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雲の下  作者: ツミキ
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4.宝石

まず二人は塊のいた一番底の場所を見てみる事にした。

塊の通った跡は瓦礫が無くなって通りやすくなっていのでそこを進んだ。

クミナは走って向かっていったが、サザリカはゆっくりと滑り降りていった。

「うわーすごい!」

先に辿り着いたクミナが塊の居た付近を見て声を上げた。

サザリカは滑り終わると駆け足で向かう。

クミナの見ていた場所を見るとそこにはキラキラと光る物が埋まっていた。

ルビー、アメジスト、サファイア、トパーズなど色とりどりの宝石があった。

オパール、ヒスイ、ダイヤモンドなども見える。

ぱっと見た感じでも40個程見える。

「こんなもを貯めこんでたとはねえ」

サザリカが砂ごといくつか拾い上げる。

手のひらで宝石が転がる。

「宝石なんて初めて見たねえ」

クミナはしゃがみ込んでルビーをつまみあげると、目の前に持ってきて嬉しそうに見ている。

今まで黒い金属しか見たことがなかった。

「この世界にこんな綺麗なものがあったんだねえ」

クミナが、持っている袋に宝石を入れていく。

「これなら全部持っていけるし、かなり高そう」

「ねえ、いくつか残してもいい? 宝石なんて滅多に見つからないだろうから」

クミナは手のひらに宝石を乗せて指で転がす。

「いいよ、私も全部入れるつもりはなかったから」

「そうだよねえ、全部入れちゃったらもったいないもん」

完全に砂の中に埋もれていたものも大量にあり、袋の中が宝石で埋め尽くされる。

「ほんとに凄いねえ、あれってそんなに宝石が好きだったのかなあ」

クミナが塊を見る、動く気配はない。

「まあ、ボスを倒した報酬ってとこかな」

クミナが袋を頭の上に掲げて眺めて嬉しそうな顔をする。

「あとはこっちのリュックに入れていこう」

サザリカが後ろを向いてリュックを見せる。

そして二人は数メートル離れて前来た時とは別の位置を探し始めた。

扇風機、ガラス片、ギター、文房具、鉄パイプ、箒、カーテンなどいろいろ物がある。

「サザリカーちょっと来てー」

「どしたのー」

「いいからー」

サザリカは地面から顔をクミナの方に向け、そちらへ歩いていく。

「これこれ」

クミナが指を差す方向には、取っ手付きの台車が転がっていた。

長さ1m程、タイヤもパンクもせずにきちんと付いており、使う分には問題なさそうだ。

「これは……けっこうな掘り出し物だね」

「そうでしょー私が見つけたんだよ」

クミナが腰に手を当てて、自慢げな表情をする。

「偉そうだねえ……でも確かにこれを見付けたのはでかいね、大き目の物も運びやすくなる」

「これ穴の外に出しておくね」

「うん、頼むよ」

サザリカは砂の中から台車を出すと、上へと運んでいく。

その後も二人は30分ほど探索をした。

折りたたみフルーツナイフ、コップ、何かの歯車、蛇口の取っ手、銅線、カセットテープ、カーテンなど二十個程の拾い物をリュックて入れてサザリカは穴の外へ向かう。

クミナは縁の所で座って休憩をしていた。

台車には木片や、バラバラになった木製品、木のおもちゃなど木で出来たものばかりが乗っている。

「木は近くに中々ないからこういう時に集めとかないとねー」

「そうだね、これを見付けたのは今日一番の収穫じゃないかな」

「宝石より?」

「宝石もこれには負けるよ」

そう言ってサザリカは台車の取っ手を掴み前後させる。

「でさ、あれってどうするの?」

クミナが未だそのまま鎮座している塊を見る。

よく見ると塊は傷だらけになっている。

クミナの手には持ってきていたノコギリが握られていた。

「もしかしてノコギリであれぶっ叩いた?」

「うんー壊れるかなーと思って」

「いやいや、もうちょっと慎重にね……」

サザリカはため息を吐きつつ塊の正面へ向かう。

「そう簡単に壊せるようなものじゃないよこれ」

サザリカがコンコンと塊を叩く。

「うーん、ちょっと登ってみてもいい?」

「あー……まあお好きにどうぞ」

諦めたような表情のサザリカ。

「よし! じゃあ……」

