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【完結】魔術師は嘲笑の中を足掻き続ける ~嫌われ魔術師は、策謀と陰謀が渦巻く王国で、その嫉妬と羨望、そしてその力を聖女暗殺に利用されるが、それを受け入れ自身も利用することにした~  作者: 成吉灯篭
第一章 魔術師は嘲笑の中足掻き続ける

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幕間69

 幕間69


 「急に呼び出されて驚きましたが、こんな物を隠し持っていたとはねぇ。くくくく」

 ユラは笑いながら、目の前のリオンに語り掛ける。


 「うまく使えば、それなりに有用でしょう。ただ少し癖がある代物でね。貴方の力を借りたいのですよ」

 そんなユラ対し、リオンも笑いながら応える。


 「それで、こいつをどう使うんだい?」

 そう言いながらユラは、視線を檻に閉じ込められたそれに移す。


 それは、ユラに気づいていないのか、ただブツブツと声のような物を発しながら固まっている。


 「単純な話、こいつは眠っているような状態でしてね。それを目覚めさせたいのですよ」

 リオンは、ユラの言葉に応えながら、目の前の、それに視線を向ける。


 「面白そうな道具だが、機能するのですかね。ききき。はずれのゴミを掴まされたなんてオチは嫌ですからねぇ。ひひひひ」

 ユラはリオンの言葉に若干の疑問の色を交えながら、ただ同時にその探求心を隠そうともせず言葉を発する。


 「さあどうだか。だが、この魔力、少なくとも全くのスカということもないでしょう」

 そう言いながら、リオンは檻の中におもむろに銃を向けると数発打ち込む。


 「ぐぎえがうぇあが」

 銃を撃ち込まれたそれは、この世の物と思えないような叫びをあげる。

 同時に、その周囲に黒い霧が立ち込める。

 霧は、周囲に展開された結界で塞がれるが、その霧が触れた床は音を立てて溶けていく。


 「へぇ。使用者の魔力がまだ残っているのかい?面白い反応だね。くくく」

 ユラは、その反応を興味深そうに眺める。


 「えぇ。セレトが使っていただけあって、その力の一端を見ることができる面白い道具ですよ」

 そう言いながら、リオンは、ユラに再度顔を向ける。


 「さてセレトが使ったシェイプシフター。彼の力の残滓を宿したこいつをうまく使う方法はありませんかね?」

 そして、ユラに笑いながら再度問いかける。


 「ぎぎぎ…」

 その後ろでは、檻の中でそれ、黒い霧を周囲に漂わせた、ただの肉の塊がどこから不気味な声を立てている。


 「ふーん。意識はあるようだけど、身体を構成するほどの力は残っていないのか。ただ術者の魔力の残滓でその特性は残っていると」

 問いかけられたユラは、目の前の肉の塊を眺めながら、ブツブツと呟き続ける。


 「意識?あぁ残っている魔力のせいか、変な反応をしているようですね」

 そんなことには興味もないのか、どうでもよさそうにリオンは応える。


 「まあ、これを目覚めさせる方法は簡単だよ。何らかの人格を形成するための方向性だけ植えつけてやればいい。そうすれば勝手に自我を生み出し動き出すさ」

 そんなリオンの反応を見て、ユラは、少々呆れたように考えを口にする。


 「方向性?」

 だが、リオンは、そんなユラの口調の変化には反応を示さず、ただ彼女が発した答えに反応を示す。


 「大したことじゃないよ。魔力で生み出した疑似的なものでもいいし、適当な罪人の魂を喰わせてやってもいい。少しのきっかけがあれば、後は残った魔力を使って勝手に機能し始めると思うよ」

 そういいながら、ユラは、注意深く目の前の肉の塊を観察する。


 「元々シェイプシフター自体、埋め込まれた魔力で動き出すような単純な代物だからね。そんな複雑なことは必要ないさ」

 そしてユラは、興味は失せたと言わんばかりに檻から離れる。


 「なるほどね。だが、それではつまらないね」

 だがリオンは笑いながら、ユラの提案を拒否する。


 「つまらない?おやおや。ならどう使うんだい?意識を宿させないことには、動くこともできない木偶の坊だよ。こいつは」

 そんなリオンに対しユラは、率直な疑問を問いかける。


 「まあ、それはおいおい考えましょう。せっかく裏から手をまわして手に入れた素材です。有効活用をしなければね」

 リオンは、そんなユラの問いに答えることもなく、自身の白髪を弄りながらシェイプシフターに視線を向ける。


 「裏から手をまわしてねえ?ひひひ。いやはや、セレト卿も大変だ。こんな奸臣を部下に持っていたとはねぇ」

 ユラは、笑いながらリオンに語り掛ける。


 「どうも彼には信頼をされていなかった模様ですがね。おかげで、彼に気づかれないように、このシェイプシフターを仕入れさせるのは苦労しましたよ」

 そんなユラに対し、リオンは飄々と答える。


 「おや、これは、貴方の仕込みだったんですか?確かに普通のシェイプシフターとは違うようですが」

 そう言いながらユラは、目の前のシェイプシフターを指差す。


 「何こいつは特別製でね。一度吸った魔力を死んだ後も長期間保持できるタイプなんですよ。こいつを裏工作で、あいつの目につくように商業ルートに乗せるのは苦労しましたよ」

 リオンは、そんなユラに自慢げな表情で説明をする。


 「なるほど。それを彼に使わせたと」

 先を促すようにユラは、リオンの言葉に適当に相槌を打つ。


 「えぇ。結果、彼の力を一部なりとも持った駒が一つ手に入ったというわけですよ。まあ本当は、こいつで聖女様を予定通り殺してくれれば良かったのですが、それは色々と望みすぎですかね」

 そう言いながら、リオンは、ユラに雄弁に語る。


 「なるほどねぇ。では、私にとってこれは、望みすぎですかねぇ?」

 そんなリオンに対しユラは、笑いながら語り掛ける。


 「?どういう意味ですかね?」

 急に語り掛けられたユラの言葉の意味を理解できず、リオンは、笑みを浮かべたまま問い返す。


 「いえいえ。貴方がフォルタス卿とのパイプを欲してるのと同じよに、私には、私の考えがあるのですよ。くくく」

 ユラは、笑いながらリオンに言葉をかける。


 「フォルタス卿?!どういう意味ですか?」

 予期せぬ名前を急にぶつけられたことにより、リオンは、一瞬動揺をする。


 「サモンマジック」

 その動揺の瞬間をつきユラは、呪文を口にする。


 「?!何をする?」

 ユラの行動に思考が追いつかないリオンは、驚愕の叫びをあげる。


 「何、貴方の願いを叶えてあげましょう。これを目覚めさせるんですよ」

 笑いながら、ユラはシェイプシフターに魔力を注ぐ。


 「やめろ!こいつを勝手に動かすな!」

 急な展開に混乱を見せながら、リオンは叫ぶ。


 だが、その叫びも空しく、檻の中にいる肉塊は、徐々に形を変えつつあった。

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