに伝令の言葉に応え、深く溜息をつく。


 自分達の国を蹂躙し、かつての敵と手を組むという屈辱を与えてきたはずの敵。

 だが、その敵が、あまりにあっけなく滅びていく様を見、ヴェルナードはどこか虚しさを感じていた。


 これで他戦線で苦戦という報告があれば、まだ暴れることもできるし、自身の強さの証明にもなり、多少の溜飲は下がったであろう。

 だが、結果は順調。

 様々な国の寄せ集め部隊により、あっけなく制圧されていく程度の敵の手によって、自身の祖国は滅ぼされたのかという思いは、徐々に彼の笑みを奪っていくこととなった。


 勿論、今はあの頃と状況が違う。

 クラルス王国内に、この異形の怪物が現れた時は、急に多くの国民が怪物へと変わり襲い掛かってくるという奇襲により、満足な対応ができなかった一方、今回は敵の本陣に、こちらから万全の状態で攻め込んでいる。

 そして正面から戦った敵は、予想以上に弱かった。

 個々の力こそ、こちらの一兵士を凌駕しているものの、碌な連携も取れず、組織だったこちらの部隊によって確実に、戦力を削られ無力化をしていった。


 大した犠牲なく、この戦いを終えれた事は好ましい事ではあるが、自分達を苦しめた敵の弱さに、ヴェルナードは消しようがない苛立ちを与えていた。

 このまま戦いを終えた後はどうするべきか。

 少し気の早い戦後処理に頭を向けていたヴェルナードであったが、不意に伝令の口から述べられた言葉によって、その思考は遮られた。


「いえ、ですからまだ敵本陣は落ちていないようでして。敵首謀者の一人、セレトという呪術師が、まだ城内で抵抗を続けているようです」

 ヴェルナードの表情の変貌に、驚愕をしたのか、落ち着きを無くした様子で伝令が先程述べた言葉を再度口にだす。


「セレト、か」

 そんな伝令の様子を無視して、ヴェルナードは考え込むように言葉を吐き出す。

 クラルス王国崩壊の原因の一つであると共に、自分とも多少の因縁はあるはずの敵。

 これまでの経歴からも、目の前に転がっているような理性の無い獣を相手にするよりは、楽しめるかもしれない。


「一小隊でいい。俺についてこい」

 そう考えたヴェルナードの行動は早かった。


「ヴェルナード様。何をするつもりですか?」

 伝令が焦ったように、こちらに問いかけてくる。


「何。面白そうな獲物と戦いたいと思ってな」

 そう言いながら、残る部下に簡単な指令を与え、戦線の維持を命じる。


「いけません!勝手な行動は、軍機に反します!ここは、貴方が担当を」

 顔を真っ赤にして叫ぶ伝令であったが、その言葉は最後まで発することは出来なかった。

 ヴェルナードが部下から手渡された手斧でその首を叩き切ったからである。


「気の毒にな。こんなところで"戦死"とは」

 倒れ、物言わなくなった伝令の死体に向けてつまらなそうに呟くと、ヴェルナードは部隊を引き連れ動きだした。


 向かう先は敵の本陣とされる王城。

 少なくても、そこに居る敵であれば、戦い、倒すことで、虚しさではなく満足を感じることは出来るであろう。


 数は少ないが、それなりに腕の立つ少数精鋭の部下を連れ、ヴェルナードは、自身の戦場に向かっていった。

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