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第四話 ごみ山開発

 宿屋に着いた勇也は辺りを見渡した後、やっぱり同じだと思いながら宿を取る。


「すいません、宿泊したいのですが?」


「はいよ、朝、夜の食事付きで1000カーネだよ」


「7日間ほど泊まれますか? できれば延長するかもしれませんが」


「たぶん大丈夫だよ。遺跡の騒動も大分収まってきたしね」


 このあいだまで結構いっぱいだったんだよといいながら宿帳に記入を進めてくるおかみさん。もちろん彼女もそっくりである。記入を済ませ、部屋に向かおうとする勇也に声をかける。


「晩御飯は奥の食堂でね。一人だからカウンターへ座っておくれ」


「わかりました、カウンターですね」


 そう言いながら勇也はようやくここが現実の世界だと実感できた。なぜならゲームでは食堂は入れなかった(ドアはあった)からである。異世界での食事も楽しみであり、一層の気合が入る。


「まずは、いろいろ確認するか」


 部屋に着き、スマホを見ると、ユニテルからメールが来る。彼女も待っていたのだろう。内容をみると、


『――さすがに手馴れてますね。頼もしいですね。これからどうするんですか?』


 とある。勇也はメールを返信するのではなく、スマホに向かって声をかける。そうすればユニテルに届くのだ。ちなみにバッテリーは表示されない。どうやら転送の際に勇也の体の一部として現世したらしく、アンテナと同じなんだそうだ。自分自身を目視でき、神と思念交換もできる便利なオーパーツといえる。 


「まずはお金でしょうね。超古代スキルを生かすには拠点を構えて工房で装備を発展させないと」


『――時間かかりそうですね』


「まあ、まずはごみ山へ行って『オーパーツ』を仕入れないとなんとも……」


『――古代の武器があるのではないのですか?』


 今更に聞いてくるユニテル。実際はゲームでもそんな甘くなく、結構な苦労をして装備を揃えた記憶がある。他の大陸で素材を集めたりしなければならなかったりと、装備を揃えるのは時間が必要である。


「どうですかね? 武器がそのまんまあれば俺も楽なんですけど、確かゲームでは部品しかなかったですね。それに燃料にする鉱石なども必要になってくるし、修理や加工する工具も必要です。時間はかかるでしょうね……」


『――そうですか。私の分かることはこの大陸の地下には ”かつてのサイテックの街が眠っている” ということくらいです。トキーノ山脈のふもとの遺跡の地下にはまだ見ぬ街の跡が広がっている。これは間違いありません。そこにいけば強力な武器があるかもしれませんね』


 話を聞き、勇也は腕を組んで考え込む。


(確かにここはゲームじゃないリアルな世界だ。ゲームで発見しないだけでリアルでは普通にあるかもしれない。まあ、ごみ山にあればラッキーだけど。それにもっと地下にいけばまだ見ぬ素材やオーパーツが眠っているかもしれない。でも、その回収にはランク4で発見できるオーパーツ『亜空間固定ゲート』が必要だろう。幸い俺の超古代スキルはランク5にあがったばかりだから、それで『無限ボックス』の作成も可能だ。まずは武器と無限ボックスが目標か……、それに『亜空間固定ゲート』ってどこにあったっけ?)


 古代の都市が地下深く眠っているのであれば、うまくいけば風化されていない武器などもあるはずである。何しろ最近発見された遺跡からも『オーパーツ』として部品を回収できるのだ。しかし、そこまで行くには装備や資金が少ない。更に自身も鍛えなければならないだろう。しかし知識しかなく、ゲームでも装備したことのない超古代装備品の『コスモランチャー』や『広範囲メガスマッシャー』などの武器、『全天方位バリア』や『キャンセルマント』などの防具を準備できれば心強い。当然プレイヤーとしてリアルに手にとって扱ってみたい気もある。最短でその境地に行くにはどうすればよいだろうか。やっぱりまずはごみ山の探索からであろう。


「まあ、とにかく明日ごみ山に行ってみます。ここはやはりゲームではなく『現実』の世界です。使えそうな部品を片っ端から集めて利用していきます。取れなかった部分も取れる世界でしょうからね」


『――そのとおりです。ゲームでは行けない場所も行けるのが現実の世界です。そのかわり、命の危険が直接その身に降りかかるのも現実の怖さです。それだけは重々理解してください。我々はあなただけが頼りなのですから、どうかお気をつけて……』


「よし! 明日からはごみ山だ! …っと、その前に」


 そう言って勇也は武器屋から貰った一振りのナイフを取り出す。そしてそのナイフを研ぎ始めると、ものの数分で見事なナイフができあがる。装備すると『最高職人の愛用ナイフ』となり、攻撃力が200アップしていた。きらりと光を取り戻したナイフを見て勇也は満足そうな顔をしてベッドに横になり、晩御飯に呼ばれるまでゆっくり今後について思案するのであった。

