招待状
俺は目の前の光景に言葉を失っていた。
突如襲いくる恐怖、そして、それを糸も容易く倒してしまったギルドのメンバー達にだった…。
「ジョン大丈夫!?!?」フレイが駆け寄る。
「ああ、心配ないよ!かすり傷だから。」ジョンの脚からは結構な量の出血をしたせいか、短パンは真っ赤に滲んでいた。
「ちょっと待ってて!!」フレイはそう言うと、持っていたポーチから赤と緑の液体が入った小瓶と透明な小瓶、それに銀の匙を出した。
そして、2つの液体を混ぜ、銀の匙でかき混ぜる。
『適当加減な匙』
「これが私がシャムシール団長からもらった魔具、私調合師を目指してるから。はい、ジョン!!」
フレイが混ぜ合わせた液体をジョンの脚にかけると、出血は止まり、傷口は塞がり始めた。
「すごい!」
「おぉありがとう!!」
「相変わらず見事な調合アルな!」
「神業だぜ!」
「しかし、ウォルフが旧型のキラーマシンなんかに手こずるとはな…」ジェイドは首を傾げた。
「きっと飲み過ぎたんだよ!」ジョンが着かさずフォローを入れる。
「まさか剣を弾かれるとは思わないアルよな。はい。」リーが遊死鉄線で拾って来てくれた。
「あぁ…ありがとう。」
「まぁいい…しかし、フレイの屋敷も大変だな……見た所犠牲者はいないが……」
「うん…壊されたのは物置とか、書庫の方だから誰も怪我人はいないと思うけど…」屋敷にいた両親、使用人の姿が独りも見えないことに不安の色を隠せずにいた。
「ウィ…ウィーン…ガチャ・・」地に横たわるそれは微かな力を振り絞り、最期の手段を取った。
「ビィ―!ビィ―!ビィ―!ビィ―!」突如、けたたましいサイレンが辺りに響き渡る。よく見ると、目が赤色に発色し、さっきまで無かったパトランプのような物を頭から出していた。
「なんだ?急に一体どうし…た?」皆の空気が凍りついていた。
「済まない…。止めを刺しきれなかったようだ…。」
「気にするな!さぁ逃げるぞ!」
皆は足早に逃げる用意をする。
「逃げるのか?ジェイドやドラコなら殺れるだろ!?」
「あっそうか知らないよなあれは殺戮兵器の最期の手段…無差別破壊者状態ああなったら、逃げろってシャムシール団長から教わってるんだ!」
「無差別破壊者状態になったら、電源の持つ限り暴れまくって、自爆するの!パワーもスピードも段違いに上がるのよ!」
俺はそこまで聞くと走り出した。
「ウィ!ガシャン!パラララ!」それは起き上がろうとしながら、機関銃による射撃を開始した。
「カキキン。キン。」リーが遊死鉄線で鉄の防御網を作る。
「早く皆走るアル!」
「ドシャ!!」「痛てて!」ジョンが脚をもつらせ転ぶ。
「ウィ―――――――ン!!ガッシャン!!」それは口から巨大な大砲を出した。
砲口はジョンの方を向いている…。
「野郎!?!?」ジェイドが慌てて、ジョンに駆け寄る!
「マズいアル!」リーも全てのワイヤーを集め、防御網を作り始める。
「この鉄屑が!」ドラコがヤツに突っ込もうとする・・・・
がそれより早く、俺は刀を抜き、殺戮兵器に斬りかかる。よく見ると、さっきまでとは違い、白い刀が眩いほどの光りに包まれている。
「ウォルフ!!止めて!!」フレイが叫ぶ!
俺だって止めたい…。だが、「体が勝手に動く」という感覚がある。まさにそれだ。俺の体はヤツが砲撃を開始する前にヤツを斬るつもりだ…だが、タイミングが非常に微妙な所だ。
よく死ぬ瞬間周りの景色がスローモーションになるという。今、まさにそれだ。殺戮兵器が大きく口を開けてる所。ジェイドがジョンの前に立ち、剣を盾にして覆い被さる所。リーがワイヤーで何重にも張り巡らした金属のドームを作っている所。ドラコが俺の後ろから追いかけてくる所。フレイが叫んでいる所。死ぬ瞬間の走馬灯…僅か数秒間の間に人生を回想して行く…まさにそれだ。たったこれだけの間にたくさんのことを考えられた。思えば、皆良いヤツだな。この世界で死ぬのも悪くないかもな・・・
『まだ早いだろ!?』
誰だ?
次の瞬間、「キュルキュルキュル…」何かが物凄い速さで飛んでくる…。
「ズドン!!!」重たい音と共に、殺戮兵器は真っ二つに引き裂かれ、頭部は粉砕された。
「斧……??」投げ込まれたのは大き過ぎてよくわからなかったが、両方に歯を持つ巨大な斧だった。
斧が飛んできた方を見ると500m先程、まだ残った建物の影に象のような大きさの馬に乗った大男がいた。
ゆっくりと大男が近づく…。
「戦斧…」ジョンが呟いた。
男は俺たちの所に来て呟く。「悪いね。手を出すつもりはなかったんだけど、流石に無差別破壊者状態はマズいと思ってね♪」
男は爽やかに笑った。2mの巨体ジェイドよりさらに一回り大きな体、そして丸太のような太さの腕、短く黒い短髪。体のサイズを覗けば、佐○急便のお兄さんのようであった。
「あぁそうだ。」男は思い出したように話だす。
「俺は王国騎士団No.18『戦斧』のアレックス。よろしくな!」
「やっぱりか…あの巨大な斧…」
「本物は大きいわね。」
「『戦斧』ってあのウドガルド攻防の英雄だろ!?」
「聞いたことアルね!」
「王国騎士団が何故ここに…」
「まぁまぁ聞きたいことはたくさんあるだろうけど、一応俺の見立てでも『合格』かな!?じゃコレ渡しとく。」
アレックスは赤い封筒を全員に渡した。それはこの国の誰もが知っているもの。
「これは…!?」
「中央…即ちセントガルドに聳える巨城…アースガルド城への入城手形さ!!!」