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【完結】魔術師は嘲笑の中を足掻き続ける ~嫌われ魔術師は、策謀と陰謀が渦巻く王国で、その嫉妬と羨望、そしてその力を聖女暗殺に利用されるが、それを受け入れ自身も利用することにした~  作者: 成吉灯篭
第二部 聖女は泥の中を藻掻き続ける

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幕間2-35

 幕間2-35


「なるほど。そう来ましたか」

 一人笑みを浮かべながら、ユラは目を開く。

 セレトの監視や、戦いの流れを見守るために王都中に展開をした、自身の分身の視界は本体である彼女と共有はされていたが、その繋がりは、セレトにより先程強制的に断たれた。


 そのリンクは、徐々に復旧をしていたが、今、彼女が共有をできる視界の範囲内には、セレトはいない。

 勿論、これは彼の策略であろう。

 こちらの監視を振り切り、何か自身の企みのために動きだす。


 最も、セレトがどう動こうが、彼女にはあまり関係のない話ではある。

 すでに、こちらの目的は、ある程度達している。

 彼が今更こちらの監視の目を外れようが、この戦線を放棄して逃亡をしようが、彼女にとっても大して問題はない些事であった。

 盟約で結ばれている以上、彼がこちらに手を出せず、大きく状況を動かすことはできないであろう。


「とはいえ、戦線をこのままにするわけにもいかないですね」

 そう言いながらユラは立ち上がり、出口へと歩を進める。


「この戦いの結果がどうなろうと良いのですが、あまりに一方的に負けるのもよくないですからね。仕方ありません。セレトの尻拭いでもしましょうか」

 そして大儀そうにため息をつくと、彼女は扉を開き、外へと出た。


「ぐおおおおおおおおおおお!」

 瞬間、こちらに向かってくる大量の魔物達の様子が目に入る。

 こちらの味方であり、貴重な戦力である魔物達。

 故にこちらに害意は向けておらず、ただ誰かの指示に従い、行軍をしているだけのようであった。


「ちっ!セレトの細工ですか!」

 だがユラは、その近づいてくる味方が全員緑色の光を身に纏っているのを見て、忌々しさを込めた舌打ちをする。


 そして彼女が次の一歩を動こうとした瞬間、魔物達は、一際強い緑色の光を発して大爆発を起こした。



「なるほど。こちらを直接害せないなら、このように間接的に害してくるとは。不快な奴ですね」

 間一髪。

 自身の身を、急ぎ張った魔力の障壁で守りながら、ユラは、苛立ちを隠そうともせずに言葉をひねり出す。


 最もセレトが仕掛けてきた罠は、無事に回避できたのである。

 反撃は、これからゆっくりとすればいい。

 そう考えた彼女は、改めて探知のために使い魔を放とうとする。


 グサリ。


 瞬間、彼女の身体は、周囲から放たれた弓矢によってあっけなく串刺しにされた。


「えっ?」

 混乱で、状況の把握ができない彼女が、薄れゆく意識の中で見たのは、こちらに向けて弓を向けているスケルトンの集団であった。


「こいつもダミーか」

 苛立ちを見せながらセレトは、魔力が抜けて崩れた泥人形を蹴飛ばす。

 同時に、魔力を止めたことにより、自身が展開したスケルトン達が一斉に崩れ落ちていく。


 絶好のチャンスと見て、ユラを倒そうと動き回っていたセレトであったが、彼女の本体を見つけ出すことは出来ずにいた。

 盟約により、直接的な手出しができない以上、直接的な攻撃ではない方法で彼女を殺そうと、魔物兵の自爆等を利用していたが、既に今の攻撃で、自身の指揮下にある魔物兵達は、ほとんど使い切っており、同じ戦法はもう使えない。

 ユラではなく、魔物兵達を仕留めるために弓を放ったスケルトンも、肝心な魔物兵がいなければ、役に立たない。


 最も、今の攻撃で、この辺り一帯の監視の目は潰しているはずである。

 監視の目が無いのであれば、こちらも比較的に自由に動きやすい。


『姫が餌にかかった模様。姫は、一気に進んでいる模様』

 そう考えているセレトに、監視用の使い魔から報告が入る。


「おや。聖女様がこんな穴に飛び込んできてくれとは。予想外だがありがたい話だ」

 そう笑いながら、セレトは、リリアーナ達が突き進んでいるであろう戦場の方向へと視線を向けて一人笑う。


 自分一人だけでは、戦場を動かすことは難しい。

 そう考え、戦線に穴を開けることで、囮となる部隊を誘き出そうとしたが、思った以上の大物が引っかかったと言えたであろう。


 リリアーナ達であれば、こちらの期待以上の成果もあげてくれる可能性が高い。


「面白くなってきたな。さて、俺も城に向かうか」

 そう笑いながら、セレトは、城へと向かおうと足を一歩踏み出した。


「いやはや。面白くはないですよ。跪きなさい。セレト卿」

 だが、そんなセレトを呼び止める女性の声と共に、セレトの身体は、鉛のように固まり、そのまま地面にへたり込むこととなった。


「くそっユラか」

 自身を言葉一つで捕えた相手、ユラ本人の存在に気づきセレトは腹立たしさを見せる。

 こちらを完全に動かなくする言霊を放てるという事であれば、目の前の彼女は、ユラの本体であある可能性が高い。


「大分好き勝手に動いていたようですね。さて、これ以上に動かれると、こちらも困るのでそろそろ眠ってもらいましょうか」

 そう話しながら、ユラは様々な呪文が刻まれた光るナイフを取り出す。

 それは、明らかに、こちらを確実に殺すための道具であった。


 こちらの命運が尽きたともいえる状況。

 だが、セレトはもう一度息を吸い、魔力を集中させる。


 目の前に、探していたユラの本体が現れたのである。

 これはチャンスだ。


 そう考え、セレトは、一人反撃の機会を窺うことにしたのであった。

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