 ちなみに勇也の転生初日の晩御飯のメニューは『プチボアの甘辛煮付け』であり、ハードなパンに良く合うこれまた今後の食生活を期待させるものであったと付け加えておく。





 ☆~~~~~~~~~~~~~~☆





 翌朝になり、早速勇也はごみ山へ向かう。目的は素材ともちろん『オーパーツ』の回収である。


「超古代の武器があれば手っ取り早いんだけどなぁ」


 てくてくとトキーノ街道を歩く勇也。昨日買ったばかりの靴はなかなか履き心地がいい。宿屋で微調整したのが良かったのかもしれない。おそらくスキルが発動してくれたのだろう。しかし、そんなのんきな勇也に危機が迫る。


「な、なんだ?」


 のんきに歩く勇也の目の前にいきなり現れる魔獣の群れ。すばやい動きで身をかわす『ビッグ・ビー』の群れであった。15cmくらいのハチが3匹、勇也に襲い掛かる。


「うわっ、来るな!」


 不意を襲われた勇也は若干パニックに陥り、ぶんぶんとナイフを振り回すのだが、すばやい動きでビッグ・ビーに攻撃を回避されてしまう。


「くそっ! ここまでか…」


『――ちょっと、ユーヤさん。あきらめが早い、早すぎですよ!』


 早くもあきらめモードになる勇也にあきれたユニテルが突っ込みを入れる。普段はメールで連絡すると言っていたにもかかわらず、今回に限ってスマホのスピーカモードで直接語りかけてきていることから、勇也がいかにだらしが無いか分かるだろう。


『――いいですか、ユーヤさん。落ち着いて、よーく敵を見てください。まず一匹、一匹倒しましょう』


「い、一匹…まず一匹……」


 おちついて呼吸を合わせながらハチを見つめる勇也。よくみると野球の打球ほど早いわけでもなく、


「はあっ!」


 気合一閃、ビッグ・ビーを真っ二つにする。そして振り向きざまにもう一閃。最後に袈裟切りと、見事三匹のビッグ・ビーを全滅させることができた。 


「ふう、意外に弱かっ…」


『――いろいろ言いたいことはありますが、初勝利おめでとうございます』 


「……ありがとうございます。…あの、なんか、すいません…」


『――いえ、まあ最初はこんなものでしょうね。勇也さんは地球の人ですし』


 これからは魔獣といえども躊躇せず命を奪うことに慣れなければならない。ここはそういう世界なのだ。まだ最初が虫系統の魔獣だから良かったが、おなじみの『プチボア』のような子豚の魔獣だったらできただろうか。改めて世界が違うことを意識した勇也であった。ちなみにさっきのビッグ・ビーを倒した報酬は、3の経験値を得ただけで素材もレベルアップも無い。


 それからはトラブルも無く、ぶじにトキーノ遺跡に着く。移動中ユニテルから『忙しいのでちょっと反応できません。ごめんなさい。あとはよろしくおねがいします』とメールが来ていた。惑星母神である彼女は忙しそうだ。あまり心配かけないよう頑張ろう。


「ゲームでは遺跡内部でオーパーツを発見するんだけどな……」


 辺りを見渡すと、遺跡の入り口に兵士が見張っている。記憶では許可がないと入れないのではなかっただろうか。ちょっと確認してみることにする。


「すいません。遺跡を見学したいんですけど」


 愛想よく見張りに聞いてみたのだが結果は、


「ギルドの許可がないと駄目だ。そもそも何しに遺跡に入る気だ? 危ないからやめておけ」


 と、にべもない。しかたないのでごみ山を探しに行こうと歩き出す。すると、見張りの兵士が、


「そこにあるごみだったらいくらでも持っていっていいぞ。片付けるのも大変なんでな。まあ、使い道も分からん物ばかりだけどな」


 兵士の指の指す方に目を向けると、結構な高さのごみ山が目に入る。おそらくあれがユニテルの言っていたごみ山だろう。探す手間が省けてよかった。目的のものがあればいいのだが。


「ありがとうございます。ちょっと見てきます」

 

 そう言って兵士に礼を言い、ごみ山の前に立つ。ごみ山という割りには大・中・小と区分けされており、一応は調べた形跡が伺えた。急がないと処分されてしまうかもしれない。早速勇也は手にとって調査を開始する。


(……いきなり見つけたぜ)


勇也が見つけたのは鈍色に変色した1mくらいのパイプである。たしかにゴミにしか見えない何の変哲も無いパイプではあるが、スキルが発動中の勇也には全く別のアイテムに見える。


