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【完結】魔術師は嘲笑の中を足掻き続ける ~嫌われ魔術師は、策謀と陰謀が渦巻く王国で、その嫉妬と羨望、そしてその力を聖女暗殺に利用されるが、それを受け入れ自身も利用することにした~  作者: 成吉灯篭
第二部 聖女は泥の中を藻掻き続ける

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第二十章「浴びるは、黒い魔女の憎しみ」

 第二十章「浴びるは、黒い魔女の憎しみ」


「動けますか?いや、動けませんか。いやはや、いい眺めですね」

 アリアナは、醜悪な笑みを浮かべながら捕えたリリアーナに語り掛ける。


「確かに簡単に解けそうにない拘束ね。こびり付いた汚物のような貴方の性格をよく表している素晴らしい魔術ね」

 その言葉に対しリリアーナは、皮肉な口調で言葉を返す。


「ふん。所詮プライドだけの聖女様。今は動くその口から、出せるうちに言葉を出しておきなさい」

 アリアナは、鼻を鳴らしながらリリアーナを一睨みする。

 そして、同時に右手をこちらに向けて、そのまま手を握った。


「つっ!」

 瞬間、リリアーナの身体を縛る黒い鎖が強く縛り、同時に鎖を通してアリアナの怨念が込められた黒い魔力がリリアーナの身体に流れてくる。

 その痛みと、体内を異物が駆け巡る不快な感覚で、声を漏らしそうになるが、それを必死にこらえる。


「おや、どうしましたか?顔色が悪そうですね。ふふふ」

 心底楽しそうに、そのどす黒い本性を見せつけるような表情で、アリアナは、リリアーナを甚振る。

 その気になれば、一撃でこちらの首を落とせる状況ながら、それをしないのは、彼女の余裕と、こちらに対する恨みの感情を発散することを優先しているからであろう。


「まあ貴方は稀代の聖女様。この程度の傷、すぐに癒すことができるのでしょう?あぁ羨ましい」

 そう言いながらアリアナは、魔力を固めて黒い短刀を生み出すと、その刃をリリアーナの首筋にあてる。

 魔力で作られた刃特有の、不快な感覚を首筋で感じながら、リリアーナは、アリアナに呆れた様な視線を向ける。


「つまらない女ね。アリアナ。そこそこ優秀な力と血筋を持ちながら、ただの嫉妬と癇癪で振るう事しかできないなんてね。そんな頭の出来だからセレトの娼婦程度に収まって終わってしまうのよ」

 首筋にあてられた刃を無視して、リリアーナは、心底軽蔑をした表情でアリアナに向けて言葉を吐き捨てる。


「うるさい!穢れた聖女如きが!」

 瞬間、アリアナは激昂をし、一気にこちらの首筋にあてた短刀の刃を振るう。


 黒い魔力が、リリアーナの身体を守る魔力ごと彼女の首を切り裂く。

 元々身体を拘束する黒い鎖により、魔力をうまくコントロールできない状態である。

 自身の首を切り落とそうとする黒い短刀の動きを多少鈍らせるが、その動きを目ることは出来ず、リリアーナの首には致命傷ともいえるような切り傷が開いた。


「あは」

 首から血をまき散らすリリアーナ。

 その様子を見ながら、アリアナは、満面の笑みを浮かべ、歓喜の声を口から漏らす。


 そしてその瞬間、彼女の気持ちのゆるみと合わせて黒い鎖の拘束が、一瞬ゆるんだ。


「上位の癒し(ハイヒール)!」

 その一瞬、リリアーナは、体内の魔力を一気に動員し、事前に仕込んでいた癒しの魔術を発動する。

 黒い刃は、体外への魔力の発出を乱す。

 だが、体内で込められた魔力への影響は弱い。

 故に、刃が離れ、黒い鎖の拘束が緩んだ一瞬、リリアーナが唱えた癒しの魔術は発動し、彼女の身体を一気に癒していく。

 アリアナや兵士達との戦闘による様々な傷、そして先程、黒い短刀によって切り裂かれた首の傷。


「えっ?!」

 アリアナは、リリアーナの身体が癒されていく様に驚きの表情を向け、そのまま慌てて再度黒い鎖でこちらを拘束しようとする。


「詰めの甘さは、ボス譲りね。アリアナ」

 だが、その鎖の動きより、リリアーナが刀を抜く方が早かった。

 彼女が振るった刀は、光の刃を纏い、迫りくる黒い鎖を切断する。

 そして同時に、アリアナの胴体を上下に切断する。


「ちぃ!」

 身体を一刀両断されたアリアナだが、切られた瞬間その身体を黒い霧に変えて、斬撃を無効化する。

 リリアーナが振るった刃の風圧で、黒い霧は一瞬霧散するが、そのままリリアーナから離れた場所に集まり、アリアナの身体を再度構築する。


「き、貴様!」

 止めを刺し損ねたこと、自身のミスで絶好の勝機を逃した事、そんな様々な要素による怒りの表情を向けてくるアリアナ。

 だが、彼女の身体が黒い霧から戻る前に、リリアーナは一気に距離をつめて次の一撃を放つ。


「くっ、くそ!デッ、デールスホール!」

 身体を一気に切り裂かれ、中途半端に構築された身体が霧に戻り霧散しながら、アリアナは、強引に術式を叫ぶ。

 瞬間、リリアーナの周囲に黒い穴が複数展開される。


「?!聖なる(ホーリーシールド)!」

 黒い穴より、大量の蝙蝠と黒い蛇が吐き出され、それらは一気にリリアーナに襲い掛かってくる。

 リリアーナは、周囲に展開した光の盾で、その攻撃を防ぎながら、軽く舌打ちをする。

 一気に攻め切ろうとしたが、アリアナも優秀な魔術師。

 攻められながらも強引に切り返しの一手を放ち、こちらの動きを止めながら自身の体勢の立て直しを図られた。


「くそ!このまま終わらせれるわけには…」

 肩で息をしながら距離を取ったアリアナは、複数の魔法陣を展開し、こちらに向けて攻撃を放つタイミングを計っている。


「雇い主と同じで、逃げ足だけは一流ね。汚らしい煤らしいこと」

 リリアーナも呼吸を落ち着かせながら、アリアナの様子を見ながら、仕掛けるタイミングを計る。


「ふん。挑発には乗らないわよ。今度こそ、完全に息の根を止める!」

 そう言いながら、アリアナは、リリアーナに向けて展開した魔法陣を発動しようとしている。


「そう。気が合うわね。私も貴方にそろそろウンザリしてきたわ」

 リリアーナも、同時に切り掛かろうと武器に手を置く。


 アリアナの魔法陣から黒い腕と黒い鎖がずり出てくる。

 リリアーナは、武器に魔力を込める。


「その顔、二度と見れないものにしてやる」

 そして向き合う中、アリアナから一言、言葉が漏れた。


「あら貴方、私に嫉妬していたの?」

 そんなアリアナの言葉に、リリアーナは、軽く言葉を返す。


「っつ!」

 そして、その言葉がアリアナに届いた瞬間、彼女の表情が一気に歪んだ。


「しっ死ね!」

 そのままアリアナは、怒りに身を任せ、魔術を放とうとする。

 リリアーナは、自身が放った言葉に対する予想外の反応に少々困惑をしながら迎撃の準備をする。


 だが、二人の力がぶつかり合うことはなかった。


 二人が一気に動きだそうとした瞬間に彼女達の背後で、どす黒い魔力が一気にあふれ出し、その強大な魔力の感覚が二人の足を止めたのであった。


 第二十一章に続く

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