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【完結】魔術師は嘲笑の中を足掻き続ける ~嫌われ魔術師は、策謀と陰謀が渦巻く王国で、その嫉妬と羨望、そしてその力を聖女暗殺に利用されるが、それを受け入れ自身も利用することにした~  作者: 成吉灯篭
第一章 魔術師は嘲笑の中足掻き続ける

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幕間51

 幕間51


 「これは、ヴルカルの差し金?それともユラによるものかしら」

 そう独り言を口に出しながら、リリアーナは、服をはたき汚れを飛ばす。


 セレトとヴルカルの戦いに介入しようと、隙を伺っていたリリアーナだったが、逆にユラの手によって、強制的にその距離を離されることとなった。


 「そういえば、この場所はヴルカルのセーフハウスだったわね。ある程度の干渉は自由にできて当然の話ね」

 そう呟き続けるリリアーナの目の前には、黒色の炎の壁が立ちはだかり、こちらの行く手を防いでいた。


 「こっちには、来るなってことかしら?それとも、貴方に私を殺しなさいって言っているのかしらね?あの人たちは?」

 そう話しながら、後ろを振り向いたリリアーナの視線の先には、アリアナがこちらを睨みながら立っていた。


 アリアナの手には、込められた魔力。

 既に戦闘態勢に入ったアリアナの様子を見ながら、リリアーナは、疲れた様な顔でため息をつく。


 「それで貴方は、どうしたいの?」

 リリアーナは、ぼやきながら武器を構え、アリアナとの戦闘に備える。


 「我が主の命は、ただ一つ」

 アリアナは、言葉を発しながら、徐々に魔力を強めていく。

 同時にリリアーナに向けられる殺気も強くなっていく。


 「聖女の命を、あの方の手に!」

 叫ぶように、アリアナは声を絞り出す。

 同時に、アリアナの両手から大量の魔力で生み出された短刀が、リリアーナに向けて飛び出してくる。


 刃渡りは短いものの、アリアナが込めた魔力によって、何らかの呪術を仕込んでいるであろう、その刀を、その身で受けるわけには行かない。

 そう考えたリリアーナは、刀を抜きながら、一気にその身をよじりながら、回避行動に入る。

 広範囲にばらまかれた短刀全てを避けることはできないが、こちらに向かってきた複数の短刀を、リリアーナは、自身の刀を振るい一気に叩き落とす。


 そのままリリアーナの視線には、その先にあるアリアナを捉える。

 アリアナがこちらを見つめ返し同時に次の術を放とうとするのを視界に入れたまま、リリアーナは、一気に距離を詰める。


 ウォン。

 アリアナの魔力が空間を歪める音を響かせるとともに、数体のスケルトンが現れ、各々の武器でリリアーナに襲い掛かる。

 このまま突き進めば、一気に複数の相手に囲まれることとなるであろう。

 右か左か、いずれにせよ相手の襲撃を逃れるため、攻め方を変えるのが定石であろう。


 「邪魔!」

 だが、リリアーナは、そんなスケルトン達の動きを見切りながら、そのまま一気に切り伏せながら、アリアナへと突き進む。

 そんなリリアーナの攻め手に対し、アリアナが驚愕をその表情に浮かべるのが見える。


 魔術師にとって、リリアーナのような剣士相手には、距離をとって戦うのが定石である。

 それゆえ、アリアナは、手っ取り早い壁として、スケルトンを召喚したのであろうが、リリアーナがそれに乗る理由はない。

 多少のリスクを覚悟しての突撃こそが、アリアナを最も追い詰める一手と考え、距離を詰めながら、スケルトンへと刀を振るう。


 バサリ。

 振られた刀は、そのまま二体のスケルトンを切り倒す。

 そんなリリアーナに向けて、残りの二体のスケルトンが手に持った武器で一気に切り掛かってくる。


 「はぁ!」

 だがリリアーナは、返す刀に魔力を込めて、一体のスケルトンをその武器ごと、一気に一刀両断をする。

 そして同時に切り掛かってきたもう一体の斬撃は、魔力で生み出した簡易的な光の盾によって防ぐ。


 「ちっ!」

 魔力を込めながら、次の魔術の詠唱を始めているアリアナの舌打ちが響く。

 スケルトンに足止めをさせて、一気に大技を放つつもりであったのだろうが、その目論見が崩れたことによる苛立ちが見える。


 「そこ!」