(これ、オリハルコン製のパイプだ。何に使っていたのかわからないけど、間違いない。装備してみるか……)


 そう思って勇也はパイプを装備して、見つからないようこっそりスマホを確認する。そこには、




 コシロ・ユーヤ



  LV 1


  HP 125


  TP 100


 『STATES』    『EQUIPMENT』


 STR(腕力) 80 :オリハルコンパイプ+420


 CON(耐久) 50 :ぺらぺらの胸当て+10


 AGL(機敏) 70 :革の靴+10


 INT(知性) 70 :  


 LUC(幸運) 80 :


 STM(体力) 70 :  


 GUT(根性) 80 :

 


 と、表示されており、確かにオリハルコン製のパイプであることが証明された。


(やっぱりオリハルコンだ。よかった。スキルはちゃんと発動しているみたいだ。これならうまくいきそうだ……)


 自分のスキルがうまく発動していることに安心する勇也。さらにステータス画面を見てみると、防具欄にもちゃんと掲載されている。


(ぺらぺらの胸当て…、防具は早く何とかしないと駄目だな。また襲われるだろうし……。しかし、さすがオリハルコン製。攻撃が420も上がってるよ。マジで中級冒険者用の装備じゃないか……)


 こんなのタダで拾っていいのかと思いながらも、先程の兵士との会話を思いだし、更にユニテルに薦められていることもあわせて開き直る。さらに勇也はゴミ山をあさってゆく。


(オリハルコンって言っても、このパイプは唯の素材なんだよな。やっぱり『オーパーツ』が無いと……)


 様々な部品らしきモノを手にとっていく勇也だったが、どうも壊れている物が多く、なかなか見つけられないでいた。しかし、しばらく探索していた勇也にある考えが閃く。


(そうだ! 製品を分解して、部品を抽出すればいいんだ! 早速分解してみよう)


 そういいながら、大きい『かつて何かの機材だったモノ』を発見し、分解していく。残念ながら工具がないので綺麗にとはいかないが、中身を抜き出すことに成功する。そこには勇也のスキルにより『エナジーパック』が発見できたのだが……。ちなみにエナジーパックとは地球で言うところの『充電式乾電池』みたいなものである。燃料を注入しておけばいろんなシーンで使える便利アイテムだ。


(……駄目だ。やはり工具がないと分解もできん。折角『エナジーパック』を見つけたのに……。ゲームだったらすぐに手に入るのになぁ……)


 現実は厳しい、と愚痴をこぼしながらも、今度は別の考えが閃く勇也。頭が冴えてるのはユニテルの恩恵なのだろうか……。


(そうだ! 壊れた部品集めて、工具っぽいものを作ればいいんだ。よく考えたら俺はスキルマスターだしな。こうなったら徹底的にやるぞ!)


 スキルと同時に地球から持ち込んだ持ち前の『凝り性』スキルまで発動させた勇也。こうなったら誰も止められない。使えそうな金属片をいろいろ加工して工具っぽいものを作っていく。拾った金属片はほぼオリハルコン製だったりする。サイテックではオリハルコンが標準だったのだろうか。


「ふんっ! ぬん! とりゃ!」


 気合を込めて工具を、といってもハンマーや、マイナスドライバーみたいなものしか作れなかったが、使ってみたら一応役に立った。あとは力づくで、エナジーパックの回収に成功する。


「やった! やっと取れた! 一歩前進だあ!」


 うっひゃー、とはしゃぐ勇也に先程の兵士が声をかける。


「おい、どうしたんだ? こんなのなんかの役に立つのか? それよりそろそろ閉めるから、また明日来な!」


「…は? 閉める?」


「もう薄暗いだろ。どれだけゴミに夢中になってるんだ。こんなこと言うのもアレだけど、みんな怖がってたぞ。俺もまさか一日中いるとは思わなかったわ」


 苦笑しながらそんなことを勇也に告げる兵士。勇也は兵士に言われて初めて辺りが暗くなって来ていることに気が付く。勇也はまわりから白い目で見られていたことに軽くショックを受け、うっかりエナジーパックを落としてしまう。


「おっと」


 おとしたエナジーパックを拾おうとしたら、先端の部品が衝撃で外れてしまっていた。そのときスキルが発動し、新たなオーパーツを鑑定する。


「これは、『光変換高圧出力装置』だ! エナジーパックについてたのか!」


 ひゃっはー、とはしゃぐ勇也を兵士は哀れんだ顔で見つめ、やれやれと肩をすくめるのであった。

 実はパイプの正体は、昔のセキュリティゲートの一部です。ハンマーは階段の手すりの先頭のまるっこい部分だったり。オーパーツは電気系統の部品です。一応部品や素材達も、もっともらしい設定をいれてます。

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