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【完結】魔術師は嘲笑の中を足掻き続ける ~嫌われ魔術師は、策謀と陰謀が渦巻く王国で、その嫉妬と羨望、そしてその力を聖女暗殺に利用されるが、それを受け入れ自身も利用することにした~  作者: 成吉灯篭
第一章 魔術師は嘲笑の中足掻き続ける

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第七十六章「回収と再起」

 第七十六章「回収と再起」


 「さて、どうする?」

 目の前に倒れているユラを見ながら、セレトは、二つの身体を操りながら彼女に語り掛ける。


 「いやいやいや。まさか、こんな手段を隠し持っているとは。私の計算違いでしたよ。ひひひひ」

 セレトに捕らわれ、身動きが取れない状況になりがらも、ユラは余裕を感じさせる笑みを浮かべて、セレトに応える。

 その表情には、先程までの焦りは感じられない。


 セレトがユラの隙をつき、もう一つの身体を強引に得た後、形勢は一気に逆転をした。

 ユラが術を放とうとする前に、セレトが呼び出した影の鎖が、ユラの動きを一気に封じ込めたのである。


 そして今、セレトは自身の崩れてゆく元々の身体を維持をしながら、新たに得た、偽りの身体に意識を置いている。

 このままユラを倒し、急ぎ計画を立てることの必要性を感じながら、両手に込める魔力をより強大にする。


 「おやおや。凄まじい殺気。まあ、ここは、私の負けですかねぇ」

 一時期、激昂に囚われているように見えたユラは、今は余裕を見せながらこちらへと視線を向けてくる。


 「あぁ。そのまま死んでくれ」

 そんな彼女に対し、セレトは一声を放つと基に、闇の呪術を放った。


 ボン。


 だが、魔力がユラに当たった瞬間、彼女の身体は音を立てて無数の蝙蝠へと分かれて、一気に空に飛んで消え去った。

 そんな彼女の虚をついた逃走に、セレトは、碌な対処を行えず、そのまま逃げていくユラを見送るしかできなかった。


 最も、セレトは、それをそこまでマイナスとは考えない。

 ここで、一つ、状況を打開するための手段が手に入った。

 これは、自身にとって決して悪くはない状況であるからである。


 そう考えながら、セレトは、自身が支配下に置いた、もう一つの身体と、すでに壊れかけている自身の身体の魔力のコントロールを始める。

 度重なる戦いによるダメージで、傷ついた身体を癒すため、そしてもう一つの目的のため、自身の元の身体に、支配下に置いたもう一つの身体を近づける。


 「これを天恵とでもいえばいいのかね」

 軽く呟きながら、セレトは、二つの身体を近づける。

 そして、魔力を一気に込めた。


 瞬間、二つの身体は光り、そのまま一体化をしていった。


 「まあ、使い物になるとは思えないが」

 徐々に一体化していく身体の感覚を実感しながら、セレトは呟き続ける。


 「貸していた物は返してもらってもいいだろうよ」

 戻りつつある力。

 それは、傷ついた身体を癒すだけでなく、新しい力を彼に与えつつあった。


 そして徐々に強化されていく身体を支配下に置きながら、セレトは、次の戦いへの準備を進める。


 アリアナ。

 自身の忠臣であるはずの彼女が、これほどの騒ぎが起きながらも、未だ、駆けつけていないことにセレトは違和感を感じていた。


 あのユラの事、当然に別動隊を連れてここに来ているであろう。

 そしてアリアナが、その別動隊と遭遇をしている可能性は高いであろう。

 勿論、彼女の用事が長引いている可能性や、近くに居らず、こちらの状態に気が付いてはいない可能性もあったが。

 だが、魔力の繋がりがある彼女が、こちらのピンチに気が付かずにる可能性は低いとも言えた。


 その一方、すでに王国内で反逆者とされているヴェルナードの下についていたユラが自由に使える手駒は決して多くはないはずである。

 故に、そこまでの敵は考慮しなくてもいのであろう。


 そして、ここはハイルフォード王国の影響が少ない地域である。

 逃亡先のフリーラス共和国にも近いことを考えれば、多少、強引の手段を取っても逃げ切ることは、不可能ではないであろう。


 魔力の繋がりでは、アリアナは、まだ生きているのは確かであることはわかった。

 彼女に人質としての価値があるとユラの仲間たちが考えるかどうかは分からないが、少なくとも、今のタイミングでは、切り捨てるべきではないと判断をされているのであろう。


 最も、セレトは、ユラに部下としての一定以上の価値を感じていない。

 必要以上に自身の負担となるようであれば、彼女を切り捨てることも辞さないつもりではあった。


 そのようなことを考慮しながら、セレトは次の一手を考える。


 「まあ、この力があれば、何とでもなるか」

 だが、その思考は、途中で止まる。


 もう一つの身体から奪った力。

 それは、セレトに予想以上の魔力を与えつつあった。

 そして、それは同時に、セレトに慢心と自信を与えていた。


 そう、自身が失っていた魔力の回収。

 もう一つの身体に残されていたそれは、器がユラ達に強引に目覚めさせられたことにより、より強大なものになりつつあった。


 その力が手元に戻ったことにより、今、セレトは、底知れない万能感を感じていた。


 傷を癒し、力を増幅させる。

 力の一端を取り戻した効果は、予想以上の効果を自身に与えつつあった。


 故に、セレトは、その力を感じながら、次の戦いへと思いを向ける。


 今得ている力であれば、この状況を打破できると、そしてあのリリアーナにも雪辱をできると考えながら、湧き上がる思いを抑えつける。

 そしてセレトは、アリアナの魔力の残滓が感じられる方角へと足を向け、歩き始めた。


 第七十七章へ続く

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