 リリアーナは、そのまま一気に勝負をつけるべく最後の一体のスケルトンに向けて刀を振るう。

 このままアリアナを守る最後の壁を倒し、無防備な彼女の首を刎ねるつもりであった。


 ガキン。

 だが、リリアーナが放った斬撃を、スケルトンは、その手に持った武器で防ぐ。

 いや、その感覚は、明らかに先程切り捨てたスケルトンとは異なる、強い力を感じる。


 罠。

 一体だけ、通常より強力な個体を混ぜて置き、こちらの隙をつき動きを止める。


 「死ね!」

 予想外のスケルトンの抵抗に驚き、動きが止まったリリアーナに対し、アリアナが完成した術を放つ。

 瞬間、大量の黒い腕が呼び出され、リリアーナの斬撃を止めたスケルトンを貫き、そのまま一気にリリアーナに襲い掛かる。


 「光よ!」

 リリアーナは、体勢を立て直しながら一気に光の魔力を開放する。

 同時に彼女の周辺に光の防壁が一気に複数展開される。

 だが、その防壁も次々アリアナが呼び出した黒い腕によって破壊されていく。


 「ちぃ!」

 今度はリリアーナが舌打ちを響かせながら武器を振るう。

 リリアーナの魔力を込めた光の刃は、アリアナの黒い腕を次々と弾いていく。

 最も、魔力の塊となっている黒い腕は、リリアーナの斬撃でも消滅せず、弾かれながらも、再度軌道を修正して、こちらに攻撃を加えてくる。


 「あははははは!ほらほら!さっさと死んじゃいなさいよ!」

 アリアナは笑いながら、更に魔術を込めて追撃、大量の黒色の針をこちらに向けて放ってくる。


 一見すると、そこまでの殺傷性はなさそうな針による攻撃であるが、アリアナの魔力が込められた一撃である。

 少しでも触れないでいるに越した事はない。

 だが、複数の黒い腕による四方八方からの攻撃が、確実にリリアーナの動きを封じ、打開策を打たせようとしなかった。


 「ほらほら!もうあきらめなさいよ!」

 アリアナは、笑みを浮かべ続けながら、リリアーナに向けて攻撃を続ける。

 その魔力は、切れる様子はない。

 このままでは、こちらがジリ貧のまま潰されてしまうであろう。


 だが、リリアーナは、このまま終わるつもりはなかった。

 アリアナの攻撃をいなし、防ぎながら、隙を伺い続ける。


 「しぶといわね!」

 そんなリリアーナに対し、アリアナは、徐々に苛立ちを見せ始める。


 「単調なのよ!あなたの攻撃は!考えなしなところは、師匠にそっくりね!」

 リリアーナは、攻撃を防ぎながら、苛立ちを見せ始めてきたアリアナに対し言葉を返す。


 「っ!馬鹿にするなあ!」

 瞬間、アリアナは一気魔力を込める。

 同時に黒い腕の動きが一瞬止まり、その後、様々な方向に広がり、そのまま一斉にこちらに襲い掛かってくる。


 「そこ!」

 だが、その瞬間、一瞬アリアナの攻撃が止まる。

 その隙をつき一気にリリアーナは動き出す。


 「あっ?え?」

 瞬間、アリアナは、間の抜けた表情でこちらを見る。


 グサリ。

 瞬間、アリアナが魔力を放つ前に、そのままリリアーナの刀は、アリアナの左胸を貫いた。


 ドカアン!

 ワンテンポ遅れ、リリアーナが先程まで立っていた場所に、大量の黒い腕の一撃が加えられる、

 だが、その黒い腕も、アリアナの魔力が切れたことにより、一気に消滅をしていく。


 「ふぅ」

 その様子を見ながら、リリアーナは一息をつく。


 終わってみれば、そこまでの傷も負わずに勝つことができたものの、一歩間違えれば、そのままこちらが負けていただろ。

 だが、そんなセレトの片腕、彼の数少ない手駒を倒すことができた。

 そのことに対する達成感と、安堵を感じながら、リリアーナは、武器を下す。


 「さて、出口はどこかしらね」

 そう言いながら、リリアーナは、歩を進めることにする。

 まだセレトとヴルカル達が残っているが、今は、ここから脱出することが最優先事項であろう。

 そう考え、リリアーナは、この場から離れることにした。


 もし彼女が、その時少しでも後ろを振り返れば、もしくは、倒した相手の身体を調べれば、その身体に魔力がまだ残っていることに気が付けたであろう。

 倒れたアリアナの身体からは、未だ大量の血が流れ続けていたが、同時にその魔力によって不気味に鼓動を続けていた。

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