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【完結】魔術師は嘲笑の中を足掻き続ける ~嫌われ魔術師は、策謀と陰謀が渦巻く王国で、その嫉妬と羨望、そしてその力を聖女暗殺に利用されるが、それを受け入れ自身も利用することにした~  作者: 成吉灯篭
第一章 魔術師は嘲笑の中足掻き続ける

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幕間55

 幕間55


 「けけけけ」

 笑いながら、目の前のアサシンが飛び掛かってくる。


 「無駄だ!」

 ロットは、そんなアサシンの短刀を叩き落とし、そのまま一撃を入れようとする。


 「おっと危ない。危ない」

 そう言いながら、アサシンは、その身体をひねり攻撃を避ける。


 「いやはやはや。貴方がここに来る予定はなかったんですが、まあ、来てしまったものは、しょうがないですね」

 アサシンは、笑いながら、こちらをろくに見ないで色々と語り続ける。


 「死ね!」

 そんな彼女に向けて、ロットは、思いっきり刀を振りぬく。


 その一撃は、目の前のアサシンを捉える。


 だが、アサシンを捉えた一撃は、そのまま空を切る。


 「あらら危ないですね。さて、どうしますか」

 そして、ロットの一撃から離れた場所に影のように現れたアサシンは、こちらを見ながら独り言を述べ続ける。


 そんなアサシンンに向け武器を構え、ロットは、その様子を伺い続ける。

 敵の動きこそ素早いが、反応できないほどではない。

 こちらに攻撃を仕掛けてくるタイミングで、一撃を浴びせることは、十分に可能であろう。


 「おやおや。その眼、何か企んでおりますかね?」

 そう言いながら、アサシンは、再度武器を構えなおす。


 来るか。

 そうロットの思考がよぎった瞬間、アサシンが飛び掛かってきた。


 素早く、されど一直線にこちらに進んでくる一撃。

 それを、ロットは、自身の刀で受ける。


 ガキン。


 お互いの刃と刃がぶつかり合う。


 そのまま、ロットは軽く刃を引き、無防備な相手に切り掛かる一撃を放つ。


 もちろん、その一撃は、当然のように避けられる。


 そのままロットは、体勢を崩し、相手の一撃を誘う。


 そして、そんなロットの隙をつき背後に現れた殺気と気配。


 「そこか!」

 その気配に向けて、ロットは、必殺の一撃を叩きこむ。


 相手を完全に捉えた一撃。


 「無駄ですな。けけけ」

 だが、その一撃は空を切り、ロットが想定いた方角とは反対側からアサシンの声が聞こえる。

 同時に、そちらから、殺気と共に、攻撃の気配がする。


 読み違えた。

 あるは、読み負けたというべきか。


 いずれにせよ、完全に攻撃を避けられ、こちらは隙だらけの状況。

 敵の放つ一撃を、止めることも避けることもできないであろう。


 そうロットが覚悟をした。


 「お、や?」

 だが、その刃は、こちらに届くことはなかった。

 慌てて振り向いたロットの目の前で、アサシンの身体が、胴の真ん中で、上下に真っ二つに分かれていた。


 「もう、動けないと思ってたのですが、読み違えましたか…きき」

 そういいながら、ロットの目の前で、アサシンは、黒い砂のように崩れ落ち、その姿を消した。


 「甘いな」

 そう言いながら、アサシンに止めをさした男、ユノースが立ち上がりこちらを見ている。

 その手には、アサシンを倒した刀が握られている。

 最も、その身体にはいくつか負傷が見られ、万全の状態ではないことは明らかであったが。


 「兄さん、それ以上近づかないでください」

 体制を立て直したロットは、ユノースに武器を向け、その動きを牽制する。


 こちらの命を助けたのは事実であるが、ユノースは、自身の兄であると同時に、自身の敵である。

 そしてここは、自身の敵であり、目の前のユノースの主であるヴルカルのテリトリーである。

 こちらの敵か味方が分からない状態で、無条件に信じることは、到底不可能であった。


 「俺を追ってきたのか?それとも、俺の主か?」

 ユノースは、笑いながらロットに声をかけてくる。

 傷を負っており、身体を動かすのも辛そうであったが、その声は、十分な生命力に溢れているように思えた。


 「ここは、どこなんですか?そして、先程のアサシンは何者なんですか?」

 矢継ぎ早に、質問を繰り出す、そして、その途中で一瞬言葉に詰まるが、ロットは、再度息を吸い、質問を続ける。


 「ユラと争っていたようですが、兄さんは、誰の味方なんですか?」

 兄が、どちらの味方であるか。

 そして、自身についてくれるのか。

 どこか期待を込めて、ユノースは、言葉を発していた。


 「さあね。ただ私は、何かを語るつもりはないよ」

 だが、その期待は、ユノースが返した言葉によって崩れ去る。


 「まあ私の主は、ヴルカル様のままさ。さて、お前は、なんでここにいるんんだい?」

 そう言いながら、ユノースは、武器を構えながら、こちらとの距離を詰めてくる。


 「止まってくれ!」

 そう言いながら、ロットは、手に持つ武器に力を入れる。

 だが、目の前に迫ってくる、その武器を振るうことはできずにいた。


 「なぜ?」

 だが、ユノースは、一言冷たく言い放ち、刀を振るう。


 距離は、まだ十分にある。

 兄弟でもある。

 だからこそ、油断をしていた。


 だが、そんなロットの身体を、ユノースが放った飛ぶ斬撃。

 アサシンを切り裂いた一撃が襲い掛かった。


 防げる。

 そう思ったロットの身体を斬撃は容赦なく切り裂いた。


 兄弟だからこその油断。

 いや、ロットが見たこともない一撃。

 放たれた方角ではなく、その死角から放たれた二撃目。


 その二撃目により、切り裂かれた自身の身体。

 自身が知らぬ、兄の一手。


 「悪いな」

 薄れゆく意識の中、ロットの耳には、ユノースの声が聞こえた。

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