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【完結】魔術師は嘲笑の中を足掻き続ける ~嫌われ魔術師は、策謀と陰謀が渦巻く王国で、その嫉妬と羨望、そしてその力を聖女暗殺に利用されるが、それを受け入れ自身も利用することにした~  作者: 成吉灯篭
第二部 聖女は泥の中を藻掻き続ける

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幕間2-24

 幕間2-24


「くそ!何事か!」

 ヴェルナードの怒鳴り声が戦場に響く。

 兵を進め、コブルスに攻め入った彼を待ち受けたのは、共和国の兵ではなく、彼らと戦っていた黒い翼を持った異形の怪物達であった。


 黒い翼を持った怪物達は人間を遥かに上回る力と、遥かに下回る知能で暴れまわっている。

 その力は、並の兵士では碌に対応はできず、共和国の兵士達は、一方的に嬲られているようであった。


 そのような中、ヴェルナードの兵士達が急な襲撃にも関わらず対応ができていたのは、元々このような怪物達を使役する研究が進めていたが故の幸運にすぎなかった。

 自身の軍として運用をしている同種の怪物達の習性を理解しているからこそ、ヴェルナードとその部下達は、確実に敵の攻撃を捌いていた。

 最も、怪物達は、本能従い暴れているだけであった。

 そして高い力を有しているとあっても、統制が取れていない敵等、少しでも統制が取れた兵士達であれば、そこまで労せずに倒すことができる。


 しかし、敵を如何に抑えようとも、ヴェルナードの懸念は消えない。

 何故なら自分達をここに誘導をしてきたユノースが、乱戦に入った瞬間、すぐに姿を晦ましたのであった。

 探そうとしても、戦いは激しく、だが、明らかに部隊から離れている。

 それも、負傷や戦死ではない。

 彼の周囲に配置されていた部下達の話をまとめると、ユノースは、自身の意思で命令を無視して、ここから離れていったのである。


 元々、ユノースは優秀な部下ではあるが、ヴェルナードは自国を裏切り亡命をしてきた彼をそこまで信頼はしていなかった。

 だが、昨今のそれなりの戦果もあり、どこか気を許している部分もあったのも事実である。


 そして今、そんな彼が姿を晦ましている。

 それに加えて、ここ、コブルスは、ユノースによって誘導された場所である。

 その事実が、ヴェルナードを非常に不安にしていた。


「全軍!一気に突破!ここを離脱し、体制を立て直す!」

 そう叫びヴェルナードは、一点突破を目指す。

 今は、余計なことを考えるべきではない。

 とりあえず、体制を整えるのが一番の優先事項である。



「やれやれ。ただの脳筋馬鹿かと思っていたが、必要以上に頭が回る奴だな」

 ユノースは、そう愚痴を呟きながら先を進む。

 ヴェルナードから逃げることに成功はしたが、周囲には、依然敵が多い。

 黒い怪物達が時折近くを通るのを眺めながら、ユノースは、ゆっくりと、だが確実に目的地へと向かう。


 疑い深いヴェルナードから姿を晦ますのは、そう簡単な話ではない。

 今回、偶々事前に入ってきたコブルスの戦乱の情報を利用し、こちらへ部隊の誘導を行ったが、恐らくもう二度と使えない手ではあろう。

 いや、もうクラルス王国に戻ることも難しいであろう。

 そう言う意味では、この一手は、目的を遂げるための最初で最後のチャンスであった。


「グオオオオオオ!」

 ユノースに気が付いた黒い翼と手足が付いた蛇のような化け物がこちらに襲い掛かってくる。


「ちぃ!邪魔だ!」

 襲い掛かる蛇の頭を一太刀で切り落とし、ユノースは足を速める。

 あまり時間をかけるわけには行かない。


 そもそも、この場所にあるかもわからない物を求めてこの場に来たのである。

 正直、どれぐらいの時間が必要であるか、ユノースもはっきりと分かっていなかった。


 ただクラルス王国に逃れてから彼の地で調べ上げた、彼らが使役している黒き翼を持つ化け物たちの研究資料。

 黒い翼を持つ化け物たちを呼ぶための術式の特性。

 こちらの世界に、向こうの世界との門をつなぎ、そこから魔物達をこちらに呼び出す。

 その力を使い、自身の目的を達する。


「?!貴様、何者だ!」

 化け物の次は、共和国で防衛の任に当たっていた兵士であろう。

 ユノースに気が付くと、二人係でこちらに襲い掛かってくる。

 最も、所詮は下っ端の兵士。

 ユノースは落ち着いて剣を振るうと、二人をあっけなく地面に倒れる。


 それからしばらく壊滅寸前のコブルス内を歩き回っていると、ユノースは目的の物を見つけた。


 黒く、どこか魔力に満ちている禍々しい穴。

 時折鼓動をしているかのように、穴が動いている。


「やれやれ、本当にこれでうまくいくのやら」

 ようやく目的の物を見つけながらも、どこか半信半疑なユノースは、投げやりな言葉をこぼしながら、自身の懐から、一際大きな宝石を取り出す。


「まあ、もう他に方法はないですからな。閣下。失敗したら、私も後を追いますのでお許しくださいね」

 そう言いながらユノースは、宝石を黒い穴に向けて投げ入れる。

 そして同時に、クラルス王国で調べた呪文を唱える。


 すると宝石に魔力が流れ込み、その中に封じられたものを再度、こちらの世界に召喚する。

 あちらの世界と繋がった魔力の穴とその性質を利用した召喚術。

 うまくいくのかは、半ば賭けであったが、ユノースの目の前で起こっているのは、明らかに召喚術の反応であった。


「さてうまくいったかと思いますが、お身体は如何ですか?閣下」

 そしてユノースは、 召喚術によって呼び出された者に呼びかける。


「あぁ悪くはないな。生き返った気分だ」

 そんなユノースに対して、改めて肉体を得たヴルカルは、わざとらしく笑いながら、ユノースに応えた。

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