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【完結】魔術師は嘲笑の中を足掻き続ける ~嫌われ魔術師は、策謀と陰謀が渦巻く王国で、その嫉妬と羨望、そしてその力を聖女暗殺に利用されるが、それを受け入れ自身も利用することにした~  作者: 成吉灯篭
第一章 魔術師は嘲笑の中足掻き続ける

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幕間77

 幕間77


 「面白い情報?」

 リリアーナに、その情報が届けられた時、彼女は、ちょうど訓練終えて屋敷に戻るタイミングであった。


 「えぇえぇ。聖女様に唾を吐いた、ある男の話ですよ」

 わざとらしい笑みを浮かべたその使者は、リリアーナにワザとらしい敬意を見せて会話を続ける。

 フードを被った中から聞こえる若い男の声は、リリアーナの耳に不快に響いた。


 「お生憎様。他の方のスキャンダルなんて私は興味ないわ」

 詰まらなそうに手を振りながら、リリアーナはそこを立ち去ろうとする。


 あの事件以来、彼女の元には、この手のつまらない話を届けてくる者がよく訪れるようになった。

 大きな政治的事件に関わった人物に、それとなく接触をして何らかの繋がりを持とうとする者。

 暗殺事件の被害者という立場は、そのような人物にとって、都合がいいのであろう。

 最もリリアーナは、そんな輩を相手にする気は毛頭なかったが。


 「おや。ご興味ないですか。それは残念です」

 フードの男は、軽薄そうな声で言葉を返す。

 最も、そのような言葉で応えた後も、リリアーナから離れず、わざとらしい身振りを交えながら隣を歩き続ける。


 「それで、まだ何か用?」

 しばらく無視を続けたが、隣を歩く男は、離れる気配がない。

 そのことに痺れを切らし、リリアーナは、若干の苛立ちを交えた声で問いかける。


 「いえいえ。まあ貴方がきっと必要をしている情報だと思っておりましてね。少しは興味をお持ちいただけるとは思うんですよ」

 リリアーナの苛立ちを感じているはずなのに、男は、飄々とした態度を崩さずに言葉を返す。


 「しつこいわね。興味ないわ」

 冷たく一声言い放つと、リリアーナは足を速め男から離れる。

 これ以上、無駄な問答を続けるつもりはなかった。


 「あのセレト卿に関する情報ですが、ご興味はないですか。残念です」

 そんなリリアーナに囁くように、小声で男は呟く。

 勿論、その言葉に反して、残念という感情が声に込められている様子はなかったが。


 「セレト?興味はないわね」

 リリアーナは、その言葉に素っ気無く応える。

 だが、その回答を出すタイミングは一瞬遅れがあった。

 それを相手は見逃さなかった。


 「いえね。大した話ではないんですよ。ただ、彼に新しい力を与えた愚か者がいたという噂話です」

 男は、フードの下から囁くように言葉を発し、そのまま黙る。


 リリアーナは、その言葉を一瞬吟味する。

 セレトについては、ヴェルナード達と同様に王国が総力を挙げて追っているという話は聞いていた。

 リリアーナの暗殺に関わっていたというだけではない。

 呪術という力を持っていたセレトは、王国内の様々な裏の仕事に関わっていたということもあり、彼が生きている事が不都合な人物も多いようであり、様々な勢力が彼の命を狙っているという噂もある。

 だがそのような中、セレトは、追手を撒いて逃亡を続けており、今もまだ、捕えたという話どころから、発見したという報告は上がってきていなかった。

 故に、公的な発表を信じるのであれば、セレトに関する情報を届けると言っている目の前の男が述べていることは、ただの虚言であると考えるべきであった。


 しかし同時に、リリアーナには、別のルートからいくつかの情報が入ってきていた。

 セレトを発見したものの、逃す結果となったという情報である。


 王国の上層部が、自分達の責任の回避、威信を守るために情報を隠蔽している可能性を考えると、目の前の男の情報には、多少の価値はあるのかもしれなかった。


 目の前の男は、言葉を発したあと、口を開くことはない。

 リリアーナからの言葉を待っているようであった。


 「それで、そんな噂話に私が興味があると?」

 痺れを切らしたのはリリアーナであった。

 そして、言葉を返して彼女は後悔する。

 ここでの正解は、彼の言葉に応えず無言のまま立ち去ることであろう。


 だが、リリアーナは応えた。

 それは、目の前の男が持つ、王国が公的に発表をしていないという情報を得るということである。

 これまで、自身の情報網を使い、必要と思われる情報を得ることはしてきたが、目の前の男が、その必要な範囲の情報を与えてくれるかは不明である。

 その情報が、自身で処理をできる範囲の物であればいいが、それが自身にとって持て余す情報であるリスクもある。


 王国の暗部に繋がっているセレトに関する情報である。

 それは、リリアーナにとって、知りたくもない、不利益な情報を含んでいるリスクは高いであろう。


 しかし、リリアーナは、その情報を得ることを決めた。

 今更引き返すことは出来なかった。


 「なら立ち去ってください。私は、それでもかまいませんよ」

 軽薄そうな笑い声を混ぜながら男は応える。

 最終通告。

 だが、リリアーナが決して立ち去ることがないと理解しての通告。


 それでも、リリアーナは立ち去らなかった。

 そのまま目の前の男の言葉を待った。


 「それで、あなたはセレトについて何を知っているの?」

 リリアーナは、男の言葉を待つ。


 「何大した話ではないですよ。ただ最近、ある街でセレトとの戦闘があったようでしてね」

 そして、リリアーナはセレトに関する情報、ユラ達との戦い、その中で得た力について、同時にセレトに生じた変化を聞くこととなる。


 「今、セレトには、圧倒的な力、それと分身体にユラが仕込んでいた毒が混在しているようですよ」

 最後に男は笑いながら、セレトの身体に生じた変化を話し、語りを終えた。


 リリアーナは、足掻き続けるセレトの話を聞き、哀れみを感じていた。

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