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並行世界  作者: Rui
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監禁、そして遭遇

教室に戻ると何もなかったかのようないつも通りの日常が待っていた。本当に何もない、普遍的な日々。でも私の心には先ほどの会話と、最後の高杉くんの笑顔が離れなかった。考えるのをやめ眠ろうとしてもまぶたの裏では映画館のように映像が流れてくる。なんでなんだろう。そう思うけれど、何に対して思っているのかはわからない。

学校も終わり、いつも通りバイトに向かう。バイト先は家から10分ほどの小さな喫茶店。雰囲気がよくそこそこに人が入るため無駄なことを考えることなく集中できる。そんな空間が今はとても恋しかった。しかしそんな日のバイトは時間が過ぎるのが早い。時計を見るともう8時過ぎ。9時に閉店のため、この恋しかった時間も終わりを告げる。「お疲れ様でした〜。」そんな言葉を残し私は喫茶店を出る。雨はやみ、空を見上げると小さな星たちが熱心に街をを照らしている。きっと一番輝いている親方に逆らえないのだろう。まあその親方は悪代官のように他人の力で輝いているだけなのだが。

「おい。」男性の太い声が耳に飛び込んできた。不意に飛び込んできたその声は嫌な予感をさせるには充分すぎた。私は走った。振り返ってしまったら何もかもが泡になる。そんな漠然とした思いを胸に走った。家まであと200メートル。なんとか、なる。

目を覚ますといつもの白い天井は見えなかった。見えたのは朝に見た金城くんの顔だけ。周りは暗い。金城くんの顔が見えたのは彼が吸うタバコの火とスマホをいじっているおかげだ。

「やっと、起きたな。」彼はとても小さくそう呟いた。

「ここはどこなの。」自分でも驚いたが、こういう状況に陥ると本当にこう呟くらしい。

「俺の家のガレージだよ。」小さい声だ本当に。

「なぜ、私をこんなところに監禁してるの?」不思議と彼に対しての怖さはなかった。あったのは不思議な気持ちそれだけで、自分が正気ではないのだろうと冷静な自分が判断を下している。

「話がある。お前は話せそうな人だからな。」

「話せそうな人?どういうことなの?」疑問しか湧かない。

「生きていて違和感って感じらことは、ないか?なにか、小さなことでもいいんだ。」彼は真剣にこちらを見つめている。

「違和感なんてたまにはそりゃ感じるよ。これ前にもあったことある状況だ、とかでしょう?」やはり私は冷静だ。自分に驚く。

「それはデジャヴだ。」ああ、彼も冷静だ。

「じゃあ、何や違和感って。言ってみなさいよ。」私はなぜか強気になってそう聞いてみた。

「例えば、砂糖は甘いか?」

彼はどうしてしまったんだろう。砂糖が甘いはずないだろう。バカにもほどがある。砂糖はしょっぱい。

「何言ってんのよ、砂糖は甘いわよ。」私はこれには冷静でいられなかった。心と頭が連動していない。頭では砂糖はしょっぱいのに、口から出た言葉は甘いである。やはり私は今冷静ではない。

「やはりあんたは変わって、ないな。」彼は真剣なはずなのに少し笑みを浮かれている。

「あ、今のは間違えたの。なんか勝手に口が動いたっていうか。甘いわけないのに。」私はそう言いながらも何か違うって思う心がいる。そして頭に浮かんだ言葉が、違和感。

「あんた、今違和感でいっぱいじゃないか?」

彼の言葉は的を射ている。ど真ん中を射ている。

「なあ、並行世界って信じるか?」

「並行世界?パラレルワールドってやつ?そんなの信じるわけないじゃん。」彼は真剣なはずなのにアホなことを言う。

「まあ、だよな。だが俺は信じている。信じているというか、存在を知っている。」

「存在を知っている?なによ、あなたその世界から来たっていうの?」彼の言葉を受け取った私は少し嘲笑まじりの返しをした。だが、少しなのだ。

「認識さえすれば、世界は無数に存在する。」

「オカルト好きなの?そんなこと聞かせるために私を監禁してるの?」私はもう話の先が見えなくてイライラしてきた。

「あんたは、この世界の住人じゃない。今はそうだが、元は違うんだ。」

本当に彼の頭は壊れている。なにを言っているのだろう。

「意味がわからない。砂糖の話されて、それが違和感があったことは認める。加えて私はこの世界の住人じゃないって?どんな飛躍のしかたよ。金城くん、あなたおかしいわよ。」

「ちっ。話せるやつかと思ったけど、そんなもんかよ。」彼の顔は真剣からもう不満に切り替わっている。

「帰っていいよ。でもこれから違和感が増えるだろうから、もし違和感を無視できなくなったらまたここにこい。水曜の夜、必ず俺はここにいる。」この人は一方的すぎる。夜道で女性を襲い、監禁し、オカルト的な話を聞かせ、私に帰れという。 「あなた、帰らせて、警察に言ったらどうするとか考えないの?」

「そんなこと言う奴は、警察に言わないだろう?」鋭い。私に言うつもりは全くない。なぜなら襲われてもいないし、私の心が彼の話を口外してはいけないと断定している。朝にクラスの女性を襲った彼に対する感情としてはこれは違和感以外のなにものでもないのだが。

「だけど、高杉には、絶対言うな。それだけは約束してくれ。お前の身も危ない。」

「なんで私の身が危ないのよ。高杉くんは優しい人だよ。」でも私は、私の心は高杉くんに言う気は無いようだ。なぜだろう。

「まだ、言えない。だが、次に会う時にはきっと言う。」

そう言い、彼はガレージを出て行ってしまった。私も彼の出て行った方に2分ほど遅れて向かうが、彼はすでにいなかった。そしてあがったはずな雨はまた降り出していた。こんないい天気なのにあんなオカルト的な話を聞かせるなんて。でも雨の音は一切聞こえなかった。こんな土砂降りなら聞こえてもいいはずなのに。彼の話に夢中になっていた?

「やっぱり私、正常じゃなかったんだなあ。」そう雨の世界に語りかけ、私は藍色の騎士と一緒に家に向かう。

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