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【完結】魔術師は嘲笑の中を足掻き続ける ~嫌われ魔術師は、策謀と陰謀が渦巻く王国で、その嫉妬と羨望、そしてその力を聖女暗殺に利用されるが、それを受け入れ自身も利用することにした~  作者: 成吉灯篭
第二部 聖女は泥の中を藻掻き続ける

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幕間2-34

 幕間2-34


「敵将だ!打ち取れえ!」

 リリアーナ配下の部隊長、レサオンの指示に従い、彼の配下たちが一斉にユノースに襲い掛かる。


「ははは。どうした?その程度か?」

 だがユノースは、襲い掛かる兵士達の太刀筋を見切り、一人一人を大して労せずに切り裂いていく。


「ちっ!距離を取りながら攻撃を仕掛けろ!奴を逃がすな!」

 レサオンは口うるさく指示を出しながら愛用品である拳銃を構えてユノースの隙を伺う。


 リリアーナの指示に従い、第三部隊の援護に向かったレサオンは、当初、このような戦場の端に援軍として送られるという事態に不満を感じていた。

 だが、送られた先の戦線にて、敵将であるユノースの姿が見えた瞬間、その不満も吹き飛んだ。


 それなりの重要人物であり、戦略的も重要な敵将。

 だが、セレトのような人外の力を持っているという情報も無い、ただの剣士に過ぎない人物。

 そして周囲の敵兵士達は、魔力暴走による自壊もあり、ほとんど戦力が残っていない。


 手柄を上げるには絶好のチャンスであった。


 しかし目の前にいるそのただの剣士を倒すことができない。


 自身が連れている優秀な部下達の攻撃は、全て読まれて当てることも叶わず、剣を持ち近づいた者はあっけなく切り伏せられ、離れた距離から弓や銃で狙っている者達も、時折距離をつめられてあっけなくその首を離れている。


「くそ!ちょこまかと!」

 部下達の苦戦に苛立ちを見せながら、レサオンは右手の銃を向けながらチャンスを伺う。


 ハイルフォード王国の工業地域で特別に作らさせたこの銃は、通常の銃よりも弾速が早く、また魔力を込めれば、ターゲットに向けて多少の誘導ができるという特別品であった。

 秘密裏に造らせた品ということもあり、恐らくユノースは、こちらが銃で狙っていることは分かっていても、その性能にまではそこまで理解は及んではいないであろう。

 この相手の無知に付け込める一発が、こちらの最初で最後のチャンスであった。


 狙いは、ユノースが通常より大振りをし、隙を見せる一瞬。

 相手が通常の銃撃であれば避けられると判断をするギリギリのタイミングで動く一瞬。

 その隙を見せた時が、こちらの勝利が確定する。


「ほれ!」

 ユノースがまた刀を一振りしてこちらの兵士を切り倒す。

 だが今回は、ユノースはあまりに深入りをしすぎていた。

 隙を見せない敵を強引に切り裂こうとしたが故に、その太刀は深く相手に突き刺さり、彼の身体も少しバランスを崩していた。


「死ねよ!」

 絶好のチャンス。

 そう考えたレサオンは、引き金を引く。


 パン。


 乾いた音が響く。

 一見、普通の拳銃と変わらない一発。


 銃撃をされたことに気が付いたユノースは、身体をひねりながら、最小限の動きでこちらの攻撃を避けようとしている。

 だが、その程度の動きでは無駄である。

 放たれた銃弾は、レサオンが込めた魔力により、ターゲットに向けて多少の軌道は修正をしてくれる。


「勝った!」

 勝利を確信してレサオンは叫ぶ。


 カン。


 だが、その声をかき消すように銃弾が逸らされた音が響く。


「えっ?」

 そしてレサオンは、自身の目の前に迫ってくる短刀に間の抜けた声を上げる。


 グサリ。


 そしてそのままレサオンの額には、ユノースが放った短刀が突き刺さり、あっけなく彼の命を奪った。


「間抜けな奴」

 笑いながらユノースは、レサオンの額に突き刺さった短刀を引き抜く。

 体勢を崩しながらも、相手に向けて放った短刀は、こちらに向かってくる銃弾を弾き飛ばし、そのまま敵将を倒す一撃となったのであった。


「久しぶりですね。兄さん」

 そんなユノースの耳に、聞き覚えのある声が入ってくる。


「おや、ロットか。こんな狂った世界でもまだ生きているとは。お前も悪運が強いな。いや運が悪いというべきか」

 久々の兄弟再開を果たしたユノースは笑いながら、こちらに向かってくるロットに向けて武器を向ける。


「貴方が、こんな狂った世界を生み出したという事に僕は失望をしていますよ」

 そう言いながらロットも武器を構えて応戦の姿勢を見せる。


「まだあの聖女様に忠誠を誓うのかい?」

 ユノースは一歩、ロットに近づく。


「彼女は少なくても道を踏み外していない」

 そう言いながら、ロットの右手には魔力が込められ始める。


 互いに仕掛ける一手のタイミングを考えながら、少しずつ距離も詰めていく。


「道を踏み外さず、その結果何も手に入れることができず、失うだけの愚者か?弟よ。俺は、そんな奴を信頼しているお前に失望するよ」

 そう言いながらユノースは、刀をもう一本を抜き、二刀流の構えを取る。


「兄さん。貴方が思うほど彼女は失ってばかりではないよ」

 両手持ちの大剣をしっかりと握り、ロットは、少しずつ距離をつめる。

 全ては、一瞬で決着がつくだろう。


「なら、お前が満足するように生きていけばいいだろ!」

 ユノースはそう叫び、一気に距離をつめる。


「うぉおおお!」

 そんなユノースに向けて、ロットは思いっきり手に持った大剣を振るう。

 この一撃は決まれば、相手を真っ二つにできるだろう。


 ガキン。


 ロットの一撃は、ユノースが自身の二刀で相手の大剣を挟み込み防ぐ。


「光の矢!」

 だが、止められた大剣を手放し、ロットは距離を置いてすぐに魔法による遠距離攻撃を仕掛ける。


「無駄だ!」

 ユノースは、そんなロットの攻撃を笑いながら、放たれた魔法を自身の二刀で弾き飛ばす。


「兄さん!」

 しかし、ロットは持ち替えた短刀を構えて、ユノースに突っ込んでいた。


「ほぅ」

 ユノースは。笑みを浮かべながら、その一撃を正面から受けようと武器を持ち換えた。

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