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【完結】魔術師は嘲笑の中を足掻き続ける ~嫌われ魔術師は、策謀と陰謀が渦巻く王国で、その嫉妬と羨望、そしてその力を聖女暗殺に利用されるが、それを受け入れ自身も利用することにした~  作者: 成吉灯篭
第二部 聖女は泥の中を藻掻き続ける

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幕間2-19

 幕間2-19


「角?いやはや、あれは実験の成果も確認せずに軽々しく渡せるものでもないよ。いや、しかし派手にやってくれたものだね」

 落ち着きを保ちながらフィリスは目の前の男に話しかける。


「これは、反逆行為というものだよ。いやはや、戦乱時の事と言えども、味方部隊に害を為し、敵の密偵と遭遇し、そして今ここに攻め入ってきている刺客は君に縁がある者という。いやいや、隠蔽工作をする者の身になってくれ」

 そう言いながら、フィリスはわざとらしい笑みを浮かべる。


 フィリスには余裕があった。

 セレトも所詮首輪がついた犬。

 この共和国内で生きていくにあたり、こちらに害を与えるわけにはいかないはずである。

 それに、こちらにはエルバドスの角という切り札もある。

 故にフィリスは、大した警戒もせずに、セレトに接触を試みたのである。


 これまでのやり取りを見るに、恐らくセレトは、エルバドス召喚にあたり必要な準備は、媒体となる角を除き、用意が出来ているようである。

 ならば、その成果をここで見せてもらうのも悪くはない。

 幸いにも、強力な襲撃者の来襲という部隊は整っている。


 この状況を活用しない手はないであろう。


「反逆?あぁ、あなたはそう考えているのか」

 だが、セレトは、そんなフィリスの言葉に苦笑し、呆れたように言葉を返す。

 そしてその声色、冷たい声にフィリスは、一抹の不安を感じる。


 そう。

 彼は、一つ思い違いをしていた。


 フィリスの中で、セレトは安住の地を求めて、ここに辿り着いた亡命者であった。

 王国への復讐心もあるが、新しい地である共和国での平穏な生活を求め、そのための後ろ盾を求めており、そのためにフィリスに接触をしてきた存在。

 故に最終的には、こちらに首を垂れるであろうという思い込み。

 裏で多少の謀略を働かそうが、まだこちらを裏切られるほど立場を築けていない以上、当面は、表立って裏切ることはないであろうという安心感。


「まあ、私には私の考えがありますが。何か勘違いをされているようですな」

 だが、それは正確ではない。

 セレトという男にあるのは、あの頃も、今もただ一つ。

 王国、いや自分自身を追い落とした者達への復讐心だけである。


 彼にとって共和国というのは、求めていた安住の地ではなく、ただ利用するためだけの通過地点に過ぎない。


「何を言っているのかね?私の後ろ盾がなしで、この国でやっていけると思っているのかね?」

 だが、フィリスは不安を感じながらも、そこで退くという選択肢を選ばなかった。

 まだエルバドスの角は、こちらの手にある。

 自身の優位は揺るがないはずである。


「あぁ、あんたのことは嫌いじゃないさ。だからここは見逃してやろうとは思うよ」

 セレトは笑いながら、こちらに一歩近づく。


「だから、その代金として、エルバドスの角をお借りさせてくれないですかね。フィリス閣下」

 そして、セレトがまた一歩、こちらに近づく。


 その予想に反した態度、そしてセレトが放つプレッシャーに押しつぶされそうになりながら、フィリスは、ここで自身の失敗に気づく。

 だが、そんな考えを撥ね退けようとする。


 大丈夫。セレトは、まだ角を手にしていない。

 角は、こちらの手にある。

 奴も、正確な角の位置は把握していないはずである。

 それを使えば、ここから逆転は十分にできる。


「愚かだね。フィリス。そんなところに角を隠すなんて。それでは、こちらの計画も変えないといけないじゃないか」

 そんなフィリスに対し、セレトは心底残念そうに首を振る。

 そして、魔力を込めたその手をこちらに向けてきた。


 フィリスは、その言葉の意味を問いかけようとする、いや、その言葉の意味は、問いかけないでも理解はできていた。

 瞬間、フィリスの心臓が非常に強く波打った。


 部下の魔術師に任し、身体に埋め込んだ悪魔の角が、今、フィリスの身体の中で強く鼓動を始めていた。

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