構成術と詞素の歴史
内容的には本編の間章の内容を改編したものとなっています。
二千三十三年。
紛争、そして内乱。
これら、最早人類の歴史を語るうえで外すことができないであろう事象はともかくとして。
冷害や地球温暖化、水不足や人口増加に伴う様々な環境問題によって悪化の一途を辿っていた地球の居住環境の回復を推進すべく、様々な思惑と事情によって機能不全に陥っていた国連に代わり、人々の総意によって新たに組織された地球連邦政府（Earth United Government）は、この年、極秘裏にある計画をスタートさせていた。
そして二千三十五年。
極秘裏に進めていたその計画。
慢性的なエネルギー不足を解決する糸口を見出すべく、余剰次元理論に基づく「高次元ブラックホールの生成・蒸発実験」へとEUGは秘密裏に踏み切った。
しかしこれは表の理由。
謂わば「事件」後にEUGが作った言い訳じみた大義名分でしかなく、その実態は量子コンピュータの予測演算によって可能性を示唆されていたunknown（不確定要素）の検証であり、粒子加速軌道制御システムに基づいた「実験」そのものであった。
実験で確認されたunknown（UK）は、粒子となって四次元空間に現出することとなった。
また実験に同席した研究者の数名が体調不良を訴え、精密検査の末、体調不良を訴えた研究者の脳内に未知の細胞組織が形成されていたことが判明。
調査の結果、UK粒子が人間の脳内に入ると『ミーム細胞（粒子）』と呼ばれる“UK粒子と親和性の高い細胞組織”が形成されることが判明した。
その後、幾度となく繰り返された実験調査より、研究者たちは「ミーム細胞はUK粒子の次元空間移動を司る存在であり、この性質によってUK粒子の人体への供給を担っている」との結論へと至った。
詳細に述べれば、ミーム細胞延いてはミーム粒子は、異なる次元間（虚数空間）を移動できる存在であり、ミーム粒子はこの特異性の下、UK粒子の次元空間移動を司っているということだ。
これはアインシュタイン方程式による「世界線」と類似した特徴を示しており、その関連性はわかっていない。
また、ミーム細胞は「人間の感情の揺らぎ」に対応して思念波（ミーム波）と呼ばれる非物理的な波を起こすことで、「M理論」でいうUK粒子の「膜の運動」に干渉することが判明。思念波によって振動したUK粒子からは、M理論に基づいた素粒子の生成・性質変化が観測されることとなる。
こうした本来粒子には考えられない“特性”を有したUK粒子のことを、人間の思念に呼応する性質から『詞素』と呼称するようになった。
以上のように、詞素と親和性の高いミーム細胞から生じた思念波（ミーム波）を詞素に加えると、詞素を構築している「膜（高次元空間構造）」が揺さぶられ、その運動が変化する。
この運動の変化はM理論でいう高次元空間の構造が変化したことを示しており、その高次元空間の形に応じた素粒子の生成が観測されることとなるのだ。
以後研究者たちはミーム細胞（粒子）から生成される思念波を用いて、「詞素」をはじめとしたあらゆる高次元空間構造（物質等）に干渉し、その構造を変化させる科学技術の開発に本格的に乗り出すこととなる。
この科学技術のことを、人間の持つ構成を具現化し体現するという性質から『構成術』と呼称するようになった。
