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【完結】魔術師は嘲笑の中を足掻き続ける ~嫌われ魔術師は、策謀と陰謀が渦巻く王国で、その嫉妬と羨望、そしてその力を聖女暗殺に利用されるが、それを受け入れ自身も利用することにした~  作者: 成吉灯篭
第一章 魔術師は嘲笑の中足掻き続ける

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第六十九章「黒き脱兎」

 第六十九章「黒き脱兎」


 「セレト様!」

 アリアナの声と共に、彼女が放った魔術が周囲に拡散される。


 呼び出された影は複数の狼の姿を形成し、一気にリリアーナ達に襲い掛かる。


 「あらあら。狂暴ね」

 リリアーナは、笑いながら襲い掛かる影の狼達を避けるようにセレトから距離をとる。

 同時に、セレトの身体に埋め込まれた短刀への魔力の供給が止まり、身体に刻まれた呪印の進行が止まる。


 「逃がすか!」

 アリアナは、叫び、同時にその声に反応した影の狼達は、その身を実体を持つ者では不可能な動きで強引に捻じ曲げ、再度リリアーナに飛び掛かる。


 「無駄よ!」

 だがリリアーナは、体勢を立て直しながら魔力で生み出した複数の光の矢を放ち、迫りくる影の狼達を全て撃ち落とす。


 「リリアーナあああ!」

 だが、その隙をつきセレトは、一手を放つ。


 既に残り少ない現在の魔力で足りない分は、自身の血を注ぎ込み強引に媒体を生み出し発動させた闇の術、暗黒の手。

 呪怨が込められたその手は、蘇生途中の自身の肉体の代わりに、彼の気持ちを反映するように、彼女の白い首を絞めようと一気に伸びていく。


 「あら?その手は何?」

 だが、その必死の一撃は、リリアーナの一言共に霧散する。


 「?!なぜ?」

 魔力を使い切った反動により身体中から力が抜けていきながら、明らかにそれ以上の負荷を感じて倒れこみながら、セレトは驚愕の声を上げる。


 残り少ないと魔力と言えども、血を媒体に発動したこの術は、そう簡単に防げるものではないはずであった。

 だが、その一撃をリリアーナは、魔力も何も使わずに、ただ一つの言葉だけで止めたのである。


 「離れて下さい!セレト様!」

 アリアナは、叫び声をあげながらリリアーナに向けて再度影の狼達を放つ。


 「あら危ない」

 リリアーアは、笑いながらアリアナが放った影の狼達の攻撃を光の壁で防ぐ。


 「ちぃ!」

 アリアナは、舌打ちを一つしながら、セレトとリリアーナの間に割って入り、リリアーナと対峙する。


 「平時の貴方ならまだしも、弱っている今の貴方程度ならどうとでもなるわね」

 笑いながらリリアーナは、アリアナに余裕を感じさせる態度で語り掛ける。


 「貴様!我が主に何をした!」

 リリアーナの言葉にかぶせるように、アリアナは怒りを見せながら言葉を放つ。


 そんな二人のやり取りを見ながら、セレトは、徐々に重くなっていく身体に力を入れて体勢を整えようと努力する。

 だが、そんな努力も無駄であるかのように、セレトの身体は、内から一気に力を失っていく。


 「あら?一つ契約を結んだだけよ。契約を破ろうとしているから、動けないだけじゃないの?」

 倒れているセレト、それを守るように立ちはだかるアリアナ、この二人に笑みを向けながら、リリアーナは、語り掛けてくる。


 「契約?」

 その言葉に、セレトは一つの可能性に辿り着く。


 「そう。隷属の契約。呪印は不完全だけど、貴方をある程度縛ることは十分にできるわ」

 リリアーナは、満面の笑みでこちらに応える。


 その言葉にセレトは怒りを感じながらも、同時にその頭脳は、周囲の状況を冷静を受け止めつつあった。


