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雲の下  作者: ツミキ
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1.アリジゴク

「んー、今日はあまり見つからなかったねぇ」

風化したレンガの山の上に座り、袋の中を確認する少女。

「そうだね」

その正面、砂利の地面に足を投げ出し座り、遠くの風景を見つめながら呟くもう一人の少女

ふたりの間には消えた焚火がある。


周りに草木は少なく、地面はほとんどが砂になっている。

袋を確認する少女の後ろにある風化し崩れ落ちたレンガの建物だけが見渡す限り唯一の建造物であり、この何もない景色の中では異様に目立つ。

空には厚い雲がかかっていて、太陽も空もまったく見えない。

一面の平地の遠くには黒い壁のようなものがあり、さらに向こうには巨大な塔が建っている。

塔は雲を貫いていて、頂上は見えない。


「はーぁ」

確認が終わるとため息を吐き、砂を払って立ち上がろうとする。

「面倒くさいけどもう少し遠く……っと、あっあああ!」

立ち上がった拍子にレンガが崩れ足を滑らせた。

「クミナ!」

砂利に座っていた少女が咄嗟に立ち上がり、焚火を踏み潰しながら前に倒れ落ちていくクミナの正面に移動する。

しかし受け止めるだけの力も無く、クミナに潰されるように焚火の上に背中から倒れる。

「つぅ……って大丈夫サザリカ!?ごめん!」

クミナは潰されたサザリカの上から跳ね起きる。

「あー……まぁ大丈夫」

呆れたように答え、サザリカは目を開ける。

そして仰向けのまま空を見つめ、再び目を閉じる。


今日も厚い雲に覆われている。

時折強い風が吹き、砂を巻き上げては運んでいく。

曇った状態がずっと続いている。

気温もほぼ同じ状態が続いている。何月で季節はいつなのかはわからない。


昨日から5kmの地点。

サザリカとクミナは昨日、少し遠出してみようという話になった。

「ここら辺で探してみない?」

クミナはすり鉢状に抉れた地面の手前に立ち、少し遅れてくるサザリカに話しかける。

直径200m深さは30m程で、瓦礫や金属質の物体が転がっている。

「んー」

サザリカが中を見渡す。

「ん、良さそうだね。行こう」

「よっし!」

クミナがジャンプで中の瓦礫に飛び乗り、楽しそうにピョンピョンと下に降りて行く。

「気を付けてよー」

声を掛けると、クミナ程運動が得意でないサザリカは慎重に瓦礫の中を降る。

「金属が多いのはいいけどそんなに持ち運べないからなぁ」

サザリカは地面を見渡しながらゆっくりと進んで行く。

鉄はそれなりの価値はあるが重くて大量には持てない。

「ん」

サザリカは地面に埋もれた電池を見付け、拾い上げる。単二電池が四つだった。

「使えるならけっこうな値打ちものだけど、どうかなぁ」

電池を手のひらで転がす。

「っと」

地面に座り込み、赤い大きめのリュックを下ろすと電池を中に入れた。

再びリュックを担ぎ、さらに下に降りて行く。


「よいしょー、到着!」

最後のジャンプで最底部に辿り着く。

クミナは底に辿り着くことを優先していて、探索は二の次だった。

振り返りサザリカを見付ける。まだ上から三分の一程度しか進んでいない。

「まだあそこかぁ、あははっ」

軽く笑うと向き直り地面を見つめる。

底にある物質は殆どが金属だ、瓦礫は少ない。

「なんでこんなにあるんだろ、誰か捨てていったのかな」

もう一度振り返りサザリカを見る。

「なんかこのガラクタ変な感じがするなあ」

そう小声で呟くと金属には触れずに周りを歩き始める。

バラバラというよりは一つの塊になっているように見える。

直径は約15m、全体は露出しておらず、下の方は砂に埋もれている。

天辺は鉄屑で針のように棘々しくなっている。

ぐるっと一周したがまだサザリカが来ていないのでクミナはそこで体育座りになった。


数分後、サザリカが到着した。

「遅いよー」

体育座りのまま後ろへ転がりサザリカを見上げる。

「クミナが速すぎるんだって、もうちょっと探索してよ」

