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【完結】魔術師は嘲笑の中を足掻き続ける ~嫌われ魔術師は、策謀と陰謀が渦巻く王国で、その嫉妬と羨望、そしてその力を聖女暗殺に利用されるが、それを受け入れ自身も利用することにした~  作者: 成吉灯篭
第二部 聖女は泥の中を藻掻き続ける

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第二十二章「リターンマッチ」

 第二十二章「リターンマッチ」


 リリアーナとセレト。

 ハイルフォード王国で争っていた二人は、お互い仕掛けようとせずに、ただただ見つめ合う。


 共和国という異国の地であの頃とは異なる立場と力を互いに手にした二人は、その新しい力を推し量るかのように相手の一挙一動に集中をしている。


「それで聖女様。あんた、ここからどうしたい?」

 一発触発の状態の中、セレトが問いかけてくる。


「あら?貴方は何を望むの?」

 そんなセレトに対し、リリアーナは武器を向けようとする。

 だがその武器を持った右腕は、振り上げている途中で何かに絡められたかのような違和感を感じたと思うと同時に、動かせなくなる。


「そうだなぁ。こちらとしては、ここで一つ清算としたいところだがなぁ」

 そう言いながらセレトは、左腕を上げる。

 その腕の動きに合わせて、リリアーナの右腕に対する締め付けも強くなる。


 腕の不調はセレトによる干渉であることは明らかである。

 徐々に痛みが増してくる腕にリリアーナは、不快感と苛立ちを強める。

 セレトによる干渉は、こちから解除することができない程ではない。

 だが、その一瞬の隙は、セレトに付け入る隙を与えかねない。


 非常に腹立たしい話であるが、二人の戦いの初手は、セレトのペースで進んでいた。

 そしてそんな現況に感じる苛立ちを押し殺しながらも、リリアーナは、セレトによる手際の良さに驚きを感じていた。


 こちらに気づかれないように、それなりに強力な術で、こちらの動きを封じてくる。

 事実、リリアーナは自身で腕を動かそうとするまでその違和感に気づけずにいた。

 少なくても、このような芸当、以前のセレトにはできなかったであろう。


「おや、どうしたかな?聖女様。あまり顔色が良くないようだが」

 わざとらしい笑みを浮かべながら、セレトはこちらに話しかけてくる。

 そしてセレトは、こちらに話しかけてきているだけだが、同時にリリアーナの腕を締め付ける感覚は、徐々にその範囲を身体へと広げてきていた。


 これ以上、時間を与えるということは、セレトを利するだけだ。


「余計なお世話よ!」

 そう考えたリリアーナは、一声を発すると同時に、かけられた術を解除し、強引に切りかかる。


「おっ!おや?!」

 その斬撃をよけきれなかったのか、リリアーナの斬撃はセレトの左腕を捕え、そのままその腕を断ち切る。

 同時に、セレトの顔面に向けてリリアーナは、光の弓矢を放つ。

 左を切られ、更にリリアーナの攻撃を強引によけようとした弊害だろうか。

 セレトの身体はバランスを崩し、大きな隙を晒していた。


 そのセレトの身体に、多数の光の矢が刺さる。

 明らかな致命傷。

 こちらの奇襲が功を奏したと言えるだろう。


「いやはや。まさかここまで圧倒的とは。油断大敵とはこのことだな」

 だが、そんなリリアーナの耳にセレトの声が響く。

 同時に、四方八方から黒い短刀がリリアーナに襲い掛かる。


「?!くそ!」

 予想外の反撃。

 それに驚きながらも、リリアーナは周囲に光の防壁を張る。

 慌てて生み出した光の防壁であるが、その壁は、セレトの攻撃を全て弾き落とす。


「おやおや、これもダメかぁ。さすがは聖女様」

 わざとらしく笑みを浮かべながら、身体中に光の矢を刺したまま、セレトが声をかけてくる。


「まだ生きているとは。生き汚さだけは、格段に成長しているわね」

 距離を置きながら、リリアーナは挑発を口にする。

 そんなリリアーナを、片腕を失い、光の矢で多くの負傷を負った状況でありながら、セレトは余裕すら感じさせる表情で見つめている。


「いやはや。しかしこれでこちらの手札は一つ見られてしまったわけだ。さてどうするか」

 笑いながらセレトは、残った腕で刀を抜き戦闘態勢をとる。

 そして隻腕となったセレトの動きを見ながら、リリアーナも武器を構える。


 相手の方が満身創痍であり、明らかにこちらが有利な状況ではある。

 だが、どんなにこちらの攻撃を当てても余裕な態度を崩さないセレトに、リリアーナは徐々に恐怖を感じつつあった。

 これが、セレト達が手に入れようとしていた悪魔の力なのだろうか。

 そのことを考えながら、セレトの動きに注意を払う。


 セレトは武器を構えたものの、魔術の行使を含めて、こちらに仕掛けてくる様子はない。

 その様子に不可解な印象を抱いた瞬間、ふとリリアーナは背後に気配を感じた。


 敵を目の前に、下手な動きをするべきでないとは重々承知をしていた。

 だが、リリアーナの戦士としての直感は、その気配を無視するべきでないと判断した。


 そう考え、リリアーナは、目の前のセレトに向けて簡単な光魔法を放つ。

 それを目くらましに、一気に背後に振り向き臨戦態勢をとる。


 そんな彼女の目に映ったのは、先程切り落としたセレトの左腕の断面から、伸びたセレトの上半身であった。


「いやはや。バレてしまったか。残念」

 こちらに襲い掛かろうと、黒い剣を構えていたセレトであったが、振り向いたリリアーナと目が合うと、わざとらしくため息をつき、その動きを止めた。


 その様子に戸惑いながら、慌てて再度振り向いたリリアーナの目には、先程と同じく、隻腕で、身体中に光の矢が刺さったセレトが立っていた。


「一筋縄ではいかないってことね」

 呆れた様な口調でぼやきながら、リリアーナは、冷静にこの状況の打開を考えるのであった。


 第二十三章に続く

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