表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
1/7

はじまりの序章

番外編ですが、番外編・本編どちらから読んでも大丈夫です。



 ――たった一度の出逢いが人生を変える?



 ――そんなことが現実に起こりうるのだろうか?




 時は平安時代中期。第66代天皇一条様の時代。和泉の国(現在の大阪)の山奥に1人の男がいた。男の名は伊左衛門。現在この廃村で暮らす唯一の人間である。数年ほど前にこの廃村を見つけ、それ以来寝床に使っている。年のころは20代前半。腰まであろうかとゆう漆黒の髪に、どんぐりのように大きな目。光に透けるような白く美しい肌だが、その表面には無数の傷が刻まれている。



 現在彼は、この廃村で拳法(武術)に打ち込んでいる。昔は師匠がいたが、1年程前にふらり(・・・)といなくなってしまったため、しかたなく1人で修行に打ち込んでいるのである。




 とある春の一日、いつもと同じように日の出と共に起床。布団替わりの着物の上でむくりと体を起こす。手早く着物をたたみ胴着に着替え、顔を洗うため水瓶まで移動する。日中は暖かな日差しにまどろんだりもするのだが、まだまだ朝晩の冷え込みは厳しく霜の降りる朝も珍しくない。




 水瓶の前で腕を組み精神を集中させる。水面に映る自分にニッ(・・)と笑いかけ、意を決し両手を突っ込む。身を切るような冷たさを無視し、バシャバシャと顔に水をかける。まとわりつく眠気が断ち切られ、込み上げる爽快感と共に完全に目を覚ます。




「ふうー。朝の水はまだ冷たいなー。今日も一日頑張るで!」




 毎朝ほぼ同じことを言って手近にある手ぬぐいで顔を拭う。日課の独り言を言い終え、近くの川に水を汲みに行く。これも日課の一つだ。この廃村の便利なところは、近くに大きな川が流れているところにある。川幅は5メートル前後しかないが水深は結構な深さになり、中央部分になると2メートルから3メートルの深さになる。流れが早いこともあり、大の大人でも向こう岸に渡るのは容易ではない。――まあ特に用事もないので渡ったことはないんだが・・・・・・。




「よっしゃ!今日もええ天気や」




 天秤棒を担ぎ両端に手桶をひっかけ――ふと空を見上げる。川のほうから大勢の鳥がこちらに向かい飛んで来ている。



(猪かなんか出たんかな?)と呑気に構えていたが、ドン!というかなり大きな音を聞き血相を変える。(・・・・・・まさか熊やないやろな?)天秤棒を地面に放り出し、建物内へと踵を返す。



 食べ物が乏しい山では熊は貴重な食料だ。だが、この山は食料に困ることはない。山には宝庫と呼んでいいほどの種類と量の山菜。川には岩魚・ヤマメ・海老などが豊富で、運がよければ大型のウナギも見かける。そんな理由で、危険な熊と遭遇するのは正直勘弁してほしい・・・・・・。しかし、熊が人間の都合など知るはずもない。実際に何度か遭遇し肝を冷やしたこともある。




 玄関から鍔のない脇差を掴み外に出る。くすんだ色の帯に乱暴に差し、川の方角へ―嫌々ながら―足を向ける。熊がいるのが対岸なら問題ないが、こちら側だと厄介なことになる。川から廃村までは歩いて5分ほどの距離しかない。廃村に勝手に住んでいるとはいえ、自分(・・)の寝床を壊されては堪ったものではない。



 伊左衛門は重くなる一方の足に渇を入れ、警戒しながら川の方角に向かった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