殺戮兵器(キラーマシン)
初めて目にする殺戮兵器!!
ウォルフは勝つことが出来るのか!?!?!?
ユラユラと燃える炎の中、月明かりに照らされた銀色のそれは起き上がった。
「殺戮兵器だ!!」ジョンは震えながら呟いた。
「アレが………」
月明かりのお陰ではっきり見えた。
全長10m超、全身銀色のアルミ色、丸みを帯びたボディはまるで、アニメに出てくる鉄人○号のようだ。
頭は鼻の部分だけ、少し尖り、大きな目はライトのように反射していた。
両腕の先端は丸く、鉄球のようだ。
「お父さぁぁん!!おかぁさん!!」フレイが取り乱し、半壊した建物に近づこうとするのを俺達は必死で止める。
「フレイ止めろ!!死にたいのか!?!?」
「でも……お父さんとお母さんがぁ……」
「気持ちはわかるよ…だが、その前に目の前のアレを何とかしないとな……」
殺戮兵器が俺達の気配に気付き、コチラに向かって来る……
『くそっ!!最悪だ…。どうする?逃げるべきか?立ち向かうべきか?だが、立ち向かおうにも勝ち目が見当たらない……』
『…というか、俺死んだらどうなんだ?異世界に行った話、転生した話はあるが途中で死んだ事例はない…』
そんなことを考えていたら、急に恐くなった……。
「ウィーン!!ガシャン!!」突如キラーマシンの両肩から、機関銃のような物が出てきた。
「何…!?!?」俺は急に我に帰る。
「パララララララ・・・」乾いたタイプライターのような音がした。
殺戮兵器は俺達を攻撃するのに一切迷いはない。
俺は咄嗟に目を閉じた…。
その時、「カキンキンキン!!」攻撃は全てジョンによって防がれていた。
目を開けると、淡い光りを纏った小さな円い楯を敵に向かって、突き出し、俺とフレイの前に立つジョンの姿があった。
よく見ると、さっきまで腰にぶら下げていた短剣がない。
「簡易障壁剣…シャムシール団長から造ってもらった魔具さ…長くは持たないけどね」
銃撃が止み、ヤツがジョン目掛けて殴りかかる。
ジョンはそれを紙一重でかわし、殺戮兵器を俺とフレイがいる方と反対方向へ誘い出す。
「ウォルフ!!俺が隙を作るから、止めを刺すんだ!」
無茶だと思ったがやるしかないようだ…。
「私もジョンも戦闘向きじゃないのよ…。」フレイはジョンの脚を指差す。
さっきの銃撃で怪我を負ったのだろう…短パンには血が滲んでいた。
「こっちに来てまだ2日目のあなたに頼むのは酷だと思うけど、ジョンもそろそろ限界なの…。」フレイが不安そうに言う。
一見、軽やかなステップで殺戮兵器の攻撃をかわすジョンだが、その顔は苦痛に歪んでいた…。
俺は白い刀を力一杯握りしめ、こう言った。
「ジョン!!いつでも良いぞぉぉ!!!」
ジョンはそれを聞き、ニヤリと笑ったあと、あるポイントまでヤツを誘い出す。
そこは土ではなく、以前から綺麗に整備されている芝生の上。
ジョンはそこで立ち止まり、簡易障壁剣を構える。
殺戮兵器はジョン目掛けて殴りかかる。
殺戮兵器の拳が当たる直前でジョンは楯の角度を変え、簡易障壁剣を解除する。
目標を失った拳は空を切り、反動で殺戮兵器の体は半回転する。
バランスを立て直そうと、足に体重を乗せようとする。しかし、夜露に濡れた芝生は滑りやすく、殺戮兵器はその場に倒れ込んだ…。
「今だ!ウォルフ!!」
「うぉおおおーーー!!!!」
俺は倒れた殺戮兵器の胴体目掛けて、全身全霊のフルスイング!!!
その瞬間…
「ガキィ~ン」耳を塞ぎたくなるような金属音と共に俺の刀は弾かれる。
「硬ッッて!…」着かさず反動が俺の体に伝わる。
俺は殺戮兵器の硬さを見くびっていた。
マズい……。
殺戮兵器が起き上がる。
終わった…。俺の刀はどこかに飛んでいき、ジョンは脚の痛みから、その場に立ち尽くしていた。フレイは目を塞いだ。
その時!
「待たしたな!ウォルフ達!いっちょ加勢するぜ!」ドラコ達が駆けつけた。
ドラコはその大きな槍を殺戮兵器に向け、構え、片膝を着き、前傾姿勢を取る。
「行くぜぇ竜撃槍!!」
槍に描かれた奇妙な文字が光り輝き、柄の先端からジェットエンジン並の炎とエネルギーが噴射した。
槍が持ち手であるドラコごと、敵に向かって飛び立つ瞬間、ドラコはその竜人族特有の強靭な脚力で地面を蹴った。
槍はドラコごと、凄まじい速さで飛び、殺戮兵器の胴体に風穴を開けた。
一瞬、怯んだ殺戮兵器だが、直ぐ様胴体に突き刺さった槍ごと、ドラコを殴りかかる。
しかし、右手は動かない。。。
殺戮兵器の右手には無数の鉄の糸が巻つき、自由を奪っていた。
「遊死鉄線…後は私たちが相手アル」
リーの広い袖口から出た鉄の糸は、およそ数百…その半分が右手を、もう半分は地面に根のように張り巡らされ、しっかりと固定していた。
殺戮兵器は力任せに引っ張るが、この鉄の糸はビクともしない。仕方なく、余った左手を振り上げ、攻撃体勢に入る。
「二人ともよくやった!後は離れてな!」低い声と共に黒き戦士が跳ぶ。
そして、大人一人と変わらないほどの大剣を振り上げ、殺戮兵器に斬りかかる!!
その瞬間、ドラコは槍を引き抜き、距離を取る。
ジョンは再び、簡易障壁剣を発動させる。
俺とフレイを地面から伸びた鉄の糸が被っていく。
リーも鉄の糸をドーム状に張る。
ジェイドの大剣が敵に当たる瞬間…
「弾かれる!…」
その瞬間「ドカァーアン!!」大剣は爆音と爆炎に包まれる。
俺とフレイを守ってくれた鉄の糸が解かれる。
そこには、体を縦に引き裂かれた無惨な鉄屑が煙を上げていた。
「爆裂大剣…ジェイドだけが使いこなせる上級魔具よ…」