~異世界~
「ココは…何処だ?…」とりあえず、天国ではないようなので生きてるみたいだ。
しかし、この見知らぬ部屋には天井は灰色のレンガに、俺が寝てるのは駅前のビジネスホテルにありそうな安くて、粗末なベッド、壁にはよくわからない世界地図、右の隅には俺の背丈(170㎝)くらいの本棚にびっしり本が詰まっている。
どの本も医学書みたいに分厚く、茶色やら、青やらの革?の背表紙がついてる。
左には小さな台があり、銀色の中世ヨーロッパに出てくる金属製の水差しに、半分くらい水の入った木の槽があった。そこに白くて小さなタオルが濡れてかかっていたので、ここで誰かが看病してくれてたのだろう……
看病…そう言えば、体があちこち痛い、おまけに体が腕やら脚やら白い包帯に巻かれている。
そして、左手には俺の背丈の半分より少し長めの白くて、細い日本刀が握られていた。鍔も柄も白く美しい刀だ…。何故か初めてみる気がしないくらい俺の手にフィットしている…
持ち上げて、白い鞘を抜き、降ってみようと構える。
「意外に軽いな…」
「…よし…」
全身の鈍い痛みに耐え、ベッドに座ったまま素振りをしようとした瞬間。
「ガチャン!!」誰かが入って来た。
「おっ!流石は大戦士の末裔、あれだけのケガをおっても、もう剣を降ろうとは…」
男はニヤニヤしながら軽い調子で話し掛けてきた。
男は20代前半くらいの緑色の短髪に割りと整った顔、右耳には小さく金色のピアスを3つしていた。服は薄汚れた白シャツを腕捲りし、茶色の短パンにブーツ。いいと○にでてくる芸人の勝○みたいだ…(笑)
腰には刃渡り70㎝程の剣と緑色の小さい袋をぶら下げていた。よく見ればイケメンの部類なんだろが、少し品のない軽そうな感じがマッ○でハンバーガー食いながら、お喋りしてる大学生みたいだ。
「どうだ?体は?やっぱ痛い?」男はこっちのことは気にも止めず、続ける。
「今回ばかりは流石のウォルフでも無茶だったぜ!」
「相手は新型の殺戮兵器、それも20m越えの大物だった!」
「まぁお前が行かなきゃあの女の子は助からなかっただろうけどさ。」
…何を言ってるかさっぱりわからん…ウォルフ?、キラーマシンってなんだ?…
俺の困惑した表情に何か気付き、男はさすがに違和感を感じたんだろう。
「ウォルフ……俺誰かわかるよな?お前の幼なじみジョンだよ…?」
「ええと…ごめんなさい。本当わからない…………」
「マッ!?マジンガー!?!?!?」ジョンはとてつもない大声を挙げた。
「……………………」
「……………………」沈黙が流れる。
「…うん…あれだけのケガだ!きっと記憶が一時的に飛んでるんだよ!そうだきっと!」
「お前が俺のこと忘れることあるわけないしな…」
「ガチャン!」若い女が入って来た。
「ウォルフ…大丈夫?目覚めた?」
女は短いショートに金髪、大きい目の瞳は黄色で、小顔にきしゃな体系、どっかの制服のようなシャツに薄手の袖のないカーディガン、少しダボッとした短パン。髪からちょこっと尖った耳は特徴的だった。
腕には茶色のリストバンド。金の竜が小さな台に乗りチェスの駒のようになった首飾りをしている。
活発な印象は一言で言えば可愛かった。
「聞いてくれよフレイ…」女の子の名前はフレイというらしい。
「ウォルフ…記憶がないって!?!?」
「マッ!?マジンガー!?!?」
流行りなのか?(笑)
「記憶っていつからの?」「まさか全部?」「幼なじみの私たちがわからないの?」
はい、全部です。というかもはや俺はこの世界では全くの別人らしい…
ゲームやラノベの世界で転生や異世界召喚の話は聞いたことはあるが…………まさか自分が、しかも「ウォルフ」なる人物の人生を歩むはめになるとは・・・
とりあえず、俺はこの二人に正直に話すことにした。二人とも悪い人ではなさそうだったからだ。
~2時間後~
随分時間はかかった。最初は二人とも俺がからかっていると思ったらしく、全く信じてなかった……。
特に、ジョン。この2時間はほぼこいつの説得に費やした。
まぁだが、普通に考えて、俺の地元の友達(例えば、渡辺君だとしよう)が突然、自分はマイケルだとか言い出したらやっぱ頭おかしいと思うもんな……
だが、おかげでこの世界のことについてちょっと知ることが出来た。
この世界(まぁ正確に大陸)は現在、東と西で大国同士の戦争状態にある。
【魔法剣士オーディン】が国王として統治する【アースガルド】という国が俺がいる東側。
西側は【機械皇帝ナポレオンⅧ世】が支配する【メタルエンパイヤ】という国だそうだ。
なっナポレオン…説明を聞いてる時は敢えて突っ込まなかった。こっちの人に行っても通じないと思ったからだった。
アースガルドにはドワーフやら、エルフ、獣人などといった亜人が共存している。緑豊かで、天候も一年を通して穏やか、まさにファンタジーの世界だ。
一方、西側は領土の7割が砂漠で、岩と砂だらけらしい。天候も日中は強い日差しが照りつけ、夜には氷点下まで冷え込む。とても生物が住むには適さない環境だ。おまけに地球でいう冬には大寒波が押し寄せ、領土を凍らせる。夏には残った氷が溶け、大洪水を引き起こす。
そのため、西国には環境に適するため進化を遂げた屈強な魔物と機械たちしか住んでいない。
元々は機械たちも、魔物もアースガルド側に住んでいたが、千年前の機械の反乱によって、機械と亜人は決別。
戦いに敗れた機械たちは西の地に追いやられた。その時、機械側に付き、戦いに加担した魔物も追放されたのだ。
機械たちは今なお、この地を取り戻そうと攻めてくるのだ。
ちなみに、この戦争で大活躍をして機械皇帝ナポレオンⅠ世を倒したのが俺の祖先(こっちの世界の)、【ウォリオン】だそうだ。
うぉー俺、英雄の末裔なのか!?!?
東国と西国の間には大陸を真っ二つに分ける深き死の谷【デス・バレー】がある。この谷の裂け目は10㎞にも及び、間に架かる橋には東国随一の騎士団が守っているため、簡単には西国の連中も来ることは出来ない。
さらに、アースガルド全域には生命反応を持たないものを寄せ付けない強力な結界が張られている。さらに、これには邪悪な魂を持つものを拒む呪詛も掛けられているため、凶悪な魔物ほど近づけない。
まさに、アースガルドは鉄壁の要塞なのだ。
《登場人物》
ウォルフ(鈴木翔太)
ジョン・・・ウォルフの幼なじみ。
フレイ・・・ジョンと同様、ウォルフの幼なじみ。
服装なんかに詳しい方、ご要望お待ちしております。
気に入ったものあれば、即採用。
「マッ!?マジンガー!?!?」