そう言ってクミナはサザリカの横を通り鉄の塊を見る、クミナも跳ね起きてクミナの後を追う。

「ねえねえ、これ」

クミナがサザリカの横でしゃがみ込んで塊を見る。

「うーん」

サザリカは全体を見回す。

「なんでこんなに大量の鉄が……」

もう少しよく見ようとサザリカが近づく。


その時、地面の砂が揺れる。

埋もれている鉄の塊が少し持ち上がり砂が中心に流れていく。

露わになった部分には緑の光が目のように二つ付いている。

そのままドンドンと塊が持ち上がっていく。

「え……」

「うわー……」

サザリカとクミナは想像していなかった光景に微動だに出来ずにいる。

そして全ての部分が姿を現した。

埋もれていた部分は平らになっていて全体の姿は半球状になっている。

「えっと……」

クミナが小さく声を出す。

その瞬間塊から脚のように鉄の棒が六本飛び出した。

「ええええええ!」

クミナが大声を上げる。

「っ!!逃げようクミナ!」

サザリカも何とか声を出すとクミナの手を強く握り引っ張る。

「ああああああ!わがっだ!」

クミナはそう叫ぶとサザリカを背負い走り出す。

「何々!なんなのあれ!」

「分からないけど近づいたら駄目なやつなのは間違いないよ」

後ろから轟音。

「……」

声の出ないクミナ

「えっ……」

サザリカが後ろを見ると、塊は脚のような鉄の棒を動かしながらこちらを追っていた。

「あいつ追いかけてきた!クミナ頑張って!」

「あああああああ!!」

クミナは叫びながらスピードを上げ、瓦礫とガラクタの坂道を駆けあがって行く。

塊も瓦礫や鉄があってもお構いなしに吹き飛ばしながらクミナを追いかけてくる。

後ろから金属音が鳴る。

「えっ」

サザリカが振り向くと塊が右前脚を横に伸ばしていた。

「っクミナ思い切りジャンプ!」

「ああああ!!」

クミナのジャンプとほぼ同時に脚がクミナのいた地面に突き刺さる。

「えええええ!!」

叫びながら着地するクミナの後ろではまた塊が脚を横に伸ばしている。

「クミナ!もうちょっと!」

「あああああああ!!」

クミナは縁に脚を掛けると力を込め思い切りジャンプした。

同時に塊の脚が縁に突き刺さる。


飛びだしたクミナはそのまま顔面から地面に直撃した。

その拍子にサザリカが手から離れ前方へゴロゴロと回転していき、やがて止まった。

「いてて……」

サザリカは全身の汚れを払いながら立ち上がる

「あっ! あいつは!?」

サザリカはハッとし正面を見る。

しかしあの塊が姿を現す様子はない。

「……」

サザリカは少しの間動かずにいたが、変化がない事を見ると顔面を地面に付けたまま動かないクミナに駆け寄る。

「クミナ! 大丈夫!?」

そう言いながらクミナの体を持ち上げて仰向けにする

「……大丈夫大丈夫……てか何なのあれぇ……」

顔に土を付けたままでクミナが呟く。

「ちょっと見てくる、クミナはここに居て」

「いや……私も行く……」

クミナは顔の土を払いサザリカを追う。


縁から二人は中を覗く。

塊は最初に見つけた位置で埋もれた状態に戻っていた、あの目や脚のようなものも見えない。

地面には削られ瓦礫や金属が無くなった部分が縁から塊まで伸びており、動いたことをはっきりと示している

「なんだったのかなあアレ」

クミナはうつ伏せのまま縁から覗き込んでいる。

「分からない、あんなの初め見たよ」

サザリカは塊を見つめる。

動く気配はない、さっきの出来事が嘘のように静まり返っている。

この場所全体を見渡すと、サザリカはあるものが思い浮かんだ。

「なんかアリジゴクみたいだね、ここ」

「あっ、そう言われるとそう見えるねー、めっちゃでかいアリジゴク」

「ここはあいつの巣なのかな」

「そうかもねぇ。探せばいい物が落ちてそうなのにまた入るのは怖いなぁ」

そのまましばらく塊を見ていたが、変化はない。

クミナが飽きた様子を見せる。

「んー、とりあえず今日はもう帰らない?疲れちゃった」

「……」

ただ風の音だけが響いている。

「そうだね、帰ろう」

二人はその場所を後にした。

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