 リリアーナが放ったスレイブは、対象に従属の呪印を刻み付け、相手を従えさせる術である。

 その術の影響であれば、確かにセレトがリリアーナを相手にうまく戦えないのも確かである。

 だが、途中で呪印の進行を止めたが故か、彼女の言葉の通りは、必ずしもセレトを完全に縛り付けていないのも確かであった。


 「アリアナ!退くぞ!」

 アリアナも万全ではなく、自身の魔力も尽きかけている上、リリアーナに動きを縛られている。

 状況は不利。

 だからこそ、セレトは逃げの一手を選択する。


 「はい!」

 その言葉が終わるか終わらないかの内に、アリアナは、地面に向けて黒い玉を落とす。


 その玉は、地面に当たると同時に一気に弾け、周囲に黒煙をまき散らす。


 ただの目くらまし。

 だが、魔力も失っているリリアーナ相手には、それなりの効果が見込めるはずであった。


 「あら?待ちなさい!」

 リリアーナの声が響く。

 同時に、セレトの身体に刻まれた呪印がその声に反応し、身体の動きが鈍る。


 「はっ!俺は、誰にも縛られない!どこまでも、足掻き続けてやるさ!」

 だが、セレトは身体中の力を足に込め、無理やり先に進む。


 不完全でありながらも身体に刻まれた隷属の術が、魔力も尽き、耐性を失ったセレトの身体の動きを支配をしようとするが、それを強引に撥ね退けながらセレトは身体を動かしこの場から逃れようとする。

 そしてリリアーナからの距離が離れる程、呪印の力も弱まり、セレトの身体を縛る力も弱まっていく。


 「逃がさないわ!」

 リリアーナは、そんなセレトに近づこうと距離をつめる。


 「無駄よ!」

 だが、そんなリリアーナに対しアリアナが魔力を込めた黒い弓を放つ。

 影の弓。

 術式としては、低級のものであったが、すでに手傷を負ったリリアーナは、その術への対応が一瞬遅れる。


 「捉えよ!」

 アリアナの言葉と共に、彼女が放った影の弓は、拡散しリリアーナの影へと突き刺さる。


 「?!こんな低級の術に!」

 影の弓により、影を縛られ、身体の動きを封じられたリリアーナは怒りの声を上げる。


 耳に入るその声に応えることもなく、セレトは先に進む。


 「セレト様、私の身体を媒体にゲートをお開きください!」

 そんなセレトに対し、アリアナが語り掛けてくる。

 だが、その身体は、先程の戦いと、既に開いたゲートの影響で限界であることは明らかであった。


 「無理をするな、アリアナ。今はこのまま逃げるぞ」

 ここで、自身に残った最後の部下であるアリアナを失うのは得策ではない。

 故にセレトは、そんなアリアナの提案を断る。


 「どこまで逃げましょうか?」

 不安そうな声でアリアナは問いかけてくる。


 「そうだな」

 そんな彼女に応えながら、セレトは少し考え込む。


 ハイルフォードという場所での立身出世のためだけに戦い抜いた思い。

 だが、今やその国は捨てた。


 地位も名誉も失い、残されたのは、この身と多少の財宝のみ。

 最も、手持ちの財産があれば細々とであれば、平穏な暮らしを甘受することはできるであろう。


 そんな生活を一瞬考え、すぐに頭から打ち消す。


 まだ全てを失ったわけではない。

 リリアーナに刻まれた呪いこそあるが、傷を癒せばまだ戦い抜くことは充分に可能である。


 「気ままに行くぞ。何とかなるだろう」

 そう自分に言い聞かせるようにセレトは応えた。


 リリアーナが刻んだ呪いは、まだ完璧なものではない。

 その隙をつき、彼女を倒すというチャンスもまだあるであろう。


 「仰せのままに」

 アリアナの答えを聞きながら、セレトは、先へと急いだ。


 第七十章へ続く

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