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パラレルファンタジー 番外編 その6

 


 踏みしめる足に力を込め、死神の鎌と化した白刃を容赦なく振り下ろす。途中獣の咆哮のような声が聞こえたが、そんなことはどうでもいい。白刃は無慈悲に振り下ろされた。人を斬るときの独特の手ごたえを予感していた柴田は、土をかむ手ごたえと音に眉根を寄せ、ふっと紫音に目を向ける。剣呑な目で「何をした?」と視線で問う。



「悪いけど邪魔させてもらったわ」



 瞳に現れる殺気を自身の青い(まなこ)で受け止め、両手を広げ挑発する。



「さっきも言ったけど、私に用があるんでしょ? 小娘一人捕らえられない間抜けさん」



「・・・・・・奇怪な術を使うの。確か空間操作だったかの?」



 年下の娘からの挑発に気分を害した様子もなく、淡々と思ったことを述べる。



「しかし上がってきた報告では確か・・・・・・」



 顎に手を当て、考える素振りを見せる。その素振りを警戒の眼差しで見つめ、もごもごと口を動かす。



「身体強化しか聞いてない?」



「・・・・・・そうそう身体強化。それだ。瞬間移動が出来るなどとは聞いていない。それに――」



 話を途中で打ち切り、八双より斬りかかる。血と泥で汚れた人斬りの牙が紫音に襲い掛かる。その斬撃を余裕で左にかわし、剣先より三歩の距離まで下がろうとする。だが人斬りの牙は速く鋭く老獪だ。一太刀目は意図的に速度を抑え、本命の二撃目を疾風のごとく繰り出す。八双より振り下ろされた刀は、下弦の月を縁取るような弧を描き、一歩下がった紫音の右足を強かに斬りつける。鮮血を横目に見ながら後方に足を飛ばす。三歩の距離まで下がり、チラリとだけ右足を見る。



「やはり未熟だの。小僧――いや、伊左衛門に劣る」



 残念そうに刀の露を払い、もごもごと口を動かす紫音に無造作に歩み寄る。



「伊左衛門の居場所を教えろ」



 首筋に刀を当て、ぶっきらぼうに命令する。反応を示さない紫音の首から赤い滴が流れ落ちる。



「娘。そなたは見逃してやろう。・・・・・・とゆうより興味がなくなった」



 相変わらず反応しない紫音に苛立ったのか、刀をひき鼻面を峰で打ち据える。均整の取れた顔に血化粧が施され、汚れのない白肌が不気味に浮かび上がる。



「いい加減にしろ。先ほどより何と話しておる? 薄気味悪い神がかり(・・・・)が」



 さらに峰で殴りつけようとする柴田に、掴んだ泥を顔面目がけて投げつける。面倒くさそうに左手をかざした柴田を暗闇が襲う。



「くそ!? なんだ!?」



 確かに止めたと思った泥が視界を覆い隠す。峰を返し振り払うように斬りつけるが、雨を斬る音が聞こえるだけで何の手ごたえも返さない。



「油断してるからよ、お・じ・さん」



 そう言い残しヒョコヒョコと離れていく紫音を見ることも叶わず、必死に袖で顔の泥を拭う。確かに止めた泥が命中したからくりは至極簡単。紫音が空間を操作して目の前に移動させただけだ。


 なんとか泥を落とし視力を回復させた柴田は、左右を素早く見回し紫音の行方を探る。即座に発見した柴田は、一切の感情を置き去りに疾走する。二十歩程で追いつき、脇構えから上体を捩るように斬りかかる。ほぼ水平に薙がれた刃は、少女の肌に触ることなく空を切る。舌打ちと共に辺りを見回し雄たけびを上げる。



「小娘!! どこへ行った!!!!」





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