Sukiyaki
すき焼き、日本発祥の料理で牛肉の料理としてポピュラーな料理である。
浅い鉄製の鍋を火にかけ、よく温まったところで、牛脂を鍋に入れ菜箸で脂を鍋に馴染ませる。
すると部屋の中には脂の焼けるうまそうな匂いが広がった。
その鍋に斜め切りしたネギを入れ炒める、こうすると脂にネギの香りが移って、美味しさをより引き立てる。
ネギを返しながら火が通るまで炒めたら、予め作っておいた割り下をネギが浸るくらい鍋に入れる。
割り下から立ち上る香りが食欲をそそる。
「その肉は牛か?」
鍋の目の前に腰掛けてる男は待ちきれない様子で問いかけてきた。
「ああ牛だ、さしは少ないがいい肉だ、保証するよ」
立ったまま料理している男は、皿から大きめに切り分けた肉を鍋に入れる。
煮立った割り下と肉の匂いが部屋中に充満する。
「もういいぞ、火が通り過ぎるとせっかくの肉が硬くなるからな」
座っている男は鍋から肉をつまみ上げ、左手に持った玉子が入った器に肉をくぐらせ、口に運んだ。
「旨い……」
男は肉を噛みしめながら呟いた。
料理している男は、続けて肉を鍋に入れた、その時入り口で鈍い爆発音がして、ドアが乱暴に開かれた、それと同時に重武装の兵士が部屋に乱入してきた。
「手を見えるように上げて壁側に移動しろ」
兵士はガスマスクをしたまま命令してきた、そして構えているサブマシンガンを壁の方へ動けと言うように動かした。
肉を食べていた男は、椅子から滑り落ちて床にへたり込んでいる。
「ポケットから手を出して壁側に移動しろ」
続けて兵士が命じる。
料理をしていた男はゆっくり部屋の中を見回していたが、その視線が止まった。
視線は一人の女が部屋に入ってくるのを捉えていた。
「ひどい臭いね、こんな臭いの中で肉をたべるとはね」
入り口から入ってきた女は鼻を手で押さえて鍋の中を覗いた。
「あなたペイルホースね、今はネルソン ハインドだったかしら。とにかく殺牛および死体損壊、食料基本法および食肉の現行犯で逮捕するわ」
女は二人の兵士の間に立ってペイルホースと呼ばれた男を睨みつけた。
「ふ、この非肉食主義者め」
「今の時代、肉食を好む人間がいる事自体信じられないわ」
「肉は食わないか……だがお前らが食ってる、グリーンラブが何で出来てるのか知ってるか?」
女はこの質問で、明らかに顔色を変えた。
ペイルホースはポケットの中の左手で握っていたスイッチを入れた。
どーーん
入り口で大きな爆発音がして、爆風が部屋に流れ込む、兵士たちが怯んだ隙にペイルホースは後ろの窓から外にとびだした。
「なにしてるの、早く撃って」
サブマシンガンが窓に向かって火を吹いたが、ペイルホースの姿は、窓の下の川に消えていた。
「早く無線で連絡を取りなさい」
「この部屋には無線遮断装置があるようで、無線が使えません」
「なら早く追いかけなさい」
兵士は入り口の方へ走ったがすぐ立ち止まった。
「ダメです、廊下が無くなっています、入り口をカバーしていたやつもやられたようです」
女は窓に駆け寄って眼下の川を見た。だがもうそこにペイルホースの姿はない。
「まんまと逃げられたようね、でも次は必ず捕らえてあげるからね」
女は悔しそうに呟いた。
極端な菜食主義と動物愛護の為に肉食は禁じられた。
そんな世界の話です。
本当は連載しようと思っていた作品のプロローグなんですが、現在根性がありません。
色々片付いたら続きを書くかも。