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【完結】魔術師は嘲笑の中を足掻き続ける ~嫌われ魔術師は、策謀と陰謀が渦巻く王国で、その嫉妬と羨望、そしてその力を聖女暗殺に利用されるが、それを受け入れ自身も利用することにした~  作者: 成吉灯篭
第二部 聖女は泥の中を藻掻き続ける

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第三十七章「言い訳」

 第三十七章「言い訳」


「ひどい荒れ具合…」

 嘗て、何度も歩き回った城内の荒れ具合を見て、リリアーナの口からはそのような言葉が漏れる。

 城本体に大きな破損はない物の、城内の贅沢な調度品は壊され床にばら撒かれており、所々、戦いの跡のなのか血液の染みのようなものが散らばっていた。

 そして何より城内には全く活気がなかった。


 兵士も、黒い翼を持つ化け物達も、そもそも自分達以外の生がある者の気配が全くしない場所。

 その静けさによる不気味さを、強引に頭から追い払いながら、リリアーナは城内の探索を続ける。


 ヴルカルは倒した。

 敵の中枢は屠った。

 敵の大義は崩れた。

 故に、敵の兵士こそまだ残れど、戦いは徐々に終息に向かうはずであった。


 だが今現在、外では変わらずに戦は続いているし、敵の兵士達の士気は崩れていない。

 まだ、この戦いの継続を望む者達がいる。

 その誰かを探すため、リリアーナは、城内の探索を続けていた。


「くそ。ヴルカルとセレトの野郎を片付ければ、この戦いは止まるんじゃないですかね?こんな場所を調べるぐらいなら、もっと他に兵を割くべきでは?」

 短慮な部下は、そうリリアーナに進言し、この城内探索に懐疑的な視線を向けていたが、リリアーナは、その声を封殺し、城内の探索を続けた。


 この戦いの黒幕は、ヴルカルではない。

 黒幕としては、あまりに無防備がすぎる。

 

 同時に、彼を利用していると思しきセレトではないであろう。

 セレトであれば、こんな単純な戦い方ではなく、もっと悪辣に、こんな場所に固執せずに戦いを仕掛けてくるはずであった。


 故にセレトは、この戦いにおいては、黒幕ではない。

 そして彼が一兵卒である以上、他の敵を狙うのは理にかなっているはずであった。


 いやそれだけではない。

 リリアーナは、セレトとの戦いをどこか避けていた。


 こちらに向けられた尽きることない憎悪。

 何度戦いを繰り返し、負け続けても消えない執着心。

 そして、戦いを繰り返しても底が見えてこない禍々しいどす黒い魔力。


 今はまだ彼女は負けていない。

 だが、それは『敗北』をしていないだけであり、『勝利』ではない。

 決してあの男を潰し、屈服させたものではない。


 倒しきろうと様々な手を使っているが、捕えたつもりでも、影のようにするりと抜けられて倒しきれず、結果、戦いはいつまでも続くこととなる。


 いつまでも諦めず、こちらを執拗に狙ってくる男。

 そしてその溢れてくる魔力と、彼の持つ力がこちらを上回った時、絶命をするのはリリアーナとなるであろう。


 そうなる前に、彼を潰す必要がある。

 そのことをよく理解しながらも、どこかセレトを避けようとする自分の心にリリアーナは鞭を打つ。


「リリアーナ様!城外の敵に変化が!」

 そして、そんな彼女の心の内に呼応するように、伝令の兵士が現れる。



「変化?何があったの?」

 将が落ち着きを失うと、部隊の統制が無くなる。

 そのことを思い出しながら、心を落ち着かせながら伝令の言葉に耳を向ける。


「はい。城外で暴れていた魔物達が、徐々に倒れて絶命をしています。何体か、まだ活動をしておりますが、大分大人しくなっており、向こうから危害も加えてきません」

 伝令は、淡々と戦況を伝える。


「あら?ならこの戦い、我々の勝利ということしから?」

 リリアーナは、伝令の言葉に少々驚きを見せながら聞き返す。


「はい。まだ抵抗を続ける勢力はありますが、大勢は決したものかと」

 その言葉に、伝令は喜色を交えた言葉を返す。


「そう」

 これで一つの戦いが終わったのだろうか。

 セレトとの決着はつかぬまま、このまま戦いが終わることに少しの不安と、深い安心を感じながらリリアーナは、一言を紡ぎ出す。


「リリアーナ様!宝物庫にて、抵抗する勢力と交戦が開始されました!どうもフォルタスが潜んでいた模様です!」

 だが、そんな彼女の余韻は、別の伝令により打ち砕かれる。


「フォルタス?まだ城内にいたのね!」

 そう言いながら、リリアーナは、一気に宝物庫に向けて駆けだす。


 嘗て、何度も歩いた城内。

 その場所は、しっかりと記憶していた。


「あっ!リリアーナ様!」

 城外の異変を知らせてくれた兵士が慌てたようにこちらに何かを言おうとするが、その言葉が耳に届く前に、リリアーナは、既にこの場所を離れていた。


 セレトとは違う、敵の残党。

 恐らく、この戦いの首謀者たる者達。


 ふと、フォルタスが自分に共和国に向かう様に指示を出してきたことを思い出す。

 あの頃は、彼は気にくわない貴族の一人であった。

 その男に、今度は正面から堂々と刀を向けることができる。


 王都をこのような状態にしたことに対する怒り。

 ハイルフォード王国の重鎮でありながら、その責務から逃げた男。


 ここの戦いを終わらせるための戦いへ向かうという言い訳。

 そして、セレトという存在を振り切るように、リリアーナはただ駆け抜けていた。


 第三十八章に続く

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