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【完結】魔術師は嘲笑の中を足掻き続ける ~嫌われ魔術師は、策謀と陰謀が渦巻く王国で、その嫉妬と羨望、そしてその力を聖女暗殺に利用されるが、それを受け入れ自身も利用することにした~  作者: 成吉灯篭
第一章 魔術師は嘲笑の中足掻き続ける

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幕間76

 幕間76


 「いやいや。しくじりましたかねぇ」

 身体を再構築したユラは、照れ隠しのような笑みを浮かべながら呟く。


 セレトとの戦いによって、負った傷を簡易的なヒーリングで癒しながら、ユラは、先程まで居た街の方角へと視線を向ける。

 最も、その目に街は映らない。

 緊急手段として利用した、脱出用の魔術は、ユラを、あの場から遠く離れた場所へと移転をさせた。


 最も、あのセレトの様子を見る限り、ここまで逃げてきたのは決して悪い手段ではないであろう。

 少なくても、ヴルカルの隠れ家で相対した時よりも強力な力を得ている。

 そんな相手と無駄に戦うリスクを負う必要はないであろう。


 そのようなことを考えながら、同時に、あの街にまだ残っているであろう、リオン達に対し、ユラは若干の同情を見せる。

 少なくとも、今のセレトは狂犬である。

 そして、短期間で多くの裏切りを受けた彼にとって、アリアナは、残された最後の砦であろう。

 それを害するような存在を、あの狂犬が、どう判断をするか。

 考えただけでも恐ろしい。


 だが、そのような狂犬も、その子飼いと共に、もう少しすればこの国から出ていくのである。

 完全ではないが、監視の魔術により、セレトの行動方針等の最低限の情報は得ることができたし、今後も動きを追う宛は出来た。


 そして他国への亡命、いや身分を隠し潜伏するのであるから、逃亡だろうか。

 勿論、国の上層部は、彼の首を欲しており、彼が国外に出ていくことを決して許さないであろうが、ユラにとっては、むしろそんな国を出し抜いて逃げている現在の状況の方が都合がよかった。


 色々と予想外な出来事も起きているが、対局は自身が望むような形で進んでいる。

 むしろセレトの動きを抑えることができたのは、予想外の収穫であろう。


 何もかもうまく進んでいる状況に、ユラの口許も自然に緩む。


 「おやおや。そんな非難めいた態度を見せないでくださいよ」

 ユラは、そんな思考が読まれたかのような態度を、目の前の虚空に向けて呟く。


 「私は、彼を捕えるため、皆様の手助けも兼ねて向かっただけですよ。まあその結果がまさか、あのような結果になるとは思いもしませんでしたが」

 言い訳のような言葉を続けながら、ユラは誰もいない場所に言葉を続ける。


 「何、彼はまだ役に立ちますよ。それまでは、好きに泳がせておけばいいでしょう」

 そう言いながら、ユラは立ち上がる。


 「愚かな。あいつに食い千切られてからでは、何もかも遅いではないか」

 そんなユラに対し、声が響く。


 「おや、わざわざ出向いていたのですか?クルス様。きひひひ」

 その声の主、虚空からゲートを開き、急に現れたクルスに対しユラは、わざとらしく笑いながら応える。


 「あぁそうだ。私は、アレを持ち出すことには反対だったしな。あの馬鹿には持て余すだけの代物だろ」

 クルスは、苛立ちを見せながら、ユラに言葉をぶつける。

 転移の術。事前に決められた、条件を満たした場所限定であるが、指定した場所に移動できる高等術である。


 「おやおや?そうですか?彼は貪欲だ。だからこそ、あれをきっと使いこなせると思いますよ。ひひひひ」

 ユラはクルスの苛立ちを受け流すように軽く応える。


 「勝手にしろ。だが、こちらの邪魔はするな」

 そう言いながらクルスは、腹立たしそうにユラが今しがた脱出をした街の方に視線を向ける。


 距離が離れたその街は、当然ここからは見えない。

 ただ、その方角で放たれている膨大な魔力の波動を二人は感じていた。


 「いやいや、セレト卿は楽しんでいるようですね」

 ユラも心底楽しそうな声で、その魔力の波動が意味することを口にする。


 「お前らの悪趣味に付き合うつもりはない。そもそもあれは、私の一族の問題だ」

 クルスは、反対に不満そうな表情を見せながら、言葉を返す。


 「一族?国家?そんなつまらない者に縛られているようでは、ここから先は楽しくないでしょうね。ひひひひひ」

 ユラは、そんなクルスを挑発するように笑う。


 「お前の信条には興味はない。ただ、アレを世に解き放った責任は取ってもらうぞ」

 ユラの挑発に乗らず、クルスは、くぎを刺すように語り掛ける。


 「ははあ!そちらは分かっておりますよ。ひひひ」

 ユラは笑い声をあげて応える。

 だが、その場所には既にクルスはいなかった。


 「おや?既に向かわれましたか。相変わらず気が早いお方ですなぁ」

 転移の術で既に移動したクルスに向けて、聞こえているのか、どうか分からぬままユラは独り言のように呟く。


 「まっ、セレト卿がどうなることやら。先は分かりませんからね。楽しめればいいのですがね。ふふふ」

 最後に普段とは打って変わった冷たい声で、冷笑ともいえるような笑みを浮かべたユラは、改めて街へと視線を向けた。


 あちらで放たれていた魔力の波動は、既に収まっていた。


 「時代がどう動こうと、誰がどう動こうと、私には関係がないですがね。まあ楽しませてくださいよ。ひひひひ」

 最後にいつもの様子で笑うと、そのままユラも転移の術で動き出した。

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