クミナは右脚へと手をかけると上に乗り、そのまま体の上へと登っていく。

天辺まで登るとしゃがみ込んで付近を見渡す。

鉄で棘々しくなっており、移動し辛い。

「どうー?」

サザリカが下から声を掛ける。

「んーやっぱりなにもないねー、扉とか付いてないかなーと思ったんだけど」

クミナは確認を終えると立ち上がって周りの風景を見渡した。

いつもと同じ風景でも高い所から眺めると違って見える。

時折強い風が吹いて景色が霞む。

どこまでも平らな砂地とたまにある緑。

遠くにある空を貫く高い塔は一際存在感を放っている。

「あそこにいってみたいなあ……」

クミナが呟く。

それを聞いたサザリカがクミナを見上げる。

「……クミナはなんであそこに行ってみたいの?」

「んー……やっぱり人がいるかもしれないから。だってあんなの自然に出来ないでしょ?」

クミナは塔を見つめたまま答える。

二人は以前一度だけ塔まで行ってみたことがあった。

サザリカは行きたくないと言っていたが、クミナが一人でも行くと言い出したので仕方なく付いていった。

出来る限りの水と食料を持ち、目測距離100km以上はありそうな塔を目指して歩き出す。

段々と塔の姿が大きくなっていったが、途中からまったく大きさが変わらなくなっていた。

まるで蜃気楼のようだった。

そのまま1日中歩き続けても全く到達する様子が無かったので、この装備では顕界だということで引き返した。

それ以降塔には向かっていない。

「そうだね……」

二人は黙って塔を眺めていた。


「んしょっ」

クミナがジャンプで下に降りて、塊を見上げる。

「これもきっとここの誰かが作ったんだと思う。生物じゃなくて機械みたいだしね」

「こんなものを作れるなんて相当なもんだよ。」

サザリカが機械に触れる。

「誰かが作ったとして、何のために作って、何でこんな所にあるんだろうね」

「んー、宝石を盗られないように守ってもらうため?」

「普通に金庫にでも仕舞っとけばいいでしょ……何でこんな所に置いて守ってもらってんの……」

「んー誰かが作ったのは確かだと思うんだけど、ここにある理由がわかんないなあ」

「結果そうなっただけで、元々ここに置いとくはずじゃなかったんじゃない?」

「どういうこと?」

「なんかトラブルが起きてここに置かざるを得なくなったとか」

「そんなのあるかなー」

「まあ、どっちにしろ今日はもう帰らない? コレの中身は見られないみたいだし、暗くなってきた」

「うーん、そだね」

クミナが見つけたばかりの台車をゴロゴロを押しサザリカと一緒にその場を後にする

残された機械は眠るように静かに鎮座していた。


拠点に帰ってきた二人は台車に木を乗せたまま家の横に置くと今日の収穫物を点検し、機械に入れるものと入れないものに分けた。

宝石が全部で73個、その内別々の種類の10個を残すことになった。

ガラクタはカーテンと傘、食器類以外を入れた。

液晶パネルに数字が表示される。

パネルには6377万と表示されていた。

「は?」

「うわー」

サザリカは驚いているが、クミナは嬉しげだ。

「ろくせんさんびゃくななじゅうななまん……?」

「凄いねー!やっぱり宝石が高かったんだ!」

「そ、そうだね……これならもう無理して探索しに行く必要もなさそう」

「え、あっ……そう……だね」

急にクミナの声のトーンが下がる。

「ん?どうしたの?」

サザリカがクミナの横顔を見る

クミナは後ろで手を組むと空を見上げる。

「いや、探索って楽しいからさ、それをしなくなるっていうのは寂しいなーって思って」

「……クミナが行きたいなら私はどこへでも一緒に行くよ、ちゃんと怪我しなように気を付ければね」

「……」

クミナが地面を見つめる。

「とりあえず水浴びしてこよう、今日もまた汚れちゃったし」

「……そうだね」

二人は中に入れたものを一旦外へ出す、するとパネルの光が消えた。

宝石はビニール袋に入れて室内に、ガタクタは機械の横に置いた。

その後、タオルと石鹸と容器を手にすると一緒に川へと向かった。

「また揉ませて?」

「はぁ……しょうがないなあ」

そんな話し声が遠くから聞こえた。

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